電子ツール騒動(2)
銃声が響き渡る。
ここ数日、学園都市では珍しくはない音である。
バリケードをはり、保安部が占拠された施設を包囲。
弾丸を放つ武器の性質上、決して無尽蔵ではないが電力と出力端末さえあれば、弾薬補充は即座に可能。
更に占拠されているのが、学園都市外部輸送の搬入施設で、電子ツールでは具現できない食料が溜め込んである等の要素が重なれば、学園都市の持久戦は体力、精神的な物が通常以上に物を言う。
「弾薬補充はまだか!?」
「第2障壁、限界だ!!」
鎮圧に当たっている保安部達も奮戦。
しかしほぼ同時多発に、銃火器系ツール使用の事件があちこちで起こっているため、人員がまるで足りていない。
「光一、このマント大丈夫か? 面白そうではあるけどさ」
「頼もしすぎるぞお前」
「裕樹、いつものように突っ込む前に……って、せめて最後まで言わせろ」
「なっ!? あっ、朝霧っ!?」
事態が硬直状態のそのとき、バリケードから大きく横へ、勢いよく駆け出した1人の男
腰に愛刀”六道”をさし、肩かけベルトに数本の手榴弾と背にアサルトライフル、そして首にマントという装備の朝霧裕樹が姿を表した。
「うっ、撃て!!」
敵勢力が、一斉に裕樹をターゲットに定め、銃弾が裕樹に殺到。
裕樹が腰の愛刀2本を抜き、自身の進路を妨げる弾道にある銃弾を打ち払う。
目からの視覚情報、耳からの聴覚情報、そしてこれまでの戦闘経験で培われた、危機管理、察知能力
それらに基づいた最善の解を、裕樹の脳と身体は行動に移行させる。
バキッ!
敵側のバリケードに、裕樹の蹴りがめり込んだ。
電子ツールではない輸送用コンテナの外壁に、裕樹の足跡がくっきりと残るそこを支点に裕樹は飛び上がり、外壁上部に指をかけ身体を持ち上げ、身体をぶんまわしたその勢いで敵陣営に入り込んだ。
「ひっ!」
着地した裕樹の姿に、その場のほぼ全員が怯んだ。
その中で、裕樹と目があった一人……最強に狙いをつけられた事実を、脳が全否定しようとした。
「うっ、うわあああああああっ!!」
しかしその前に裕樹の手にかけられ、悲鳴をあげながら地面に倒れていた。
それに続くように4、5人が地面に倒され、陣営総崩れ状態。
「くらえ!!」
比較的安全な建物側の、2階3階の窓。
対大型召喚獣用RPG、その砲頭が一斉に裕樹に狙いを定め放たれた。
その弾頭に対し、裕樹は肩かけベルトに差していた手榴弾、3個の安全ピンを抜いて上空に放り投げ、首に巻いていたマントを広げガード。
マントは光一謹製の電子ツールで、対衝撃措置が付与されているが対大型電子召喚獣クラスは防げない。
なので、目的地ーー建物の入り口まで手榴弾の爆発で剃らせる、あるいはガードできる範疇で。
裕樹は手榴弾の破裂時には、建物への侵入に成功しそのまま内部へ。
「まったく、おいてけぼりのこっちのみにもなれ」
「ついてけるのか、ダンナ」
「……無理だ」
遅ればせながら、裕樹が崩した陣営目掛け、竜星たちに保安部が突撃。
既に鎮圧は確定した現場だった。
ーーそして、裕樹が突撃した建物内。
まず裕樹を出迎えたのは、弾幕……に対して
「ヘタクソめ」
背のアサルトライフルを構え……
「こうやるんだよ!」
と真っ直ぐ駆け出し、横凪ぎに撃ち出して一掃。
構えたまま駆け出し、サーチアンドデストロイ、ならぬ察知アンド撃破。
そして、人質として職員が集められている一室に到着。
「大丈夫か? 助けに来たぞーーこちら裕樹、人質の救出に成功。これから安全確保優先にはいる」
職員たちは裕樹の声、姿に安堵の声をあげた。
その内の1名
「朝霧先輩」
「裕香が心配してたぜ、ひばり。私事で悪いけど、安心させてやってくれ」
「はい」
支倉ひばり
学園都市で料理、食材の勉強を専攻する、裕香と仲良しな高等部2年生
身長が小さく、最近は裕香に追い付かれぎみなのが、悩みのタネ
「悩んでないし小さくないよ!」
「ひばりで小さくないのって胸くらいじゃ……」
「ゆ・う・き・さん?」
「……ごめんなさい」
そして、裕樹がよく尻にしかれている。
「…………またか」
ここ最近、頻発して起きている銃火器ツールによる、ゲリラ事件
そのツールには、共通点がある。
”Ghoul”
と言うロゴが、決まってかかれていた。
久しぶりに、ひばりんかいてみました。
うまくかけてればいいですが