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終末週末紀行  作者: 和寂
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時間外労働

###


けっ。いいようにからかいやがって。でもあの二人に勝てないのは事実なんだよな。


あいつら、特に今喋ったいけ好かない気の良い奴は、ウチの支部でもナンバーツーの腕前(ウデマエ)だ。

その分俺よりも緊急発進(スクランブル)は掛かってるし、その分少しお給金も良いはずだ。

とはいえあいつは妹を養って、学校にまで行かせてるんだからそこまで余裕はないだろうけどな。

まあ良い同僚なのには間違いない。


っと、1030までに出頭するようにとあったので急がないと減給されてしまう。

出頭先は第3モビルスーツハンガーだったはずだ。

現在時刻は1016。ここからは10分弱。多分間に合う。


走りながら俺達が所属しているザフスト──正式名称なんだっけ──の業務内容の解説をば。

誰に向かってかって?

そんなの知らねえよ。


俺たちの主な活動は、街区やその他施設や様々な場所のゴミの撤去、道路の舗装や上下水道等のインフラの整備、対人類敵性物体(・・・・・・・)との戦闘、、、

などとまあ、金さえあればなんでもやるPMCといったところだ。


今日はその対人類敵性物体、アン◯ジャイ○ンツー、、、なんだっけ? 通称AGEの出現が確認されたので、非番だった俺に運悪く呼び出しが来たのだ。


東西に通る中央通りの東端から少し南に行ったところにザフスト第三支部がある。

俺はいつも西木交差点から一本南の玉木通りを通って行くことが多い。

なぜかと言うと、、、大した理由ではないが、玉木通りには今では珍しい自生樹が枯れずに残っている。なんとなくそれを眺めるために通るだけだ。


交差点を曲がって玉木通りに入ると、何やら道に人が集まっていた。

遠目に見ると道いっぱいにできたクレーターが見えた。また隕石か。最近多いな。


少し近付いてみるとまだ落ちたばかりのようで熱々だ。

いや、これやばくね?間に合うのか?

今は1020ちょうど。

かなり急がないと隊長にこっぴどく叱られるうえに給料が減っちまう。

時間外労働をさせられる上にそのボーナスも減るのは勘弁願いたい。

俺は残りのバッテリーを使い切る勢いで駆け出した。


***


危なかった。

あと20秒遅れていたら遅刻だ。

やれやれ。

そういえば樹に被害はなかったのだろうか。帰りに見に行くか。


一息ついて待機室に入り、自分のロッカーを開けて作業服のツナギを取り出す。

着ていた防護服は脱いでロッカーに放り込む。

本当はパイロットスーツを着ないといけないのだが、めんどくさいし時間がないのでただの整備服を着る。

これでも機密性以外の機能はちゃんとついているので大丈夫。


ちなみにだが、戦闘時に着用が推奨されているパイロットスーツは、圧縮空気や高レベルの宇宙線遮断機能、体温保持などの生命維持機能や、無線機能などを備えつつ、コクピットに収まり、戦闘を妨げないレベルまで軽量、小型化されたものだ。

ぶっちゃけ普通の防護服の5倍くらいの値段がする。

いくら動きやすいとは言え消耗品として個人の買えるものではないし、

装着が面倒なので結局普段使いはしにくい。


とまあ、身も蓋もない話はさておき。

ヘルメットを被り、第3ハンガーに入った。


「おーら遅いぞ井上。隊長が怒ってるぜ。さっさと行ってこい。」

整備の中村さんが嫌なことを伝えてくる。


うわぁ、そういえば今日のシフトはよりにもよって隊長と玲華だったな。

こんなことなら少し遅れてくればよかった。

──いや良くないか。給料が減るのはシャレにならない。


昇降機に乗りながら現状を確認する。

「中村さん、交戦開始からどれくらいですか?」

「5分ちょいってところかな。場所は管制官に訊いてくれ。俺は知らん。」

「了解。」


コクピットに入って主電源を入れる。

各モジュールの起動を確認。

戦闘ステータスで起動。

主モニター起動、視野良好。

駆動エンジン・モーターレスポンス良好。

推進剤注入完了確認。

火器薬室装填を確認。


管制室に通信を繋ぐ。


「こちら第二班井上康太。出動準備完了。指示願います。」

『こちら管制室。戦線はイザナギ海岸へ移行中。進路東2で発進願います。』

「了解」


さて、行きますか。


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