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第24話 招待

今作のキャラ名はフィーリングで決めてます。

 謁見の間に到着。衛兵に扉を開けてもらい二人並んで中へ。

 そこには「あの椅子」に腰掛けた、王らしい格好をしたエルアノームと見知らぬ女が二人。そして騎士団とは異なる鎧を身に付けた男が一人の計四人がいた。

 その内の一人、王から見て正面に立っている女がこちらに気づいて振り返る。


「セリア殿でしたか」


 エステリーナが真っ先に口を開く。

 それに応えるように深々と頭を下げながら和やかに挨拶をしてきた。


「お久しぶりです。エステリーナ様」


 するとその女の隣りで、王よりも数段豪華な椅子に腰かけていた女がスッと立ち上がり、流れる様な所作で体をコチラを向けると、エステリーナに対して笑顔で軽い会釈をしてくる。

 それに対し、エステリーナも同じくその場で会釈をしてからその者の名を呼んだ。


「シーラ様もお久しぶりです」

「こちらこそ。エステリーナ様」


 知り合いらしく、挨拶を交わすとエステリーナから二人に歩み寄り談笑を始めた。


 この二人……


 エステリーナには付いてゆかず、その場で様子を窺う。

 この世界に来て初めて感じる、波紋のない透明度が非常に高い湖面を覗いているような雑味が一切感じられない気配。


 そして容姿。

 二人とも起伏があまりないスラっとした体形と白い肌、長い髪。そしてその髪から垣間見える長くて尖った耳。

 二点を除き似通っているので同族なのだろう。


 〈エルフ族、ですね〉


 ──エルフ。確か長命の種族だったか?


 〈はい。エルフの平均的な寿命は300歳で人の約5倍。容姿の変化は3段階あり、20年かけた「成長期」の後に容姿が徐々に固定。200年程の「成人期」を経て「老齢期」に入ると、人族と同じく老いてゆき寿命を迎えます〉


 ──なら片方は?


 〈個人差があるので断言は出来ませんがそろそろ成長期を終えるころかと〉


 椅子に腰掛けていた、シーラと呼ばれた方。


 ──300年か。そこまで長生きだと記憶とか、思い出とかの整理はつくのかね?


 〈その三倍以上、生きてこられた山水様はどうですか?〉


 ──思い出せないな。


 事実、シルヴィアと会う前の記憶は既に失っており、その後の雷明との闘いの全ても思えているわけでもない。


 〈長命な生き物は大体そんなものです。その時の考え方に合わせて記憶の整理をしていかないと心が持ちません。なので記憶が途切れてしまうのは当然なこと〉


 とここで視線を感じたので目を向けると……王から見て斜め前、ひな壇下でこちらを向いて立っていた男と視線が合う。


 誰だろう?

 そう思ったところで、王が咳払いをする。すると和やかな雰囲気が一旦収まると皆が王に向き直った。


 俺はどうしたらよいのか?


 場違いな気がしたその時、エルフの二人の隣にいたエステリーナが「こいこい」と手招きをしたので、その手招きに素直に従い彼女の隣に移動をする。


「では揃ったところで紹介を始める。山水は前に」


 今朝までの口調や態度はどこへやら、威厳のある振る舞いで俺を呼ぶ。なので数歩前に進み出る。


「お二人に紹介します。この者が先程話した者。現在の名は山水・ナート」


 ここは謁見の間。

 この場は王と面会をする者が来る場所。

 そこで紹介との言葉が出たのだから、このエルフ(二人)への紹介と判断。

 向き直ると日本の古式に沿った礼をする。


「こちらはパルミラル王国の第一王女である【シーラ・マーシャル・パルミラル】殿」


 長くて()()()()に整った顔。貴賓漂う振る舞いに仙女が着るような白い長衣。何もかもが一国の姫に相応しい姿。

 ただまだ若いから? か背丈はエルアノームと同じくらい。多分150cmくらいではなかろうか。


「お初にお目にかかります。シーラ・マーシャル・パルミラルです」


 目立つところもない、普通と思える挨拶。だが……


 うう?


「さ、山水・ナートです」


 ()()()()()()()()()してしまう。


「その隣が我が国専任の外交官であるセシリア・フォント殿」


「セシリア・フォントです」

「山水・ナートです」


 こちらは何も起こらず。

 こちらは逆に俺とほぼ同じの背丈。薄桃色の長衣を着ている。

 お互いに会釈にて挨拶を交わす。


「山水」

「は」

「この者は」


 とエルフの女性を挟んだ、俺の正面にいる男に視線を向けると自ら口を開いた。。


「陛下から国軍を任されているエンリケ・ソルビルトだ」


 と王の紹介を遮る形で名を告げてくる。

 歳は五十を過ぎたあたりか、大柄で筋肉質、浅黒の肌といかにも戦士といった風貌。


「山水・ナートだ」


 国軍、つまりこの国の民。なので口調を変える。


「陛下」


 エステリーナが声を上げる。


「何か?」

「我々を呼ばれたご用件は?」


 この場が俺の為に開かれたとは思えない。たかがいち平民……もう貴族になるのか。だからか?

 だが紹介するにしても大袈裟すぎる。顔合わせなら「公式な場」でなくとも良いのでは? と貴族の習慣を知らない俺でも違和感を抱いてしまう。

 その違和感が間違いでなかったのはエステリーナの問いで判明した。


 さらに北の守りを固めている筈の国軍の将がこの場にいるのが妙に気になる。


「それは」「陛下、その説明はわたくしが」

「よかろう」


 と今度はシーラが割り込む。それを違和感なく認める王。

 この僅かなやり取りだけでも両国の親密さが見て取れた。


 ……しかしコイツ、口調も安定してないし無理して偉ぶってる気がする。後で弄ってみるか。


 勿論、エルアノームのこと。


「では……先ずはエステリーナ様のご結婚、そしてアラナート陛下のご婚約に対し、パルミラル王国を代表し祝福をすると共に、ルーナ様のご加護が有らんことを」


 と言うと胸の前で両手を握ってから目を瞑ると祈り? を始めると10秒その状態が続いた。


「そして突然の申し出にも拘らず無理なお願いを聞き入れて下さったエンリケ将軍には感謝を」


 将軍には軽く頭を下げる。


「いやいや、ワシも良い口実を得たのでそれに乗っかっただけのこと。気になさる程のことではない」

「一刻を争う事態でしたので、非常に助かりました」

「お役に立てたのでしたら幸いです」


「「…………」」


 未だ事情が呑み込めず、エステリーナと顔を見合わせながら首を傾げる。


「それで今回の訪問ですが、ご結婚されたエステリーナ様と伴侶となられた山水様を我が国にご招待いたしたく、急ぎ参ったところです」


「それは大変光栄なのだが……。あ! ルーナ様の御告げで?」


「はい、お二方の婚姻の話を伺いました」


 誰? ルーナ様?


「では陛下、宜しいでしょうか?」

「うむ。許可する」

「ありがとうございます」


「「?」」


「二人には近々パルミラル王国へ視察に行ってもらう」


 二人? 俺も?


「陛下は式後、国を上げた歓待をさせて頂きます」

「お預けか、いたしかたない。その時は頼む」


「「?」」


「それでは」

「失礼します」


 と二人はエルアノーム()と俺達に頭を下げてから退室していく。


 おいおい、話が見えないぞ。


「エル」


 扉が閉まるとエステリーナが真っ先に口を開く。


「はい、何でしょうかお姉様」

「何の話だ?」


 俺も知りたい。


「お二人にはパルミラル王国へ視察に行ってもらいます」


「陛下、それでは()が混乱されてしまいます」

「……そう、なの?」

「そうなのです。ではワシからご説明いたしましょう」



 と将軍から事の経緯の説明が始まる。

 彼によると先日、正確には俺がこの世界に来た日。パルミラル王家に対して『エステリーナとエルアノームの二人が近々婚姻をする』とルーナ様の御告げがあったそうだ。

 その時に『手遅れになる前にエステリーナ夫妻を招待すべし』と言われたらしい。


 なので早速行動に移りたかったが、それをするには問題があった。


 アラナート王国の王都と自国の王都との距離は馬で約五日。馬車だと一週間は掛かる。

 今回は招く立場上、専任大使かそれ以上の位の者を行かせないと、友好国とは言え失礼にあたる。

 さらに前もって来訪の知らせを出すという手続きも必要になるのだが、肝心の「口実」が思い浮かばなかったのだ。


 ……ルーナ様が言われた『近々』とはいつ? 翌日? 三日後? 一週間? 半年?


 いくらルーナ様のお言葉とはいえ、こちらから「結婚した?」とは聞けない。お言葉だから確定しているその情報はまだ自国には届いていなかったので表立って動くわけにはいかなかった。

 そこで頼ったのが、アラナート王国がパルミラル王国以外と領土が接している、もう一つの国のセミルージュ王国に睨みを効かせているエンリケであった。


 その時点で彼に届けられていた情報は解呪に成功した件のみ。気持ち的に王が元気になった姿を見たかったが、国境を離れる訳にはいかずにヤキモキしていたらしい。


 そこに現れたのが第一王女達で、急ぎ王との面会を希望してきた。

 通常王族等、身分が高い者を送る場合、前もって特使や外交官を使い日程などの調整を行うものだが、今回はそれらの手続きをしている時間がないので、コチラを頼ってこられた。


 理由を尋ねたところ『エステリーナ姉妹の婚姻の予定』と『エステリーナ夫妻を急ぎ招きなさい』とルーナ様から言われたとのこと。


 ルーナ様なら間違いはない。

 だがこの場を離れるわけにはいかないので「残念だが」と断りを入れようとしたところ『ルーナ様が「今暫くは争いは起こらない」とも仰っていました』と。


 それならば回復なされた王の姿を見るという名目で、たまたま挨拶に来ていた友好国のパルミラル王国の特使と共に王都に帰還することにした。

 これなら文官などの愚痴も最小限に抑えられるだろう。

 後は、先ぶれの伝令に「来訪の目的」を書いた封書を持たせて準備万端。急ぎ戻ってきたそうだ。



「経緯は分かった。ところでルーナ様は何故私達を招こうと?」


「それは伺っておりませぬ」


「「…………」」


「目的などどうでも良いんですよ」

「だが」

「ルーナ様がお姉様方を指定したのです。なので何も気にせずに行って下さい」

「……いいのか?」

「いいも何も行ってもらわないと私が困ります」

「どうしてエルが困るんだ?」

「お姉様が行かないと私が行けません」


 もしかして自分が行きたいから?


「な、なんですか二人してその軽蔑の眼差しは⁈」


「……分かった、行ってくる」


「よっしゃーーーー!」


 見事なガッツポーズ。それを見た将軍の頬が緩んだ。


 こうして視察との名目での「新婚旅行」が決まった。

 ただ俺としてはルーナ様? が俺達を「急ぎ」で招待したかった理由と、第一王女が放った「気」の意図が気掛かりであった。


すいません、一話被ってました。

第一章は28話となります。

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