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第3話 遭遇

転移先です。


*2020/8/11 誤字と本文の修正を行いました。

 突然、何かが焦げる臭いと殺気らしきものを感じて目を開ける。


「……ここは?」


 先程までとは真逆の闇夜と不穏な気配に満ちた木々の中にいた。

 正面には木々がなぎ倒されて出来た道。その道沿いに開いた大穴や燃えさかる木々。

 そしてそこら中に鎧を着た「人」と思われる散乱物。


「地獄かここは?」


 嫌な場所に来てしまったなと眉を顰めたところで何かがキラリと光る。


「ん?」


 木々の影となる場所で炎の明かりを反射させながら何かがゆらゆらと動いている。


 ──不自然な動き。生存者か?


 目を凝らして見るとそれは空を彷徨っている金属製の甲冑の手であった。


「おい、大丈夫か?」


 一応腰に下げた刀に手を掛けながら近寄り声を掛ける。見れば全身を覆った甲冑は殆ど形を成しておらず隙間から血が滴り落ちており、一目で手の施しようのない状態だと分かった。


 ──これは助からないな。


 せめて一思いに、と思ったところ「言葉らしき声」が耳に入ってくる。



 〈文明との接触を確認。この文明の標準的な【文化】及び【言語】をダウンロードします〉



 突然頭の中にシルヴィアの声が。

 その直後「らしきもの」であった声が言葉として聞こえてくる。


「……だ、団長……無理です……お逃げ下さい……」


 それを最後に彷徨っていた手がガチャリと力を失う。

 その時、夜空に真っ赤な閃光が走る。続いて振動と熱風が周囲を襲い、木々が嵐のように大きく波打った。


 ──かなり近いな。


 爆発が起きた方の()()()()()



 〈【万感スキル】がレベルアップ。LVMAX(神の領域)に達しました〉


 ──スキルの詳細は後で聞くとして気配は、と。……近くに殺気が二つと絶望が多数。それ以外はだいぶ離れた場所に……これは町か?


 かなりの広い範囲を探ってみたが目と鼻の先にいる者達と、ここから20km以上先に纏まった数以外は引っ掛からなかった。

 どうやらここは人里からかなり離れた場所らしい。


 気配を読んでいる間も「絶望」を感じている者の数が、数えるよりも早く減っていく。


 ──この気配……妙だな。


 これが普通の殺気であれば「ありきたりな修羅場」として関わることなく立ち去っていたかもしれないが、殺気を放っている片割れの気配に既知感を覚えたため、今度は目を瞑り深く()()()()()。すると「決闘」の時に垣間見た「あの世界」がまた見えてくる。



 ──……アレは?



 見えたのは白黒の世界。真っ黒な背景に白く映った「巨大な生き物」と剣を構えて対峙している一人の騎士。その騎士の後方には大楯を持った5,6人の騎士とその後方には弓兵や魔導士が「巨大な生き物」に対し矢や雷系の魔法で攻撃をしている光景が見えてきた。


「あれは確か……竜だったか?」


 新たに得た情報のお陰で竜だと一目で分かった。すると頭の中に声が。


 〈流石ですね、もう使いこなしていましたか。その通り、灼熱の炎(ファイアーブレス)を吐く竜、炎竜(ファイアードラゴン)ですね〉


「灼熱? ……あっ」


 その竜が対峙している騎士に向け結構な勢いで尾を振ると避けずに剣で受け止めよう上段から振り下ろす。

 尾と剣が触れる瞬間、眩い光が発生したが、尾に傷をつけるには至らず。しかも質量の差からか、尾の勢いを止められずに横へと結構な勢いで吹き飛ばされた。

 その様子を騎士の後方から援護しながら見ていた者達は、竜への一切の攻撃を止めてしまう。


 竜が向きを変え騎士らを見る。それを唯々眺めることしかできない者達。

 直後、竜が口をゆっくりと大きく開ける。さらに喉の奥が徐々に金色に染まってゆく。

 5秒ほどかけて最大にまで高めたブレスが騎士たちに向け吐き出された。


 遅れてやってくる振動と熱風。


「……なあシルヴィア」


 〈飛ばされた騎士ですよね?〉


「まだ息はありそうだし助けていいよな?」


 〈お望みのままに〉


(アイツ)にも尋ねたいことがある」


 〈なら山水様の現状把握にはちょうど良い相手かと〉


 先ずは助けてこの状況を教えてもらう。ついでに竜を締め上げ情報を得る。


 500mほど離れた修羅場へ、木々の隙間を10秒程で駆け抜け辿り着く。


 ──でかいな。


 円形に開けた空間。左側には身長15mはあろうか、全身燃えるような赤色をした巨大な竜が俺に背を向け地面を揺らしながら遠ざかっている。

 そして右側には先程のブレスにより溶岩化した道がかなり先まで続いていた。


 ──あの騎士に止めを刺すつもりだな?


 〈そのようです〉


「おい」


 後から声を掛けると聞こえたらしく動きを止めた。


「お前に一つ訪ねたいんだが」


 時が止まったかのように動かないドラゴン。


「雷明、とうい名を聞いたことはないか?」


 奴の気配を()()()()感じたので「無縁」ではないはず。そう思い尋ねてみた。

 するとゆっくりと巨体をこちらに向けてきた。


「言葉は……分かる、かな?」


 腰に下げた刀の柄に手を添え、無心で問う。すると目が合った瞬間、返事とばかりに羽を広げ大きく口を開くと咆哮で威嚇してきた。


「これじゃどちらか分からないだろうに」


 話を聞く気がないのか、そもそも端はなから言葉が通じないのか。

 この程度の威嚇を意に介さない素振りでいると癪に障ったのか、最大級の炎を吐きだしてくる。


 〈軽めに〉


 淡々としたシルヴィアの声に従い刀を抜く。ドラゴンの口めがけ下から上に軽く振ってから鞘に戻す。

 するとその一振りで寸前までに迫っていた灼熱の炎が消滅してしまった。


 ──何故炎が消えた?


 笹の葉を切るイメージで抜いたのだが。


 〈理由は後程。それより止どめを〉


 口を開けたまま固まる竜と暫し見つめ合う。奴が我に返るよりも先に薪を割るイメージで今度は【居合い】を放つ。


「あーー双頭竜になっちまったか」


 首が半ばまで綺麗に二つに分かれると、木々をなぎ倒しながら倒れてゆく。


「こいつの実力は?」


 〈炎竜はドラゴン族では中ほどの強さ。そしてこの個体のLvは35と平均レベルでしたね〉


 炎系に特化しているらしく、ドラゴン族にしては物理攻撃力や耐久力は低いとのこと。


 〈それでも人族にとっては脅威な存在です。それより山水様〉


「なんだ?」


 〈炎が消えた件ですが、炎が消えたのはお互いが繰り出した技の威力が均衡していたために起きた現象です〉


「……ブレスはスキル?」


 〈はい。属性依存型のスキルです。炎竜は炎の特性を備えているのでブレスが炎になります〉


 基本的にスキル同士の戦闘面での優劣は、属性などの相性を除けば技の練度で決まるとのこと。


 因みに無属性だけは相性に左右されずに効果が発揮されるらしいが反面、使用者のステータスが相手より高くないと効果が減退してしまう。

【居合い】などの斬撃系がこれにあたる。


 〈早速【ストレージ】を試してみましょう〉


「ストレージ、収納だよな? どうやるんだ?」


 対象物に掌てのひらを向け、頭の中で【ストレージ(収納)】と念じれば収納できるとのこと。

 早速このドラゴン(コレ)に試してみると……巨大な亡骸が流れ出た血も含めて一瞬で消え失せた。


 〈私が【収納】の管理と操作の補助をしてますのでご安心を〉


 収納空間の中は時間が止まっているので腐敗の心配はいらないのと、条件付きだが「生き物」も収納可能とのこと。



 さて、周囲の木々の消火から始めるか。


 区切りが悪いのでもう一話、今日中に投稿します。

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