第27話 後任
後日、微修正するかも。
「お久しぶりです、殿下!」
その声に同時に顔を上げる。
いくつかの花壇を挟んだメイン通路で騎乗した若い女がこちらを見ていた。
「お? ロザンヌか?」
「はい」
「丁度良かった。こちらに来てくれ」
「は、はい。でも馬が」
距離があるため二人ともそこそこの音量でやり取りをしている。
「サリー」
「お任せを」
とサリーと入れ替えでロザンヌと呼ばれた女が急ぎこちらに向かってくる。
何処の貴族令嬢だろうか、乗馬に適した服装と気品ある振る舞い。下品にならない速度で駆け寄り対面の席の前で立ち止まると先ずは我々に一礼、そのままエステリーナに身体を向けた。
「元気そうだな」
「リナ様も」
「マリアンヌも連れてきたよな?」
「はい。今は(王都の)邸宅にいます」
「そうか、急に呼び出してすまなかったな」
「いえこちらこそ申し訳ありませんでした!」
これでもかってくらいに頭を下げている。
……ん? 何かあったのか?
横目でチラ見するが謝罪? に対して特にこれといった変化は見られない。
「先に紹介しておく。この者は先日私の夫となった山水だ」
紹介されたからには挨拶をせねば。だが握手をするには距離があるので代わりに頭を下げる。
「で山水。こちらはロザンヌ・マカニー嬢」
……ん?
「……ロザンヌ・マカニーです」
なんとも言えない雰囲気と「間」で頭を下げてくる。
マカニーってことはあの男の? と隣に目くばせをする。すると、
「ああ、長女だ」
と声に出して答えた。
茶色の髪以外は「ホントにアイツの娘か」と驚くほどに似ていない。
容姿も父親とは正反対の「お淑やかな体型」と嫌味が一切感じられない才色兼備風の顔付き等、どこをとっても上流階級のご令嬢の見本のような女。
隣に座っている「まさに王族」のエステリーナとはまた違うタイプの美人さん。
歳は……エステリーナと同じくらい?
「あのーーエステ、いえ殿下、私の父は何をしたのでしょう?」
恐る恐る聞いてくる。
「……国王の暗殺」
一瞬の間の後に告げる。僅かな怒りの感情を乗せて。
「え……まさか……そんな」
内容、そしてエステリーナの雰囲気で明らかに狼狽えだした。
「私達の目の前での暴挙。残念だが言い逃れは出来ない」
ロザンヌがさらに蒼褪める。ティーカップを持っていたら間違いなく落として割るくらいの衝撃を受けていた。
この表情と「気配」は一致しているので父親の内心も、そして企みも一切知らなかったのだろう。
「……で……ではマカニー家は全員……処刑……ですか?」
今の感情を表すかの如く、整えられた前髪がハラリと崩れる。
「法によればそうなる」
一方のエステリーナは至って平常心。
かく言う俺も謁見の間にいたので同情心は湧いてこない。
「?」
だがここで変化が起きた。動揺していたロザンヌが、返答を聞いた直後に動揺がピタリと収まったのだ。
その変化に気付いたエステリーナ(とロザンヌ)が僅かな間、見つめ合う。
「……察したようだな」
「なんとなく」
寸前とは異なる、悲壮感など感じられないしっかりとした返事。
「では処刑以外の方法で責任を取ってもらう」
「……はい」
「エルアノーム・アラ・ナート王の名代としてこの場で処分を言い渡す」
「…………」
「長女ロザンヌと次女マリアンヌの二名は現時点をもってマカニー家から除名とする」
除名。それは貴族席の剥奪を意味する。宣告を聞いた時点で平民となったのだ。
これでは流石に動揺すると思いきや気配に揺るぎは見られない。
一方のエステリーナも予想の範疇だからか平常心だった。
「そして今から私、エステリーナ・ナートの養子とする。妹共々、今からナートを名乗れ。処分は以上だ」
「承知しました」
躊躇いもなく、深々と頭を下げた。
……成程。
形式上は一旦平民に落とし「家の罪」を償わせてからの養子縁組。
実質には「侯爵家」から「侯爵家」に移っただけだ。
ただどこかしっくりこない。
人生を狂わされ、妹の命まで奪おうと画策してきた男に対する罰にしては甘すぎると思うのだが。
「ですが私達のような罪人の子を養子に迎えて良いのですか?」
これでは王族の名誉が傷付くのでは、と言いたいのだと思う。
「この裁定は陛下が決めた。私が言っても覆らない」
「そう……ですか」
うーん……アイツなら一度言い出したら引かない、そんな気がする。
被害者であり最高権力者でもある王が決めたのだから、誰であろうと文句は受け付けない、と思えば納得がいく。
ただこの文言だけを聞いたら「独善的」との印象を持たれてしまう。
だがあの場にいた俺にはそうではなく「他人の意見を聞いた上で最善の判断を下せる、理性的な女」だと知っている。そんなことは姉であるエステリーナ本人が一番良く知っているが、それをこの女が知っている可能性はゼロに等しい。
その程度はエステリーナなら分かると思うのでこの様な言い回しをした……のには理由があるはず。
「覆らないという事実は、今後の為にも覚えておくんだぞ」
「……はい」
今後のため?
そして忠告染みた発言を受け入れた?
「マカニー家には明日、正式な通知が届くだろう。その時に降爵及びお前達姉妹を含めた処分が言い渡される」
「感謝いたします」
二人から安堵が伝わってくる。
この手の手続きは正式な書面が相手に届いた時点で効力が発揮する。
なので今回はまだ書面が届いていないので、マカニー家は未だに侯爵のまま。
その状態での養子縁組が意味するところは……二人の「将来」への配慮ってところか。
「処分に関しては以上だ」
「は、はい」
「とりあえず座ってくれ」
「はい、失礼します」
と言われ対面の長椅子に座った。
「…………」
「…………」
何故だか微妙な空気。
「で……相談なんだが」
「はい」
「………げ、元気だったか?」
「は、はい。お陰様で」
「…………」
「…………」
──なんか急に気まずい雰囲気に。マカニーの件でかな?
〈いえ、それだけではありません〉
──他に理由が?
〈はい。ここは山水様の出番です〉
──俺?
〈エステリーナ様の背を押してあげて〉
背を押す? 何か言いたいことでもあるのか?
「ロザンヌ嬢」
「は、はい」
「先程エステリーナを「リナ」と呼んでいたが?」
「え? あ、はい。エステリーナ様とは父……マカニー侯爵を介して幼少の頃から妹共々親しくさせていただいております」
「なるほど。で子供のころのリナはどんな感じだった?」
「それはもう明るく活発で、ジっとしているのが難しいお方でした」
「へーー、何となく想像が……つくな」
とエステリーナを横目で見ながら揶揄うようにニヤケてみせると、エステリーナは赤面しながら「そ、そんなことはない!」と否定をしてくる。
「それで私が王都の大学に通っていた時も王としてお忙しい中、時間を見つけられては私達姉妹をお茶会に招いて下さったりと」
「ってことは二人……妹さんも含めて仲は良かったのかな?」
「……私はそう思っております」
「羨ましいな」
「羨ましい、ですか?」
「ん? ただの独り言だから気にしなくていい。それよりリナ」
「ん?」
「ロザンヌ達を養子に迎えた理由は分かった」
「…………」
「ただな、この状態で養子に迎えたらロザンヌ達は一生お前に気を使って生きていくことになるぞ」
「…………」
「それでいいのか?」
「…………」
「何か言いたいことがあるんだろ?」
「…………」
「言いたいことがあるなら気を遣わず正直に話したらどうだ」
妹に気を使わせたくないというなら、先ずは自分から変えていかないと。
「……うん、そうする」
小声で返事すると顔を上げロザンヌの目を見る。
「一つ、お願いがある」
すると、
「宰相、ですよね?」
と即座に返された。
へ? 宰相?
「そうだ」
「ですが」
「ダメか?」
「マリアンヌと分担して良いならお受けします」
「構わない」
「ではお受けいたします」
「そ、そうか! よし明日から二人で政務に励んでくれ!」
「精一杯やらせて頂きます」
とその場で頭を下げた。
「さ、山水!」
やったーと満面の笑みのエステリーナが俺に向かって片手を掲げてくる。
「…………お!」
その瞬間、全ての辻褄が合った。
エステリーナとロザンヌ姉妹は名を呼び合うくらいに仲が良かった。交流があったのだから性格から能力まで知っていてもおかしくない。
つまりマカニーが引退した場合の代わりとして、この女を候補と決めていたのだろう。
「目論見がうまく行ったぞ」と物語っているその笑顔を見たら納得がいった。なので素直にポンと手を合わせた。
「後はお前達が住む場所だが……この城にしよう!」
「……え?」
「なーに、改装は直ぐに済む。置いてきた荷物は明日の通知時に回収してここに運ばせる! それまでには改修工事を終わらせるので私の邸宅で休んでくれ!」
「はぁ。……え?」
そこまでは予想していなかったのか、動揺していた。
住処は多分だが、王都内にある「ナート邸」もしくは「王家にとって都合の良い場所」とでも思っていたのだろう。
実際俺にも意外に思えた。
もしかして俺がいるから?
そうも考えたが四六時中、城にいるわけではない。その辺りはエステリーナも心得ているはず。
そのエステリーナとは意識するだけで距離に関係なく「気配」を感じ取れる関係にあり、いざという時は連絡を待たずに駆け付けられるが、エルアノームはまだ条件を満たしておらずその域に達していない。
勿論その件もエステリーナに伝えてある。
この関係にいたるには「二つの条件」が必要になる。
エルアノームを抱いた時点で俺は条件を満たしたので後は彼女次第なのだが、未だに俺に対して隔たりがあるのか、エルアノームは未だに二つともクリア出来ていないのだ。
(実際には一つ目の条件を満たさない限り、二つ目の条件はクリアしたことにはならない。ただし意図しない内に条件が満たさても同じ状態になるので注意が必要 by シルヴィア)
こればかりは本人の意思の問題であり強制するわけにもいかないし説明も出来ない。
なので不安を抱えながら見守っていくしかないのだ
とはいえこの女が警備の者を目を搔い潜って王を害せるとは思えない。エルアノームのように何か特別な能力を持っているなら別だが、それならそれで王から遠ざけるはずだ。
なら他の目的が? それとも考えすぎか?
まあ直系では無いので王位継承権は無い。そこは変わらないが傍系であった今までより立場は間違いなく上がった。
さらに絶大な人気を誇るエステリーナの庇護下に入れたのだ。今後は夫選びには苦労しなくて済むだろう。
そう思えば良い事尽くめの気がする。
「あ、いずれは私と山水は領地に引っ越すので今から邸宅の管理はお前達に一任する。もう戻ることも無いから好きに使ってくれ」
ロザンヌは王都に家を手に入れた!
貴族としては最高の名誉職も手に入れた!
今後は苦労するであろう兄や弟らとは正反対に、次々と幸運が舞い込んでくる!
「ちょ、ちょっとお待ちを!」
「どうした?」
「城に住む、それだけは受け入れられません!」
「何故?」
「あそこは国の象徴が住まう場所。エステリーナ様の夫である山水様なら許されますが、私達姉妹が立ち入れば悪き前例として記録が残ってしまいます」
「良くぞ言った!」
間髪入れずにエステリーナが力強く頷く。
「その心意気を忘れぬように。そして王とこの国の為に身を粉にして働いてくれ」
「はい」
「では私の邸宅を預ける」
「ご意見を受け入れて頂き感謝します。それでは謹んでお受け致します」
すんなり引き下がったな。そう思いエステリーナに目を向けると……ニヤけていた。
〈野心の有無、それに忠告ですか〉
──みたいだ。やっと腑に落ちた。
ここで「握手」でもすればその程度は調べられるが、エステリーナは今回シルヴィアに確認作業を依頼して来なかった。
それは何故かと言えば、調べられるのは「今現在」であって将来に渡る保証にはならないからだ。
まあ依頼する側も俺も、他人の心を覗いていい気分にはならない。特に信じたいと思える相手なら尚更だ。
その辺りはシルヴィアも心得ているので、俺に全てを報告などしない。
「悪いが私達は明後日までには外交で国を出る。なので今日中に陛下と謁見し、その場で宣誓して貰うが、いいか?」
「構いません」
「マリアンヌも?」
「はい。マカニー邸で待機しているので迎えを出して頂けたら。その際に新しい名と「陛下に宣誓をする」と言えば混乱せずに済むかと」
「伝えておく。では控室で待っていてくれ」
「はい」
あ、またサリーをコキ使うつもりだ。可哀想だから素振りの回数は減らしてあげよう、などと思っていたら……
「サリー」
早速呼ばれていた。
「はい」
そばの木陰からメイド服が現れる。相変わらず気配が読めない奴。
「聞いていたな?」
「はい。手配はお任せを」
「頼む」
「ではロザンヌ様、こちらへ」
「あ、一つ宜しいでしょうか?」
とこちらに向き直る。
「エステリーナ様、ご結婚おめでとうございます」
「ああ、ありがとう。落ち着いたらお前達の歓迎会も開くから」
「楽しみにしています」
と言ってから城の中へ消えて行った。
「良かったな、決まって」
「うん。その……ありがとう」
「どういたしまして」
その後、サリーと再び合流し、荷物の【収納】を行うため物資集積場へ。
「今回は新鮮な食材を持っていけれるな」
「師匠、様々」
「少し多くないか?」
俺とエステリーナ、それとサリーと護衛の四人。一週間の内、一日を除けば朝夕は宿で食事が取れるのだからこんなに要らないと思うのだが。
「念のため」
「腐らないし」
はいはい。
「それじゃ入れるぞ」
手を翳して収納。
「飼葉はどうします?」
「水や薪と同じく大量にあるんだよな?」
「ああ」
これで終了かね?
「あ、あとコレも頼む」
と脇に置かれたそこそこの大きさの木箱が10コ。
「何だ?」
「手土産だ」
魔道具と魔鉱石といった、この国の特産品が入っているらしい。
「招かれたとはいえ、手ぶらで行くわけにもいくまい。なのでお礼の品だ」
「はいよ」
それらも収納していく。
「そうだ、お湯も持っていきたいんだが」
「何故?」
「旅先で入りたい」
あーなるほど。エステリーナはあの「露天風呂」がかなり気に入ってたからな。
サリーが王家専用エリアにあった、そこそこ広いテラスを4人が余裕で入れる「檜風呂風」の露天風呂に改装してくれた。
城の高い位置にある為、風呂から見る景色は最高。昼は青空、夜は満天の星の明かりで、大の字に寝そべって入れる風呂に感動しまくってたっけ。
「あと石鹸も」
しかし湯を使う機会はあるのだろうか?
先ず街と街との距離があるので、長々とした休憩はしてられない。そして宿がある場所は町の中心地。風呂を設置できるスペースがあるとは思えない。
「冷めたお湯を温める手段は?」
「焼いた石を投げ込む」
「なら水でいいんじゃないのか?」
「直ぐに入れないだろう」
また今回行くのがエルアノームならその地域を納めている貴族や領主総出の歓待を受けながら一泊し、その貴族なりの邸宅で風呂を借りるなどの贅沢も出来ただろうが、今のエステリーナは王ではない。
なので通過する領地を守護している貴族には「この日に泊まるので街で一番良い宿を押さえておいてくれ」と先触れを出したそうなので変更はし難い。
「実際はどうなんだ?」
エステリーナの要望を貴族達が聞くかどうか。
「相手次第」
強要はしていない。どう判断し、どう行動するかは自分で決めろ、と。
「結果は今後の参考にするのか?」
「私はしない、私は。というか私は関わるつもりはない」
エステリーナは「たかが通過」と考えており、この程度で皆の手を煩わせたくない、との考え。
若干不満そうに言ったその隣では、サリーが自分の顔を指さしていた。どうやら情報の纏め役はこちらの担当らしい。
この二人の反応からその指示を出した者がエステリーナの反対を押し切って指示を出したのを悟ってしまう。
──まあ姉妹の方針の違いをとやかく言う気はないが、どちらの考え方を支持するかと問われたら俺的にはエステリーナになるか。
〈いえ、山水様はお二方の丁度中間かと〉
──そうか?
〈それよりここで一つ忠告を〉
──どうした?
〈今回の旅行には馬車も用意した方が良いかと〉
──何故?
〈理由は好感度アップ〉
──はい?
〈ついでに技術提供しますので馬車の改造もして下さい〉
──何だか知らんが了解した、適当な理由で押し切ろう。
「なあ、モノは相談なんだが」
「「?」」
「俺は馬車で行く」
「「何故?」」
「実は」
「「実は?」」
「実は……馬に乗れないんだ」
「「……へ?」」
「だーかーらー」
「いや待て、山水。お前カイエンに乗ってただろう?」
ちっ、覚えてたか。
「あれは乗ったのではなく、乗せて貰ったんだ」
これは嘘ではない。手綱は握っていただけで一切指示は出していない。
「それ以外にも乗りたくない理由があるんだ」
「「どんな?」」
「馬に一時間以上乗っていると酔ってしまう」
「「…………」」
二人のジト目が。
「でも師匠、それだと予定の日にまでには」
俺の言い訳、さらりと流されちまった。
「そこは大丈夫」
──だよな?
〈はい〉
「根拠は?」
「根拠って、向こうにはルーナ様が付いてるんだろ?」
「「……なーるほど」」
遅れても平気な理由を理解したようだ。
まあ宿を手配してくれる貴族達には申し訳ないが予定は未定ともいうし、会ったら謝罪をしておこう。
「でここでもう一つ相談なんだが」
「「?」」
「預かっている馬車をくれないか?」
「アレを? 構わないけど」
「ありがとう。それと今から言う物が今日中に用意できるかどうかを教えてくれ」
鉱物を中心に列挙してゆく。
「多分ある。量は?」
凡その量を伝える。
「その程度なら直ぐに用意できると思う。でも何に使うの?」
「馬車の改造だ。なので今日中に用意してくれたら出発前に試乗が出来る。あ、あとそこそこの大きさになると思うので体力のある荷馬を二頭、用意してくれ」
「……二頭? そういえば昨日アイツらが帰ってたな」
「アイツら?」
昨日の夕食後、草原で別れた例の二頭が南門に揃って現れたとの報告を受けたらしい。
「随分と時間がかかったな」
エステリーナもそう思ったので念のために馬房に顔を出したそうだ。
「何故だか凛々しく、そして二回りほど逞しくなっていた」
驚いていたところカイエンが嘶くので見れば……ドヤ顔をしていたらしい。
「団長、帰還が遅れたのは鍛えてたからでは?」
「カイエンに言われて?」
「はい」
「あり得る……かも」
そうなの?
「それならカイエンに依頼して他の馬も鍛えさせれば?」
「それは無理」
「どうして?」
「アイツは私が直接的に利することしかしてくれない」
なんだかな。
でも鍛えるのは乗り手である人の役割。エステリーナの足の役割を果たしてくれているだけでも感謝をしないと。
「で、使えそう?」
「自分の目で確かめたら?」
と言うことで早速寄った。
「な、なんだコイツら……本当に同じ馬なのか?」
「照合したので間違いない」
二回り逞しくってこういう意味だったのか……
絵物語などで見かける武勇に優れた英雄が乗るような猛々しい風貌、そしてムキムキの筋肉を備えていた。
何をどうしたらこんなに変われるんだ? っていうか顔つきもそうだが目つきや威圧感が半端ない。
「数々の死闘を生き抜いた証だぞ」
「え?」
「自然界でたまーに見掛けたが……そうだったのか」
「…………」
「もしかしたら【称号持ち】かも」
「称号?」
「ルーナ様が与える名誉、と言われている」
「…………」
「詳しいことは誰も知らない。なにせ称号の有無を調べられるのは【人物鑑定】のスキルを持つ者に限られるし、その者が都合よくその場にいるとは限らないので」
なるほど。なら……
と馬に触れてみる。
「ホントだ。二頭とも【荷馬の帝王】になっている」
「「はい?」」
「ではカイエンも?」
カイエンに触れてみる。
「なんだこりゃ?」
「どうした?」
「【白馬の王子様】だと」
「「…………」」
どこが白馬だ? 茶色だろう!
良く分からん。分からんが、
「まあ合格」
で、こいつら何食べるんだ? 肉か? 肉なのか?
第一章も残り一話です。
ちょっと手間取っているので少々お時間をいただきます。




