4.スラミンよ、永久に眠れ・後
「はぁ……はぁ……中々やるな」
エイラは片手で頭を抱え、ため息をつく。
スライム達も今ので体力を使い切ったのか、液体に近い状態になっている。
「スラミンさん……お願いします! ボク達じゃ……倒せません!」
「せっかく鍛えて貰ったのに……面目ないっす!」
「次までに、動画配信でバエる一発芸考えときます……」
「ちなみにむっつりスラミンは、スケサン先輩が酒の席で大笑いしながらそう呼んでました」
「サキュバスのメロさんも大笑いでした……」
「がーん」
互いに満身創痍(スラミンはメンタルダメージ)だが、その瞳は闘志に燃えていた。
カズトは愛する者の柔肌を守る為――。
スラミンは傷付いたその心を奮い立たす為――。
「いくぞ、スライムッ!!」
「こうなりゃヤケだぁぁぁぁぁ!!」
互いの攻撃が、交差する――その時だった!
「ていっ」
「あ痛ッ」
スラミンが飛び跳ねた所を、エイラが杖を振り下ろす。
ぷるぷるした身体は床に叩きつけられる。
「はい。これ剣で刺して」
「あ、うん」
カズトは言われるがままスライムの弱点であるコアを刺した。
スラミンはその場で液状化し、死亡する。
『スラミンさぁぁぁぁん!?』
「これポイズンスライムでしょ? 経験値、いっぱい入っただろうし……今日は帰ろうか♪」
「そうだね。ボクも疲れたよ……」
「お風呂でいっぱいマッサージしてあげるからねー……帰還魔法!」
2人の頭上に魔法陣が出現し、それが下へ移動する。
そうすると、そのまま2人が光の粒子となり消え去る。
「スラミンさん。俺、アンタの勇士、忘れねぇから……」
「おぉ魔界の神よ。スラミンさんに、せめて安らかな死をお与え下さい……」
「みんな泣くんじゃない! 泣いてたら、スミランさんが安心できないだろ……」
スラミンの死体を囲んで、メソメソと泣くスライム達。
そこへスケサンがやってくる。
「あっ、終わった?」
「スケサン先輩! スラミンさんのお墓。お願いします!」
「俺達、もっと鍛える為に、ジョギングに行ってきます!」
「行くぞぉぉ! ファイ!」
「ぷるっ!」
「ファイッ!」
「ぷるっ!」
掛け声と共にどこかへ跳ね去って行ったスライム達を尻目に、スケサンは頭をかく。
「忙しいな、アイツ等……」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
本日出没した冒険者の紹介コーナー
新人冒険者のカズト(16歳)
職業:見習い戦士
レベル:5→11 レベルアップ!
装備
武器:ショートソード
頭:気合のバンダナ
胴:銅の胸当て
腕:アイアングローブ
足:ブロンズグリーブ
趣味:剣術指南の本を読む事
好きなもの:エイラのマッサージ
嫌いなもの:ピーマン
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
新人冒険者のエイラ(17歳)
職業:神官
レベル:12
装備
武器:神官の杖
頭:神官の帽子
胴:絹のローブ
腕:なし
足:貝殻のサンダル
趣味:カズトのお世話
好きなもの:カズトの笑った顔
嫌いなもの:ピーマン
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「で、先輩? 誰がむっつりスラミンだってぇ?」
「よーし、今日は俺の奢りだ。お前も店に来るだろ?」
「わーいってごまかされると思ってんですかっ!」
「――行かないの?」
「……行きます」
2匹はしっかりと飲み過ぎて、次の日ボス代理に烈火の如く怒られたのであった――。
おわり。