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第11話 宰相の思惑(1)

個々のジョブや魔法は第二章から。

 

 この世界に来てから数日で奴の手掛かりが。さらにこの件に奴が絡んでいたかと思うと感情の昂りが漏れ出てしまったらしく、俺の変容ぶりを見ていた男は狼狽ながら後退りしてしまう。


「エステリーナ」

「な、なんだ?」

「こいつは俺が一旦預かる」

「え?」


 一般人には認識できない速度で移動、男の手から剣を奪うと誰もいない所に放り投げ、女を引き離す。

 刀の柄を鳩尾に「軽く」叩き込む。


「ぐふ!」


 エステリーナの鎧とは異なり何の不用もなされていなかったらしくボコっと(へこ)むと呻き声を上げながら気を失ってしまった。

 倒れたのを見届けてからエステリーナに向け口を開く。


「頼む」

「え? あ、すまない」


 駆け寄り俺の腕から大事そうに女を受け取る。

 その間も一言も発しない金髪の女、いや王か。

 呪いのせいか衰弱した容姿で人形のように気力が感じられない。


「それとすまなかった」

「え?」

「お前を投げてしまった。もう二度としない」


「…………」


 頭を下げ真摯に謝罪をする。すると驚いた表情を向けてきた。

 そして一瞬の間をおくと、笑みを見せて呟く。


「……貸しだぞ」


 そのまま王を抱えてベットへ向かってゆく。青い瞳を俺に向けたままで。


 〈山水様〉


 ──何だ?


 〈この方の病状についてご報告が〉


 ──急ぎか?


 〈いえ〉「山水殿?」


 宰相から話を聞きだすため移動しようと足を掴んだところでエステリーナに呼び止められる。

 見れば王はベットに寝かされておりメイド達のお世話が始まっていた。


「どうした?」

「侯爵をどこに連れていくんだ?」

「え? あーー情報を聞きだすだけだ。用が済めばそちらに引き渡す」


 ここでは尋問したくない。


「そうか。できたら五体満足な状態で頼む」

「心得ている」


 ()()()()()の尋問は短時間で終わる。そう答えるとエステリーナの意識はベットに向けられた。


「あーーそれより残敵の掃討が始まったみたいだぞ」

「「?」」

「馬に乗った軍団が王都のそこら中を駆け巡っている」


 練度・装備の違いから「蹂躙」という単語がぴったりの動き。その様子をベットから離れた位置で王とエステリーナを見守っていた2人の騎士に伝える。


「お前達と同じ鎧だから他の騎士団だろ」


 二百名近い者達が(ここ)を目指して全力で駆けてくる。


「二百⁈ なら緊急帰投に応じて」

「第二から第五が戻って来たんだ!」


 二名の騎士の表情が明るくなった。

 そう言われてもう一度「覗く」と、掲げている旗が見えてくる。その旗に描かれた紋様は皆同じだが形状が違っていた。


 ──ん? 応じて?


 〈【収納】の中にそれらしい魔道具がありますね〉


 何かしらの連絡手段を持っていたらしい。

「第一団の道具」は俺が全て収納している。ということは【収納】にいれてたら連絡が届かないのか?


 こちらへの興味が薄れたところで部屋から出てゆく。

 移動しながら城の中の気配を探ったが数名の「騎士団員以外」に戦意を持った者は既に皆無であった。なので後を任せ宰相を抱えて移動を始める。


 これから行うのは尋問。その内容を「部外者」に聞かせたくない。

 気配を探れば人の有無は調べられるが、それとて万全ではない。

 この世界には【盗聴】というスキルがあるらしく、これを極めた者であればそこそこ距離が離れた場所からでも会話を聞けるらしい。


 さらに厄介なのは「魔法」の存在。

 姿を消す程度の魔法なら、気配で存在を見抜けるらしいが、精神を操る魔法を「第三者」が掛けられていた場合、それを的確に見分けられるのはこの世界ではシルヴィアしかいない。それも俺が対象に触れて初めて分かるのだ。


 なので障害物が少なく可能な限り周囲に人がいない区切られた場所を探そうと暫しの間、彷徨っていたところ、シルヴィアが「気になる場所を見つけた」とのことでここへやってきた。


 重厚な両開きの扉を開けると一直線に敷かれた真っ赤な絨毯と、その先にある雛壇の最上段には一際豪華な椅子が置かれてあった。


「さて起きろ」


 その部屋の中央に宰相を置き、何度か平手打ちして覚醒を促す。

 すると唸りながらも目を覚ました。


「……ここは」

「知らん」


 人では無い妙な気配を除けば「殿」の城にあった「大広間」に雰囲気的が似ている。


「し、知らん? お前は……ヒィィィィーーー」


 俺を見ると「ほふく前進」で離れようとする。


「まあ待てって。質問に素直に答えてくれたら何もしない」


 足を掴み引き止める。


「し、質問⁈」

「正直に答えてくれたら何もしない。約束しよう」


 俺は手を出さない。その後は知らんが。


「さっき「雷明」の名を聞いてビクついていただろう? 何故だ?」


「…………」


 明らかな動揺を見せながらも無言を貫こうとしている。

 ただそれは完全な悪手だ。


「素直じゃないな。なら仕方ない」


 立ち上がり鎧に覆われた左手首を踏みつける。


「う、うが!」


「もう一度だけチャンスをやろう。正直に答えれば良し。さもなければ……」


 刀を抜くと切先を親指と人差し指の間に軽く下ろす。すると大理石の床に10cm程突き刺さった。


「ひぃぃぃぃーーーー」

「次は目を瞑ろうか」

「わわわわ分かった、話す!」


 全く、その程度の度胸で謀反なんぞ起こすなって。




「……なるほど。それで良く上手くいくと思ったな」

「…………」

「一つ尋ねるが「その後」を考えたことはあるのか?」

「そ、その後?」

「奴らがお前の境遇を憐れんで手を貸したと本気で思っていたのか?」

「そ、それは」

「奴らの企みが成功した先に必ず訪れるであろう、お前の将来の姿を思い浮かべてみろ」


「…………!」


 突然冷や汗を吹出すと項垂れた。


「お前のせいで死人がでた。ここまでしたらもう言い訳は通じない。潔く責任を取るんだな」



 ◇


 ある日、この大陸で一番大きな国である「帝国の密使」と名乗る男女がやってきて今回の計画を持ちかけてきたそうだ。

 先先代の王と腹違いの兄弟であったこの侯爵は、王位継承権がないにも関わらず王になりたいという夢があり、そこを利用されたらしい。


『継承権を持つ者がいなくなれば王家の血筋である貴方が王になれる』


 と唆された。しかも王になる手伝いまでしてくれると。

 その交渉役の女が一緒にいた男を「雷明」と紹介していたそうだ。


 因みに計画の第一段は、

 ()()()()()()()エステリーナを謀略にて()()()()()()()()()()

 これは大して時間も掛からず成功したらしい。


「どうやって退位を迫った?」

「そ、それは……………………」

「そんな情報何処から仕入れたんだ?」

「しょ、職務上、王族の情報もワシが管理している」


 つまり立場を利用したと。

 虫酸が走る程の不快感を覚える。その不快感は情報を悪用したことに対してではなく、その情報を「(おおやけ)にした行為」に対して。


「……最低だな、お前」


 多分、エステリーナの苦悩はその時から始まったのではないか。


明日も夜に更新。

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