朝霧兄妹のピクニック
暦の上では秋となる時期の、ある一日。
「ロールパンに切れ込みいれて、バター塗ってからレタスにハムとチーズ挟んでマヨネーズ。はい、即席ハムサンド」
「じゃあ私は、刻んだキャベツにソーセージ挟んで、ケチャップかけたら即席ホットドッグの出来上がり」
「…………わんわん?」
「アサヒちゃん、そのドッグじゃない」
場所は学園都市の憩いの場所、自然公園
所々でスケッチだったり、バドミントンなどに興じていたりと、それぞれ楽しむ姿が見られる場所
そこで朝霧兄妹は、アサヒの情操教育を兼ねたピクニック。
レジャーシートの上で、裕樹と裕香がロールパンと幾つかの具材を使って、お手製サンドでランチタイム。
「…………おいしい、たのしい」
「うん、ありがと。ねえ、アサヒちゃんも作ってみる?」
「…………うん……お兄ちゃん、お姉ちゃんに……食べて、ほしい」
裕樹が引き取った頃に比べれば、アサヒはよく笑うようになった。
最近は裕香とも問題なく接することが出来るし、裕香に甘える姿を見せるようにも。
「あっ、マヨネーズかけすぎ」
「…………むずか、しい」
最近は裕樹も仕事の依頼が減っていて、こう言う時間を増やすようにしている。
裕樹は高給取りな上に、兄妹揃って贅沢は程ほどにな生活レベルのため、困窮とは無縁
なので、ゆったりとした時間を、特になんの気兼ねなく過ごせる。
「…………できた」
出てきたのは、不格好ではあるがキャベツとレタス、トマトにハム、チーズを挟んだサンドイッチ。
初めて作ったことがよくわかる、野菜はぐちゃぐちゃでパンもぼろぼろな、持つのが難しそうなサンドの出来上がり。
「…………じょうずに、できなかった」
「初めてなんだから仕方ないよ。それに俺は、一生懸命作ってくれたのが嬉しいな」
「そうそう、私も始めて作ったときは、そんなだったんだから」
「…………」
アサヒが嬉しそうに笑みを浮かべ、顔をそらした。
そんなアサヒをみて、兄妹もつられて笑みを浮かべる。
「……あいつらとやりあってる時とは違う、達成感ってやつかな」
「それ、お兄ちゃんって言うよりお父さんって意見じゃない?」
「言われてみればそうだな」
ヴィーッ! ヴィーッ!
「はい、朝霧です」
『朝霧か? 仕事の依頼だ、内容は……』
「本日は休養中につき、内容が緊急でない物はまた後日でお願いします」
『は? テメ雇われ物の分際でなにほざいてくれちゃって……』
「よし、その喧嘩買った」
『え? ちょっ、ちょっと待って!』
プツッ!
「……気分削がれた」
「何今の?」
「いたずら電話」
ふーんっと裕香が言うと、裕樹はさっさと先程の電話を頭から消した。
休養中の妹達との時間は、無駄なことに使いたくない為
「…………ふぁあっ」
「ん? おねむかアサヒ?」
「…………うん」
と言って、隣に座ってる裕香に寄りかかり、寝息をたて始めた。
「やっと私も、お姉ちゃんらしくなれたかな」
「うんうん、良いことだ」
そんなほのぼのな時間が過ぎていく一方……すでに忘れられてる事をしらないまま、戦々恐々な時間が流れている場所があることは割愛。




