NO.9 ぽっぽっぽ、はとぽっぽ
世界空域連合捜査本部は空中にある。ゆえに、中に入るためにはビルドで直接格納庫に入るか、地上から繋がる無数の管を利用するかだ。鳩原たちは管を利用する。
まずWSP所有の施設に入る。そこで荷物検査を受け、エレベータールームに入る。そして指定のエリアを選択。するとエレベーターは動き、透明な管を通って世界空域連合捜査本部に入る。
「……はぁ。来るだけでめちゃくちゃ疲れたな……」
エレベーターは玄関ホールに到着。玄関ホールに降り、三人が姿を見せると、WSPの職員が気味悪い物を見るような視線を向けてきた。
(なんだ……?)
気分としては、進学校に転入してきたリーゼント不良学生。
畏怖の視線を空警達は向けてくる。
陰口が聞こえる。『うげっ、第9班だ』、『トキとオストリッチ。また暴れたらしいぜ。今度は橋をぶっ壊したとか』、『怖い怖い……目合わせないようにしよっと』。
鳩原はトキたちに疑惑の目線を向ける。
「なにお前ら、嫌われてるの?」
オストリッチは歯を見せて笑う。
「そりゃもう、なぁ?」
オストリッチがトキに視線を向けると、トキも悪い笑みを浮かべて、
「嫌われ者集団だよ。へっへっへ!」
「なんで誇らしげなんだよ」
「今日からお前も嫌われ者の仲間だぜ、ハト」
「うっ……別にいいけどさ。悪目立ちは慣れてるし」
通路を歩いていくと、『Team9』という看板がぶら下がっている扉の前にたどり着いた。自動ドアで、近づくとドアはひとりでに横にスライドした。
「おーい帰ってきたぞ皆の衆!」
意気揚々とオストリッチが挨拶するが――中には誰もいなかった。
「あり?」
「どういうこった? 私たち以外誰もいない……?」
「ここが第9班の事務所か……意外と普通だな」
大型スクリーン。各班員の机。冷蔵庫、電子レンジ等々の家電。シミュレーター室、格納庫、オペレーター室、班長室、それぞれの部屋に繋がる扉。大体そんなところ。
さっきまで誰かが居た形跡はあるが、誰もいない。と思ったら、
「ん?」
部屋の隅に、パソコンを膝に置いた少女を発見した。
「ようやく帰ってきたか。お前達」
偉そうな口調だが……小学生ぐらいに見えるほどの少女だ。
銀色の長髪で、眠たげな翡翠の瞳。ひざ下まである白のロングシャツを着ている。シャツにはデカく『幼女最高』と漢字で書かれている。口に咥えた飴玉を上下に動かし、少女は鳩原に視線を合わせる。
「新入り……ジャパニーズ。日本人……」
「え? そ、そうだけど」
「アニメは何が好き? うちはNARUTOとハイキューとろしでれ。後はそう、マクロスシリーズは我が道しるべなり」
「えーっと?」
よくわからないが、とりあえず、
「俺は……とある科学の超電磁砲と、BLEACH。かな。BLEACHはアニメというか、漫画派だったけど……」
「そうか……! うちの推しは佐天と平子だ。後で語り合おう。同志よ」
(なんだこの子、親日家?)
「てかオイオイ! それどころじゃないだろラスタチカ!!」
トキが言うと、北欧系の少女――ラスタチカは「そうだった」とトキに顔を向ける。
「緊急事態だ。テロリストのものと思われる無人機部隊が27空域に出現した。第9班総出で事に当たっているが手が足りていない。すぐに応援に向かってくれ」
「マジかよ。俺たち以外全員行って手が足りてないのか?」
「班長は班長会議で行けていない。パロットは服役中。動けたのはレイヴンとケツァルと烏秋だけだ」
「人手不足だねぇ。つっても、私は無理だぞ。肩怪我してるからな」
トキは包帯の巻かれた肩を見せる。
「俺も愛機がねぇからな。アレ以外に乗りたくはねぇ」
「となれば……」
全員の視線が鳩原に集中する。
「おい、正気か? まさか俺一人に行けと言うんじゃ……」
「うちがバックアップにつく」
「バックアップって……」
ラスタチカはその小さな胸を張り、
「うちはこの班の『予報士』。絶対的天候予知装置から得た情報を元に天候予測と戦局予測を立てる。わかりやすく言えばオペレーターだ。うちがついてれば無人機如きで死ぬことは無い」
「ラスタチカは最高峰のオペレーターだよ。こんなナリだけど信頼していい」
トキの言葉に嘘はないのだろう。トキも、オストリッチも、新人の鳩原を送り出すことに一切の不安が無い表情だ。無論、会ったばかりの鳩原を信頼しているわけじゃない。ラスタチカを信頼しているのだ。ラスタチカならば、新人だろうが戦場で生き残らせると、そう信頼している。
(ここに入ると決めた時に、戦場に出る覚悟はした。それに相手は無人機、殺人の罪悪感を抱くこともない)
鳩原はラスタチカの方を見る。
「サポート頼めるか。ラスタチカ」
「オッケー。任せろポッポ」
「ぽ、ポッポ……?」
「日本の歌であるだろう? ぽっぽっぽ~♪ ハトっぽっぽ~♪ ってね。お前の名前、鳩原なんだろ? だったらコードネームはポッポでいいだろ」
お、いいなソレ。と同調するトキとオストリッチ。
「まぁ……好きに呼んでくれていいんだけどさぁ……」
ピジョンという仇名に続いて、ポッポ……。
(なんつーか、退化……してるよな。次はピジョットって仇名でも付けられそうだ……)
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