NO.6 Ace Bird Attack
鳩原はパターンをとりあえず2つ考えていた。
1つ目は機関銃などの武装でミサイルを撃ち落とすこと。できれば最適だが、武装の扱いに慣れていないという理由で排除する。
2つ目は宙返りやエルロンロールなどの技でミサイルを振り切ること。誘導ミサイルとはいえ、急すぎる方向転換はできない。これらの技を何度か使えば振り切れるし、鳩原には成功させる自信があった。しかし鳩原はこの方法も排除する。理由は場所だ。ここは市街地の上。誘導を切られたミサイルがどこへ飛んでいくか読めない。
鳩原が選んだのは――3つ目の案。
鳩原は急降下し、速度を上げる。
「ロー・ヨー・ヨー(高度を犠牲に速度を上げる技)で振り切る気か?」
「違うさ」
鳩原が狙ったのは――先ほどのカーチェイスで利用した跳ね橋。
「さっきお前が飛び越えた橋か!!」
鳩原は高度を下げ切った後、機体を90度回転。その状態で上がった橋の周囲を回る。
誘導ミサイルは鳩原の機体を追うが、橋を迂回しきれず橋に激突。鳩原は橋を盾にミサイルの撃墜に成功した。橋は壊れてしまったが人命は1つも失わずに済んだ。
「よぉし!!」
「っ!!」
トキは唖然としていた。
誘導ミサイルを橋に当てるという案、それを実行させる度胸と技術。
天才と言われ続けていたトキでさえ、目の前の才能に驚かずにいられなかった。想像を超える天性の操縦技術。
「後は……!」
鳩原は機体を急上昇させる。
上に上に……雲より上に飛ぶ。
高度を上げたのは相手に自分たちの存在を悟らせないため。そしてロー・ヨー・ヨーを使うためだ。速度を完璧に乗せ、ミサイルを放つ隙すら与えず、距離を詰める。
「俺の平穏を――――返しやがれえええええええええええええええええぇぇぇっっ!!!!」
急降下しながら速度を乗せていく。
詰まっていく距離。敵機は距離300でこちらに気づくが、すでに手遅れ。ミサイルを発射する前に距離100mまで近づくことに成功する。
鳩原は機体を起こし、敵機と直線で並ぶ。
「ハト!」
「ぽちっとな!!」
赤いボタンを押す。
すると画面にパスワード入力画面が現れた。
「パスワードあるじゃないか!」
「忘れてた!!」
最大12桁のパスワード。入力欄には英語と数字と記号がある。
「パスワードは!?」
「0516! 私の誕生日だ!!」
「……絶対やっちゃダメなやつだろそれ」
鳩原はパスワードを入力する。するとアナウンスが機内に響いた。
『ナンバー226、黒筐武装“Ace Bird Attack”開放します』
鳩原は何が起きたかわからず、頭に?を浮かべる。
「なにが起きたんだ!?」
「黒筐武装っていう極小のブラックホールを内蔵する箱がウチらのビルドには組み込まれている。それが開放されたのさ」
「ブラックホール!? それが開放されると……どうなるんだ?」
「ブラックホールに収容されていた私だけの特殊武装が開放される」
2人の乗る機体ガシェットエース、その腹の部分に内蔵される黒い立方体の箱が弾ける。すると黒い塵が機体を覆い、様々な武装が突如として機体に装着された。
――高出力ブースター
――起爆塵
――超耐熱装甲
高出力ブースターはビルドの速度を3秒だけ3倍にさせる。ただでさえ最高速の高いビルドの速度が3倍になると、常人では目で追うことができない速度になる。あまりに燃費が高く、通常の装甲では摩擦熱によって火だるまになるため、通常武装には入っていない。
高出力ブースターにより高速化した機体は空気と強い摩擦熱を起こし、着火する。起爆塵(可燃性粒子)は摩擦によって生まれた火を爆発的に広げ、機体は炎を纏う。炎の熱は超耐熱装甲により遮断。パイロットおよび装甲内は被害を受けない。
ガシェットエースは加速し、炎を纏う。
まるでフェニックスのような炎の鳥が空を舞う。
「……ビルドが、炎を纏った……!?」
「これが私のガシェットエースの必殺技、エースバードアタックだ!!」
火炎を纏ったビルドは敵機に高速で接近する。
敵機が新たに放ったミサイルも、弾丸も、何もかもが炎に呑まれ跡形もなく熱失する。
その風切り音はまるで鳥の雄たけびのようだ。
『え?』
通信越しに戸惑った声が響く。
『うわああああああああああああああああああああああああっっっ!!?』
炎の渦が敵機を丸呑みし、焼失させる。
炎を纏って3秒で炎を消失。黒筐武装で展開した武装は黒い粒子に分解され、また黒筐武装に閉じられる。
「これなら撃墜した機体の破片が地上に落下することも無い」
灰しか残らなかった。
鳩原は武装ビルドの戦闘力を目の当たりにし、冷や汗をかいていた。空警だけは相手にしちゃいけない……と心の内で誓った。
――余談。
愛機が消される様を地上から見ていたとある黒人男性は1人涙を流していたという……。
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