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NO.2 カーチェイス その2

「マジか」


 鳩原はバックミラー越しに追いかけてくるパトカーを確認し、気怠そうに頭を掻いた。


「……職務に忠実な奴か、恐ろしい馬鹿かの二択だな」


 鳩原はパトカーに様々な揺さぶりを掛ける。法定速度お構いなしの爆走、Uターン、逆走。そのどれもパトカーはピッタリついてきた。


「本当に警官か? 法律ガン無視だな」

「おい! 大丈夫なのか! このままじゃ……」

「心配無用です。時間は稼ぎました」


 時間は18時半。

 サイレンの音が聞こえる。

 今度はパトカーのモノじゃない。このサイレンは、跳ね橋が上がることを知らせるモノ。

 いま、タクシーの正面の道は封鎖しようとしている。この先にある跳ね橋が上がっているためだ。鳩原は跳ね橋の角度、現在のタクシーの速度、全てを頭の内で整理し計算する。


「おい、お前がやろうとしていること、わかるぞ」

「そうですか」

「……できるのか? できるんだな!?」

「俺は無茶はしませんよ」


 鳩原にとって、これは無茶でもなんでもない。全て計算の上の安定安全な策。

 タクシーは遮断桿をぶち破り、上り途中の跳ね橋に乗り込む。

 速度を全開に。跳ね橋を発射台に橋と橋の間を飛び越える。


「うわあああああああああっ!?」


 鳩原は跳ね橋を飛び越え、すぐにブレーキを使って下り坂を丁寧に走る。


「……す、すげぇ」

「どうも」

「でもよ、アイツらも飛び越えてくるんじゃないか?」

「無理です。今のタイミングがギリギリ、ドンピシャのタイミングです。もし俺たちの後を追って飛んだのなら、海に落ちてます」


 技量の問題じゃない。時間の問題だ。あのパトカーの位置からでは全速でいっても飛び越えるのは不可能。

 カーチェイスは鳩原の勝利で終わった。


「へ、へへっ! 感謝するぜアンタ……報酬は弾むよ。いくら欲しい?」


 銀行強盗は札束が入ったカバンを見せる。

 鳩原はタクシーの料金メーターを指さす。


「メーターの分で結構ですよ」


 鳩原はまた気怠そうに頭を掻いた。



 --- 



「ガッデム!!」


 上がり切った跳ね橋を前に、タクシーから降りたオストリッチは地団駄を踏む。


「……まさか私から逃げ切れる奴がいるなんてね」


 悔しさを滲ませて笑うトキ。


()()()()勝負はアンタの勝ちだ。だが、ここから先は話が別だ」


 トキは首に掛けた笛を口に咥え、鳴らす。

 笛の名はキーホルン。それは翼を呼ぶ笛。(人間が拾えるほどの)音が響く範囲は精々100メートルだが、その音波は数十キロ先まで届く。

 音波を聞いたイエローカラーの戦闘機はひとりでにエンジンを燃やし、格納庫から飛び出す。

 戦闘機は空を飛び、主人の元へ駆けつける。


「行くよ。ガシェットエース」


 戦闘機を背後に据えて、トキは冷淡な顔つきをする。

 戦闘機の名はビルド。重力制御装置、32コアブースター(1本の筒の中に小型の32個のブースターを積んでいる加速装置)、核熱遮断電壁、クリアメタル装甲を搭載した最新鋭の航空機だ。

 重力制御装置による空中での静止、32コアブースターによる細かな出力・速度調整、核熱遮断電壁とクリアメタル装甲で雷や雨や突風といった自然への対応力を可能としたまさに万能の航空機。空の王者。


 ビルドを呼ぶことは彼女にとって屈辱的なことだった。言うなれば、組手で負けたからマシンガンを持ってきたようなモノ。


 ここから先は勝負ではない。チェックメイトの掛かった後のチェス、ただの作業だ。

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