表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/46

第12話 宰相の思惑(2)

宰相さんの言い訳編、その2。

 結果、王配は自殺(自害)

 夫婦仲も順風満帆とまでは行かなかったが悪いとも言えず。それとは別にエステリーナが尽力した国内の改革が功を奏し始めた矢先に届いた訃報。

 その報と原因を知ったエステリーナは失意の底へ落ちつつも国政を行い続けた。


 ここで一旦標的を変えた。

 次は「唯一の王位継承者」であるエステリーナの妹を唆した。


 幼少期に両親を事故で亡くし、親代わりをしながらこの国を切り盛りしていたエステリーナ()にやっと現れた夫が事もあろうか自殺。

 その原因がエステリーナ自身にあったと知り、憔悴しながらも国政に勤しむ姿を見てきた妹は、(宰相の助言に従い)姉を半ば強引に説得し王位を自分に引き継がせてから、エステリーナ()を「近衛騎士第一団団長」に任命させた(した)


 この人選を提案したところ、次王()は意を唱えるどころか大いに賛成したとのこと。

 なにせ第一騎士団の団長の立場は王のアドバイザー的な存在であり、この国では王を最も近くで見守れる立ち位置にいるのだ。

 さらに()()()()()()()()()()()()()()し、国の(まつりごと)にも直接関わらないと、義務感が強すぎる姉の静養には最適だと、瞬時に理解したらしい。


『姉を苦悩から遠ざけられるなら』と喜んで賛同したそうた。


 すると今度は王になった妹が「呪い」に蝕まれてしまう。

 それも徐々に衰弱し死に至る呪い。

 この呪いは王のみを標的としていたため、自ら「仕掛け」を行った。


 そして頃合いを見て仕上げにかかる。


 呪いを解く方法を、宰相(自分)の立場では動かせない、王直属の軍隊で王と王都の守りの要である「騎士団」の纏め役でもあるエステリーナに進言し「タイムリミット(期限)」を理由に全騎士団(邪魔な存在)に素材収集に行かせたのだ。


 材料探しの最難関はファイアードラゴン。

 そこは王国最強の騎士でもあるエステリーナと彼女が率いる第一騎士団に割り振った。


 王都から綺麗さっぱり追い出した後は「予定通り」に王の容態悪化を早め、皆が素材を持って帰還する前に亡き者にする予定であった。


 これが計画の全容。

 だがそこに狂いが生じた。

 予定に無かった「ファイヤードラゴンが倒された」との知らせが届いたのだ。

 この報告を聞き初めて焦りが生じた。


 もう後がない。

 このままでは解呪されてしまう。

 現王が生きていたら王になる夢が潰えてしまう。

 それなら(現王を)亡き者にすれば、残るは()()()()エステリーナのみ。後は時間を掛けて追い込めばよい、と。


 早速最終手段に打って出た。


 『居残りの騎士の謀叛に見せかけた王の殺害』


 証人さえ残さなければどうとでも言い訳できる、と。


 ただ行動を起こすと騎士団は何を差し置いてでも戻ってきてしまう。そしてそれを防ぐ手段はない。それ程に騎士団は強いし王への忠誠心も高い。

 しかも第一騎士団に任せたファイヤードラゴンの肝に比べたら、入手難度は格段に低い素材ばかりなので手土産を入手した上で帰還してしまう。


 なのでここからは時間との勝負。

 騎士団よりも先に、手下が(療養中の)王に辿り着ければ負けは無くなる。


 だがここでもイレギュラーが起きた。

 王の身辺警護を任されていた数人の騎士らが準騎士や城の警備兵、さらには王都の警邏隊を巧みに使い、予想外の奮戦をしたため苦戦を強いられたのだ。


 兵士vs警備隊。

 装備や職業(ジョブ)の違いを感じさせない相手を抑え込むのに時間を割かれ、やっとの思いで手下が王城に侵入を果たしたところに、王国最強の騎士でもあるエステリーナが帰ってきてしまったのだ。


 しかも人外な力を有する(怪しい男)を引き連れて。



「誰も不審には思わなかったのか? 領兵(お前の軍)を王都に連れてくることに」


「ワシは宰相(文官)であり軍人ではない。なので国軍を動かす権利はないし、動かすにしても王の(面倒な)承認が必要で時間がかかりすぎる。なにより将軍(アイツ)()()()()()()()()()()()()()()。だから不在となる騎士団の代わりに我が領地の兵に王都の警護をさせるという名目で呼び寄せた。怪しまれないように最低限の数を」


 なるほど国軍か。王都は騎士団が守っているし普段は外敵等に備えて国境付近にでも配置しているのだろう。それに国軍にも指揮系統は存在するだろうし、そのトップは当然ながら王となっている。その王に反抗的なヤツを軍部の司令官に任命するとは思えない。

 だから自由に使える自領の兵を使ったと。


「次の質問。密使の女の名は?」

「サソリと名乗っていた」

「本名ではないな」


 謀反を唆すような奴が本名を名乗るとは思えない。下手をしたら「帝国の密使」ってところも怪しい。

 それよりそんな怪しい奴を良く信用したもんだ。話術に長けていたのか、それとも……


 まあそちらは追々調べるとして。


「最後にもう一つ。解呪の材料はアレで合っているのか?」

「間違いない……はず」


 なんだその間は?


「この期に及んで嘘はついてないよな?」


 真偽をシルヴィアに確かめて貰うため、しゃがんでから宰相の頭を「笑顔で優しく」撫でようと手を伸ばす。


「ヒィィィィ!」


 何を勘違いしたのか頭を抱えて縮こまる。


 だから何もしないって!


 〈この方は嘘はついておりません、嘘は〉


 との回答。

 知らされていないってことは使い捨てか。これでは証拠どころか証人すら残していないだろう。


 だいたい旨い話には必ずオチがあるってのは常識。そのオチが「自分の命」ってところに、普通なら気付くだろうに。

 その程度だから良い駒に選ばれるんだよ。いやこの国の住人であるコイツも御多分に洩れず、お人好しだったんだな。



 ──まあなんにしても最後の最後で助かったな、この国は。



 転移先があの日あの場所でなかったら?

 俺が竜を無視したら? 

 竜が俺を見て逃げ出したら?

 討伐しても遺骸を【収納】していなかったら?

 その時、エステリーナを助けなかったら?

 助けた時にカイエン達が逃げていたら?

 夜、王都の動きを探らなかったら? それをエステリーナに伝えなかったら?

 俺が王に触れなかったら?


 最後に俺がエステリーナに……


 どれ一つ欠けても今この結果には至らなかった。


 ──……いやこれは奴の企み。ならこれは偶然ではなく、必然の結果と思うべき。


 今、奴にとって一番避けたい事態は俺との一対一での直接対決。なら今回の仕込みの目的は……



 その時、複数の気配がこの部屋に近づいてきた。

 次第に響いてくる足音。

 そして勢いよく開けられる扉。

 見知った鎧を着た騎士が雪崩込んできた。


「宰相殿がいたぞ!」

「ん? 何奴?」


 宰相にではなく、何故か俺に威圧を向けてくる。


 ──お、戻ってきたらやつらか。なら知らないのも当然か。


「宰相殿を離せ!」


「「へ?」」


 宰相と顔を見合わせる。そこで何かに気付いた宰相が騎士達に向け声を上げようとしたところを、再度鳩尾をノーリアクションにて突いて気絶させる。


「き、貴様! 宰相から離れろ!」


「待て、話を」


「全員突撃! 宰相を()()!」

「「「おーーーー!」」」


 抜剣し襲い掛かって来た。

 やれやれ聞く耳持たずとは困ったものだ。状況把握をせずに襲ってくるとは。

 それに引き換え「あの時」のエステリーナはセオリー通りの冷静な行動だった。ということは騎士団というより個々の問題。

 ただどちらにしても、ここで刀を抜いたら「後々の展望」が暗くなる気がする。


「仕方ない」


 まあ情報も聞けた。騎士団も戻った。残る約束は「素材」を渡すのみ。

 一旦この場を離れることに決め立ち上がる。とその時シルヴィアに静止される。


 〈やっと見つけた。今すぐ玉座を破壊して下さい〉


 玉座? この部屋に椅子と呼べる物は一つしかない。つまりひな壇の上に置かれたアレのことか?


 ──破壊? どの程度に?


 〈二度と使えなくなるくらいに〉


 ──理由は?


 〈後程〉


 余程の大事と思い、コンマ何秒の合間に十数回、玉座に向け「本気の居合い抜き」を行う。

 それから迫り来る騎士たちの合間をすり抜け廊下へ逃れると、彼らが追いつけない速度でその場を後にした。


 宰相さんの「処遇」は未だに未定。生かすも殺すも第二章で戻ってくる将軍さん次第。



明日は19時以降に投稿。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ