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終末週末紀行  作者: 和寂
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サクリファイス

『こちら西村、四方のバンド固定完了しました。あげてください』

『天木了解。中居さん、岸、持ち上げてくれ。畠山、巻き上げ時ワイヤーがたるまないよう注意。各作業員もモノから目を離すなよ』

『『了解』』

ニ機のへミスがゆっくりと箱を持ち上げる。2m程上げたところで止め、下に馬を噛ませゆっくりと降ろす。


『接地確認よし。中居さん、岸、離していいぞ。畠山はワイヤーのロックの確認。それ以外は調査に掛かれ。佐藤さんからあまり時間はないと念を押されてるから急ぐぞ。あと再度繰り返すが、これは部隊機密として扱うとの通達だ。くれぐれも演習中にお漏らししたりするな。以上!』

『『了解』』


格納庫の作業員が慌ただしく足場を組み、箱を調査し始めた。

しかしなんとまあ、継ぎ目すらない美しい立方体(フォルム)だな。


「ちょっと、どこ触ってんの」

「え? 何がっすか?」

「自分の左手見てみなよ」

「いや見えるわけないっしょ」

「ほらそこ喧嘩しない」

「「あなたはもうちょい頑張ってください」」

「あいわかった。今すぐお前らを放り投げて大声出してやる」

「あっごめんなさいすいませんあっやめて振り落とさないでごめんなさいなんでもしますからあいやなんでもするわけではあっごめんなさいなんでもしますから」

「もうちょっと強く揺らしてもいいですよ」

「あんたは頼むから余計な事を言うな」


やれやれだ。

実際担いでいる感じ、二人併せて120kgちょいだろうからそこまで苦ではない。

「色々訊きたいことがありますが聞かない方が身の為な気がします」

「賢明な判断だな」

「自分は72だったかな」

「遠回しに確定させようとするのやめてもらえます?」

「井上先輩が引き算が出来るとは限らないっしょ」

「お前も大概振り落とされたいみたいだな」

「さーせん」

俺の腕の上に腰掛けて一つ上の隙間から覗いている後輩二人は尊敬とか欠片も持ち合わせてないらしいな。

「ままええわ。箱の中見たら直ぐにずらかるぞ」

「「了解」っす」


とはいえ遠目から見ている限り作業に進展はなさそうに見える。そもそも『箱』なのだろうか。ただの立方体なような気もする。

『ごめん、なさい』

「今度は何だ」

「「え?」」

「え?」

「またなんか謝ったろ」

「いえ? 遂に幻聴っすか?」

「うーん?」

「そんなに謝って欲んg

『私の、せいで、この世界は』

どこからか声がする。なんだ。誰だ。

んんんゆんんあ(いきなりなんですか!)

「どうしたんすか?」

いきなり手を放し口を塞いだことに抗議する後輩に構っている場合ではない。

辺りを見回すが整備通路には自分達以外誰もいない。

「この世界は、なんだ!」

『……あなたは、誰?』

「俺は井上だ!」

『そう、名前を持っているのね』

「どういう意味だ!」

『私を赦して、くれますか?』

「それは、どういう……」

『赦して、くれますか?』


***


「ダメッ! コーチン! それ(・・)に応じたらあなたは!」

「なんだ 玲華! 今度はどうした!」

「人で亡くなってしまう!」

「落ち着け! どこへ行く!」

「コーチンが!!」

「康太がどうした! くそっ、こちらブリッジ、佐藤だ! 月島がトランスに入った! 俺は手が離せない! メインシャフト区画の人員は対応してくれ!」

『こちらA12区画竹下了解!』

『こちらA03エレベーター前、降りてくるエレベーターあり。確認します』


***


「俺は、俺には。赦すなんて資格はねえよ。そんなもん佐藤にでも訊いてくれ」

『貴方は選ばないのね?』

「ああ、そうだな。俺には、選べない(・・・・)

『そう。悔しいけど……正解よ』

「そうかい。……俺は戻るぞ」


箱に見向きもせず踵を返す。

今は、誰とも話したくない気分だった。


格納庫では立方体が突如液化金属となり大騒ぎになっていたが、知る由もなかった。


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