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第2話 決意と転移

この空間は天国とかではありません。

 

 ……ん、ここは?


 気が付くと一面花が咲き乱れる長閑な野に仰向けで寝ていた。

 雲一つない晴天。音もなく舞う蝶が頭上を横切る。

 その蝶につられ起き上がり目で追う。


 ……誰もいない。……そ、そうだ。


 腹を見る、が袴はシミ一つない綺麗な純白。


 ……今までで一番危なかったが……戻ってこれた。


 肩から力が抜ける。

 もう少しで今までの苦労が泡とかすところだった。

 その時声が聞こえてくる。


「お帰りなさい」


 銀色の髪の女が現れる。

 感情が感じられない声と表情。それでも無性に嬉しい。

 なにせ20年ぶりの再会。声に至っては初めて聞く。


「……ただいま。シルヴィア」


 やっとここま来れた。残るは「心」のみ。それさえあればこの女を元に戻せる。


「また……行かれるので?」

「ああ、すまない。次で最後、それで終わりだ」


 そう、あと一回。それで願いが叶う。


「選択は成されました」


 事務的に告げられる。


 ……このやり取りもこれで最後。


「では()()()、簡単ではありますが次のステージの説明を致します」


 礼儀正しく頭を下げてきた。

 何度目になるか、思い出せないくらい受けた説明を今回は想像通りの声色で聞く。


「雷明が「最後の舞台」に選んだ世界は「日本」が存在した世界とは【(ことわり)】が多少異なります」

「どの様に?」

「【魔】により成り立つ世界」

「魔とは?」

「神と対となす存在」

「対となす?」

「はい。雷明は既に転生しています」

「……い、いやちょっと待て! それでは協定は?」

「主の力を借りてでも勝たないと無力な存在に戻ってしまう。だから必死なのです」

「俺は死ぬだけで済むがアイツは未来永劫……まあ自業自得か。お前はどう思う……って答えられないか」


「申し訳ありません」


 深々と頭を下げる。


「い、いやコチラこそ申し訳ない」



 俺は【とある神】と取り引きをし、この戦いに身を投じている。

 そして今回のように危ない場面も多々あったが、奪われたモノは全て取り返してきた。

 残るはあと一つ。一戦を残すのみ。



「では説明を続けます。宜しいでしょうか?」

「え? ああ続けてくれ」

「魔の神が雷明に恩恵を与えたことにより、残った私の力が使えるようになりました」

「それは……厄介だよな」


 その身に神の恩恵を受けし女。その女の心。


「後がない雷明が何故この世界を選び【禁忌】を犯してまで()()()()転生したのか」


「それだけ必死?」


「その通り。負けを恐れている」


 それなら何故シルヴィアに手を出した?

 単に思慮不足なだけなのか?

 それとも欲に駆られたのか?


「雷明は今回、今までの経験を捨てさり、力の根源が異なる魔法を選択しました」


 全てのステージで俺に全敗。何をやっても勝てない。だから賭けにでた?


「なら俺も?」

「仮に山水様がスキルではなく魔法を選択した場合、今まで高めてきたスキルポイントの大半は無駄となります」


「……なっ⁈」


 使わずに残してきたのは、奴を確実に滅するため。



『俺は死んだらその時点で終了』



 その縛りがあったが為に何度も薄氷を履む思いをしてきた。

 だが奴にはその縛りはない。無い代わりに一度でも生き残れば良かったのだ。


 常に一から始まるステージ。だからこそ【禁忌】を犯し「先んじて転生」し万全の状態で待つことにしたのだろう。


 今までにない不利な状況。これでは勝ち目が薄い。


「…………」

「山水様」

「?」

「そう悲観しなくても」

「策があるのか?」

「策、というより雷明に付き合う必要はありません」

「どういう意味だ?」

「山水様は山水様の強みを活かせばよいのです」

「……スキル?」

「その通り。相手が枷を外してくれたのです。こちらは遠慮なく当初の思惑を貫き通せます」

「技で圧倒して勝つ、か。そうだな」


 その為に、一つ一つ積み上げてきた。


「選択がなされました。これから肉体を構成します」


「頼む」

基礎値(ステータス)に関しては毎ステージにて高めた限界値を反映させます」

「いいのか?」

「先に協定を破ったのはあちらです」

「そう……か。では頼む」

「次はスキルを追加します」


「お勧めは?」


 逆に何が足りないのかを聞いてみる。するとシルヴィアは独り言を呟きだす。


()()()考えて……。今回は引き継げる自己進化型(オートイノベーション)スキルの代表格である【常識】は常時発動型(パッシブ)スキルでなのでアップデートは無用だし……。優先すべきは……」


「……俺は常識ならあるが?」


 暇なので口を挟んでみた。


「……各々の国によって常識は異なります。その差を自動的に補ってくれるのが進化型(イノベーション)スキルなのです」

「あっそう」


 真面目な返答。まあ「心」がないので仕方ない。


「決まりました。一つは進化しない静的(スタティク)スキルである【収納】にしましょう」

「収納?」

「物を収納しておける、容量無制限の特別な空間のことです。【ストレージ】とも呼びます」


 無制限とは凄い。


「取得初回特典として着替えといった身の回りの物をここで作成して入れておきます」

「他は?」

「あとは【万感(ばんかん)】と【威圧】。こちらは任意発動型(アクティブ)スキルで【居合い】を極めた山水様とは相性抜群。慣れさえすれば直ぐにでも「神の領域(LVMAX)」に達するかと」

「どういうスキルなんだ?」

「先程、雷明の気配を探られたようみ見受けられましたが」

「ああ」

「【万感(オールフィーリング)】とは察知系スキルの最終進化型にあたります。【威圧】は殺気などの「気」を相手に向けることで恐慌状態に落とす手段です」


「ではそれを頼む」


 相性抜群と言われて二つ返事で承諾する。


「なら種族はそのままの方が良いですね」

「種族、とは?」

「今の貴方様は【日本人】に設定されています」

「そうだな」

「貴方様が極めた【居合い抜き】ですが、このスキルを使()()()()()()のは【日本の侍】しかおりません」

「そうなのか?」

「はい。【居合い抜き】もスキルの一つなので他のジョブでも習得は可能ですが、精神力・集中力がずば抜けて高く、刀の扱いに長けた【侍】でなければ真価は発揮出来ません」

「……分かった。変更はせずにこのままで」

()()()()()アンサー?」


 ファイナルとは最後。つまり……


「……ああ」


 もう俺の元の姿がどんなだったか覚えていない、というか思い出せない。それくらい長く戦ってきた。

 思い出せないならどんな姿で()()()()()()()()差し支えはないだろう。


「では早速儀式を行います」


 シルヴィアの体が浮き上がると、フワフワ〜とこちらに寄ってきて顔を近付けてくる。


「ジっとしていて下さいね」


 顔と顔との距離がこぶし3個分になったところで停止。


「あのーー恥ずかしいので目を瞑って貰えません?」


 初めて見る人らしい感情。


「え? ああスマナイ」


 何がスマナイのか自分でも分からなかったが言われた通りにすると……額に温もりが。


「……どうですか?」


 目を開く。すると取り繕った感じの澄まし顔? のシルヴィアの顔が顔前にあった。


「……よく分からない」


 気配を探る能力らしいので再度気配を探ってみたが何も感じ取れなかった。


「私としたことが、浮かれていました」


 微笑を浮かべた? シルヴィア曰く「ここは特別な場所なので他の気配がしないのは当たり前」と説明してくれた。

 俺としては特別な場所よりも。何に対して()()()()()()、少し気になるところ。


「他は? 例えば多勢を相手に有効なスキルとか」

「不要かと」

「何故?」

「今の山水様にはいりません、というより後々のため」


 まあ……いいか。


「では最後に刀を抜いて掲げて下さい」

「刀?」


 言われた通りに鞘から抜く。


 ……ない。


 (つば)から先にあった刃が無くなっていた。


「役目を帯びた刀身を新たに作成します。ご希望はございますか?」


 ……希望……か。


「わたくしの介入はこれが「最後」となります。なのでよくよく考えた上でお答えください」


 希望が通ると言われたら普通なら悩むところ。だが今の俺には迷いは無かった。


「……俺の望みは唯一つ。今度こそ、何事にも負けない、確実に奴を滅せられる刃が欲しい」


「無事「正しい選択」が成されました。武具に関するポイントの全てを注ぎ込みます」


 シルヴィアがその場で手を翳す。すると鍔から先に光が伸びて上身(かみ)を形どってゆく。

 その変化が止まり光が収まった後には直線的な波紋を帯びた、鈍く光る大太刀が残されていた。


 ……以前よりも厚みがある上に鋭さが増している。


 形状までもが変わっていたので鞘に納まらないと危惧したが……鞘が刀に合わせて変化をしたのですんなり収まった。

 すると今度は自分の体が光り始める。


「刀に関してはこれで終了です。最後に身体を構成し直します。暫くの間、動かずにいて下さい」


 徐々に増してゆく光。程なく限界に達して目を瞑ってしまう。

 すると()()()()()()()()()()()が。


 〈その刀を扱うのに相応しい肉体を構築します〉


 ……相応しい?


 〈はい。雷明だけでなく()()()()を欺く為に苦労して貯めてきた、各種ボーナスポイントの全てをご希望に沿う形で配分しておきます〉


 ……つまり?


 〈ほぼ全ての基礎値が劇的に向上しましす〉


 ……さらに強くなれるんだな?


 〈はい。……をも超える力を〉


 ……何を超える?


 〈ただし時が来るまで封印しておきます〉


 ……時、とは?


 〈……神が神で無くなる時……〉


 ……?


 〈最後に注意点が二つ。一つは勝敗の判定方法だけは不変なので決して無理はなさいませんように〉


 ……相手より先に死んだらそこで終了。今までの結果の全てが水の泡。


 〈はい。もう一つは出来るだけ力をセーブしながら戦ってください〉


 ……何故?


 〈欺くため〉


 欺く?


 〈そう、常に見られています〉


 と、ここで光が収まり新しい身体が現れる。


 ──承知した。


 〈私は運命の見届け役。貴方様の命が尽きるその時まで共にいたします〉



「ああ、()()()()()()()()()。もう少しだけ待っていてくれ」


 〈……ありがとう〉


 ん? 今なんと?


 〈では転送を開始します〉



 そこで視界がブラックアウト。何処かへと転移した。


もう少しの間、テンプレが続きます。


次回は本日夕方まてには投稿します。

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