朝霧裕樹の悩み
「……目が金になってるやつってのは、どうしてああも醜く見えるんだろうな」
金城カンパニーとの商談(?)の後。
金(と汚職の証拠)で情報を手にいれた裕樹は、早速行動を起こす事にした。
行動規準は常に独断専行ーー報告・連絡・相談、ホウ・レン・ソウが完全にそっちのけなのは、裕樹自身も悪癖だと自覚はあったが、今さら矯正できる物ではない。
そもそも裕樹自身が、誰かと肩を並べたり背中を預けたりなどの経験があまりなく、あったとしても完全に裕樹だよりな場面の方が圧倒的に多い。
あったとしても、同じレベルーー御影凪や北郷正輝といった面々だけ
「……だから、組織の一員としては、下の下中の下の下、なんだけどね」
うーむ、と裕樹は唸る。
生徒総会と、陽炎財閥といった裕樹のお得意様は、それなりに理解はしてくれるが、組織として示しがつかない行動ナンバーワンなのも確か。
元々、結果だけを見る大人に嫌悪していたが、結局は我ながら、結局はそういう恩恵に預かっている。
「……我ながら、何てバカな矛盾」
といいつつも、やはり最速で最善
そう考えれば、単独行動がやはり一番最善の型……だから、今さら変えることも難しい
「ーーせめて龍星のダンナに、背中を預けられるなにかこう……まあ多少なら厳しくしても、くたばる位ですむか」
榊龍星は言いました。
朝霧裕樹の厳しさ、それは殺意なき残虐性であると。
朝霧裕樹にとっての適度な運動は、大抵の人間にとっては地獄に値する(自覚あり)。
「ま、帰ってから考えるか……さて」
目的地にたどり着くと、周囲がぎょっと目を見開く。
そもそも悪評が先立つ金城カンパニーと、金での繋がりがある時点で、マトモではないことは明白。
裕樹の姿を見つけた面々の反応は、至極まともだった。
「勘違いするなよ、アポはないが商談に来たんだ。責任者どこ?」
……閑話休題
「それで、ご用件は?」
「これーーまさか、知らないなんて言わないよな?」
「! どっ、どこでこれを!?」
「勘違いすんな、別に出所なんて問わない。金はこの通りある、俺に売ってくれ」
「……すんません、もう手元にはないんです。実はその、ある人からの預かりものでして」
「そのある人ってのは?」
「いえ……実のところ、預かり賃貰って預かってただけで、身元も名前も全く知りません」
どうやら、嘘は言ってないらしい。
そう判断した裕樹は、残念と言う表情でその場を後に。
「ただ……」
「ん?」
「そいつ、どうも水鏡の関係者じゃないかって……」
「なんだと?」
穏やかじゃない台詞に、裕樹もさすがに驚きを隠せなかった。
「たまたまなんすけど、そいつが水鏡の施設でお偉いさんと思わしき人と、何か話してるのを見かけまして」
「……ふーん。その施設ってどこ?」
「え? あの、水鏡の施設ですよ?」
「一応だよ、一応……ほら、情報料」
「へっ、へへへっ、毎度」




