ハロウィンパニック!
「じゃーん♪」
「…………にゃあっ」
小さな魔女の衣装を着て、三角帽子に星を象ったステッキを手にする裕香
黒猫の仮装、猫耳カチューシャに猫の手手袋、頬に3本線を描いたアサヒ。
「おーっ、似合うじゃん」
「ああっ、ハロウィンらしいな」
「うんうん、可愛いよ二人とも」
「写真とりましゅよ」
裕樹、龍星、つぐみ、みなもはそれぞれ誉め言葉を並べて、写真とったり動画をとったりのお楽しみタイム。
アサヒも少々恥ずかしそうに、裕香の後ろに隠れつつも雰囲気を楽しんでいる。
「…………?」
「ん? どうしたの、アサヒちゃん」
「…………きがえ、ないの?」
「? えっと、どこか服、汚れてる?」
「…………(ふるふる)……いしょう」
アサヒがつぐみに問いかけたことに、ほぼ全員が首をかしげた。
ふと裕香は、もしかして……と、あることに思い至った。
「あのねアサヒちゃん、まさかとは思うけど、つぐみ姉ちゃんは初等部生じゃないよ」
「…………? 違うの?」
「うん、みなも姉ちゃんと同じ年だよ。何歳位って思ってたの?」
「…………ゆー、おねえちゃんより、小さい?」
「…………」
「オーイ2人ともそこまで、つぐみが”ちっちゃくないよ”って怒れない程凹んでんぞ」
余談だが、裕香とつぐみの身長はほぼ同じくらい。
なのだが、成長期真っ只中の裕香の方が、最近は身長が勝ち始めていた。
「…………ごめん、なさい」
「ううん、悪気はないのわかるから、怒ってないよ」
「でもアサヒちゃん、つぐみ姉ちゃんはおっぱ……」
「裕香ちゃん、女の子がそんなこと言っちゃダメ!」
「…………大人……ぽよんぽよん」
「アサヒちゃんも、そう言うことで大人なんて認識しちゃダメ!」
「ーー腹減ったな」
「何気にすごいよ、お前のそういう図太いところ」
ーー閑話休題
「なんかよくわからんが、妹達が手間かけちまって悪かったな」
「いえ、わかってもらっても困るのやら迷惑なのやらだから、構いませんけど」
「それ結局嫌な意味なのかわらんだろ」
恥ずかしそうに胸元を隠してるつぐみと、疲労感を隠しきれないみなも。
「…………ハロウィンって、なにするの?」
「ああっ、簡単に言うと……ここだと屋台通りのお店をめぐって、トリックオアトリートって言えばお菓子をもらえる、って言えばいいかな?」
「ちなみに、お菓子くれなきゃイタズラしちゃうぞ~って意味ね」
「…………ふーん」
そう言ったアサヒは、裕樹の足に抱きついた。
「ん?」
「…………いたずら」
「? ……したいのか?」
「…………うん」
普段自己主張をしないアサヒが、一体鈍なイタズラを?
と、全員が関心を向けた。
「まあ、お菓子かイタズラか、なんて考えたことなかったな」
「ちょっと、見てみたいかも」
「…………しゃがんで」
「こう?」
そう言われて、裕樹はしゃがみ、アサヒが抱きついた。
そして……
「ぷっ、くっ、あはは」
「…………こちょこちょ」
「あははっ、たっ。確かにいたずら……はははっ」
「…………こちょこちょ」
しばらく、笑い声が屋台通りに響き渡った。
「ぷっ、あーっ……笑った笑った」
「…………ごめん、なさい」
「いや、イタズラだからいいよ。それより、はいお菓子」
「…………? いたずら、したから、ダメ」
「今回は特別。ただ、誰にでもやっちゃダメだぞ」
「…………やらない」
その場がすこしほっこりとした。
……そこに
「あれ、みっちゃんになっちゃん、それに……何この長蛇の列?」
「朝霧先輩にイタズラしていいって聞いて」
「今アサヒちゃんがイタズラしてたから、てっきり……どうせだから、抱きついてチューって」
「なんか変な話が広がってる!? しかもサラリとイタズラで済まない台詞言わないで!」
初等部女子の一団が、一列にならんで順番待ち。
どんなイタズラをしようかと、不穏な会話がちらほらと聞こえてくる。
「……流石にこの人数のイタズラは勘弁してね。結構いいお菓子用意してるから」
「あーんってしてください!」
「だからー!」
「…………あーんっ」
「……アサヒちゃん、今はダメ。話がややこしくなっちゃうから」
アサヒの期待に満ち溢れた瞳に、少々心を痛ませる裕香だったが……
下手に流されれば、人数が人数だけに大事は避けられないので、裕香は心を鬼にした。
「すっかり蚊帳の外だね。なんだかブーイングすごい」
「……子供って無邪気な分、時として怖いこと言い出しましゅね」
「…………ブーブー……ブタさん?」
「うん、アサヒちゃんは、平和だね……あっ、アサヒちゃん、お菓子食べる?」
「ココアもつくってあげるね」
その後、アサヒの天然爆撃が投下されたり、大騒ぎが起こったりで屋台通りは大にぎわい。
と言っても、怪我人などが出るような大騒ぎではない為、平和な大騒ぎな部類であります。
「もうっ……すっごい疲れた」
「お疲れさん。帰ったら……」
「……ダッコして、お菓子あーんってしてほしい」
「……ん、わかった」




