節分パニック
2月3日、節分
イベントは都市を挙げて盛り上げるのが、学園都市の基盤。
なので、屋台通りでも、盛り上がりを見せていた。
節分にちなんだスイーツの販売、BGMなどの学生自治独特の賑わい。
そして、屋台通りの親睦のための恵方巻の材料の搬入。
「今日はいい食材が搬入されたから、腕によりをかけちゃうよ」
本日は非番なので、屋台通りに遊びに来た支倉ひばりをはじめとして、恵方巻製作は賑わっていた。
「…………こわい」
「? アサヒ、どうかした?」
「…………サムライ、ハラキリ……こわい」
「はら? ……って! アサヒ、違う。節分だ、セツブン、セップクじゃない!」
「むしろその勘違いのほうがが怖いよ!」
とある一角で、朝霧兄妹がベクトルの違う賑わいを見せていた。
「アサヒちゃん、どこで切腹なんて」
「……そう言えば、最近よく時代劇の動画見てたような」
「先輩の武器が出るから、興味持つのも当たり前か」
ひばり、みなも、つぐみがその騒ぎを聞いて、恐怖感のこもった苦笑を浮かべた。
龍星は米などの重量のあるものメインに、搬入を手伝っているため、この場にはいない。
「あのねアサヒちゃん、節分って言うのは……」
ちゅーっ
「はっ?」
「にゃっ!?」
「ひぇっ!?」
「えっ!?」
4人どころか、その場ほぼ全員がぎょっと目を見開いた。
「アサヒ、これはせっぷん。一体どこで……?」
ふと、背後に不穏な雰囲気を感じ取られた。
そこにいたのは、裕香の親友の2人と、裕樹のファンと思われる初等部の女の子たち。
裕香が声をかける前に……
「もうっ、いっつもいっつもアサヒちゃんばっかりずるい!!」
「私だって先輩にあんな風に甘えたいのに!!」
「ちょっ、あの……」
「えーい!」
「あっ、ずるい! 私も!!」
……数分後
「あのなアサヒ、節分って言うのは……」
「「「その前に顔洗ってきてください」」」
「一言一句がやたら冷たくない!?」
顔中がキスマーク、一部歯形込みで、唾液やらリップクリームやらでベタベタ。
裕樹がすごすごと顔洗いに行った後……
「…………これが、せつぶん?」
再び、全員の目がぎょっと見開かれた
「お願いアサヒちゃん、先ず説明聞いてね」
「……子供に物を教えることって、ここまで難しいものだった?」
「難しいどころか、怖いの領域れしゅ」
残された面々は、爆弾処理のような心境でアサヒに説明を。
「節分って言うのは、豆まき行事だよ」
「…………ひーてひーて、とんとんとん?」
「うん、それは糸巻き。この豆をまく事が豆まき」
「…………たべもの、そまつ、よくない」
「うん、説明は最後まで聞こうね。確かに良くないし、そう言えるアサヒちゃんはいい子だけど、そういう行事なの。鬼は外、福は内って掛け声でね」
そこでアサヒが首をかしげ、キョロキョロと周囲を見回した。
怖いもの見たさか好奇心か、アサヒがどんな行動を取るのかが気になって、見守ることを選んだ。
「…………おにはどこ?」
とだけいって、近くにあった鍋の蓋をカパッと開けた。
「アサヒちゃん、例え話だよ。ホントに鬼は居ないからね?」
「……まだ可愛い方でよかった」
「ホントれしゅ」
全員がホッとした顔で、少し遅れてほっこりした気分になった。
「えっと、話まとまった?」
そこで裕樹が、ここで調理する恵方巻の材料、魚介類の追加を持ってやってきた。
「一応ですけど。それ、追加ですか?」
「ああっ、酢飯は龍星のダンナをはじめとして、どんどん炊いてるから、さっさと魚さばこう。早く恵方巻食いたいし」
「…………えほう、まき? まめとは、ちがうもの?」
「アサヒちゃん、恵方巻って言うのは恵方、わかりやすく言うと幸せな方向の事で、その方向を向いて食べる巻き寿司の事だよ」
「流石はひばり、食事にまつわる知識はお任せってか?」
「一応、学園都市に入ってくる食材を管理する一員ですから。えっと、確か今年は……」
じーっ
「?」
「…………えほう……ユウ、お兄ちゃんが、いるところ……はやく、恵方巻、たべたい」
「うん、じゃあアサヒちゃん、一緒にお手伝い」
「…………がんばる」
「ある意味、とんでもない時間ではあったけど、こういうのやっぱり嬉しいよ」
「でも、何だか別の意味で疲れました」
「疲労感




