覇を競いあった者達の研鑽
学園都市最強と言えば、朝霧裕樹
本来は最強の称号は彼一人のものではなく、少し前までは四天王と呼ばれていた。
保安部長官、北郷正輝。
生徒会SP護送警備隊長、鳴神王牙
生徒会SP身辺警護隊長、御影凪
猛者揃いの武闘派学生の中で、割って入る余地すらない最強争いを繰り広げていた。
ーーしかしそれは、人造神の産声と呼ばれる事件までの話。
裕樹が火の人造神を手に入れた事で、3人は最強争いの場からの退場を余儀なくされ、決して意図的な物はなかったにせよ、最強を競うという観点では冷遇される立場に追いやられた
「ふっ、ふっ、ふっ……」
学生行政機関本拠地、生徒会議事堂ビル
通常の学校における生徒会、会長、副会長、書記、会計、執行部という役割を持つ学生の職場であり住居。
そしてその安全を守るSP達もまた……
「ふぅーっ」
鳴神王牙
2m16cmの体躯に、140kgを越えた超重量級と言える巨体
しかし身体は最高スペックと称すに相応しい、筋肉の一言でまさに鎧……否、装甲車。
ベンチプレス200kg超の腕力、この巨体には似合わぬ一流スプリンター級のスピード、そして熱血根性が信条のほぼ底無しのスタミナ。
その彼は、滝のような汗を流しながら、日課のランニング。
「暖まったか?
北郷正輝
192cmの、王牙に劣るが其なりの巨体を持つ男。
彼は拳一撃を鍛えに鍛え、一撃必殺の領域とも言うべき領域に昇華した男。
その拳は、防御を自殺行為に変え、守りに徹すればその攻撃を砕くーー彼の拳は矛であり盾、しかし矛盾なし。
「やるぞ」
「おう!」
正輝か拳を握りしめ、王牙の肉体にめきりと力がこもる。
そして、王牙が駆け出し……
その数分後
「……ここまでだ」
「おう」
2人のぶつかり合いは、肉体と肉体のぶつかり合い。
しかし周囲の目を引き付けてやまない、高度な攻防が繰り広げられていた。
拳の一撃、ラリアットの一振り、その1つ1つが周囲にとって、理想の形であった事も含めて。
「うむっ、流石だ。ワシも膝をつきそうだ」
「膝どころか、一撃でねじ伏せるつもりだったのだぞ」
「互いにまだまだ、か……だがいい感触だ。もう一度返り咲く為にも」
「気持ちも同じだな……もう一度、あの覇を競いあったあの日々を取り戻す」
二人が、どしっと腕を合わせた。
相手がこいつらでなければ、腕が折れるかふっとばされる勢いで
「凪は?」
「いつもの穴蔵だ」
「今日も精神修養……いや対話か?」
「ああっ……火の人造神は朝霧の、そして雷の人造神は大神の手にある。そして、残るは土、風、水」
「その内の土は、凪の手に渡るだろう……だが、我らに神が振り向くことはない」
「……そうだ」
ーー所代わり
「…………」
御影凪
196cmの長身の、誰もが見惚れるだろう絶世の美男子。
他の3人と比べれば、パワーやスピード、フィジカル面では一歩劣るが、彼は真髄は技である。
学園都市に伝わっているあらゆる武術、メジャーからマイナーまでほぼ全てに精通し、その達人以上の技の極みを生田も習得している、人呼んで武の賢者。
ある高名な対魔の家系……その分家筋に生まれた跡取りであり、本家筋以上に当主らしいと評判の男。
蝋燭一本の灯りが灯る無明の空間で、凪は一人座禅を組みただただ精神修養。
彼もまた、裕樹と競い会う日々に返り咲く……それを目刺し、日々修練に励んでいた。