命
『こちら08、右側面後方より更に敵中型8体接近!』
『09から11小隊、シグナル消失! 南方戦線崩壊!』
『こちら04! 中型4体に囲まれているっ! 救援を乞うっ!』
インパクトハンマーで中型二体を纏めて潰しながら、戦況モニターを確認し、戦線全体の確認をする。
戦端が開かれた頃と比べて戦域は大きく狭まり、戦線もズタズタにされている。それに、6時間とはへミスのカタログスペック上の戦闘機動限界時間だ。
死が、迫ってきている。
距離50以内に敵の反応がないことを確認して、通信を開く。
「部隊各機に告ぐ。戦線を下げる指示がそろそろ下ると思う。32と33は他部隊の救援準備。312と313もそれに加われ。322は残って自分の援護」
『『『了解』』』
『なんで自分なんすかー?』
『それで格闘戦するやつが救援に来ても困るだろ』
『ま、いいですけどねー』
のんきな奴だ。まあそれくらい肩の力を抜くくらいがちょうど良い。
死ぬときはみんな死ぬ。
それが世界の摂理だからこそ。
『本部より東部方面へ! 戦線をR5まで後退せよ!』
『02了解』
『06了解っ!』
『07支援求む!』
『08了解! 07のカバーに回ります!』
「03了解。04と13の支援に回ります」
『助かるっ』
『くそっ』
『03、08中隊、ポイントNW38まで後退してください!』
「ああ、あとでな」
『ええ、撤退支援後に』
『そんなっ』
「荒木隊長、始末書の提出速度でも競いますか」
『ハハッ、流石は音に聞く第三支部だ! 余裕綽々といったところかッ』
通信が切れたので交戦状態に入ったのだろう。
まあいい。我々とて不死身ではない。戦線から孤立すれば待つのは死のみ。手短に指示を伝えることが、今できることだ。
「予定どおり32は07中隊を、33は04中隊の支援に回れ。ポイントは更新されてるから各自確認。部隊内通信はそれぞれ0032及び0033。小隊識別速やかに更新……確認。では、無いとは思うがミイラ取りがミイラにならぬよう、いのちだいじに。各隊行動開始! 322と自分は各隊の移動と同時に囮撹乱」
『『『了解』』』
「死ぬなよ」
リアモニターに部隊の展開を確認しながら、距離200ちょいに出現した中型の群れを認識。
「岸、ツインドッグだ。どっちがいい」
「えー。じゃあフォワードで」
「バックワードと言っていたらコクピット揺らしてたところだ」
「怖。あれまじで怖いんすよね」
わざわざ機体を腕で組んで守るようにする岸。器用だな。
「言うまでもないと思うが、残存バッテリーには留意しろよ」
「うーす」
「よし、目標視認。距離78。セプターゴー」
「ラジャー」
岸機が背中のバインダーを開き、ホバー機動をする。あれはアイツのカスタムだ。通常Sa型は、空中格闘戦ができるのが強みであるため、背部に空力性能を上げるための複合バインダーが付いている。
だが岸の機体は、揚力を発生させる主翼を外し、代わりに低空でのホバー性能を上げる可変翼複合スラスタのようなものを付けている。
結果として、彼の戦闘スタイルは地表をゴキブリのように素早く這い回る変態性の高いものとなっている。ちなみに普通に強い。格闘戦がメインな為、弾丸消費率も少なくエコでもある。
『なんかすごく、バカにされてる気がするっすね』
「気のせいだろ。接敵5秒前。ターゲットマーカー確認」
『うす』
「カバーするから好きにやっていいぞ」
『助かります。じゃあマーカー3から行きます』
「了解」
ギアを再度ボトムに入れ、岸の動きに備える。
いつも通りの、命の賭けの時間だ。
年単位の更新で笑えますね。
笑ってください。
笑いましたね?
よかったです。
戦闘描写がすぐ続く予定です。
よろしくお願いします。




