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月の宝石

作者: 松岸煉歌

レイシーはある日、王女様に呼ばれてお城に行きました。

「ねえレイシー、この国で一番綺麗な宝石は『サンリットジェム』でしょう。この世界のどこかに、『サンリットジェム』と同じくらい綺麗な『ムーンリットジェム』っていうのがあるらしいのよ。どうしても欲しいの。ねっ、お願い。どうしても」

そんなものは初めて聞きました。本でいっしょうけんめい調べると、それは月にあることが分かりました。

レイシーはお城で一番速い馬を借りて、はるばる月までやって来ました。

月ではウサギたちが熱心にお餅をついていました。ウサギにレイシーは尋ねます。

「すみません、ぼくは訳あって『ムーンリットジェム』を探しているのですが、どこにあるかご存知の方はいらっしゃいますか」

「この辺にはエメラルドやダイヤモンドならあるけど、『ムーンリットジェム』はないよ」

するとみんなに餅つきを教えていた黒ウサギが言いました。

「宮殿の女王様なら持っていると思うよ。あのお山のてっぺんにあるのがその宮殿さ」

レイシーはお礼を言ってすぐに馬を走らせました。

野原を走って丘を越えて、馬が疲れてきたころようやく宮殿にたどり着きました。立派な宮殿です。柱は真っ白な大理石でできていて、絨毯は星空のようにきらめいています。

玉座の前に通されたレイシーはうやうやしくお辞儀をしました。

「女王様、ご機嫌うるわしゅうございます。この度、我が国の王女が『ムーンリットジェム』をどうしても欲しいと申しているのですが、ほんの少しでも分けていただけないでしょうか」

女王様はうなずき言いました。

「よく来た、異国の者よ。そんなに欲しいならくれてやろう。その代わり、私の頼みを聞いてくれないか」

「なんでございましょう」

「私をお前の国へ連れて行っておくれ。もう月には飽きた。退屈でかなわぬ」

「しかし国の方々がお困りになるのでは?」

女王様は笑って扇をひらひらさせました。

「良い良い、少しくらい。どうしても行きたいのじゃ」

お供のウサギたちはため息をつきました。こうなると女王様は何を言っても聞きません。レイシーは女王様を馬に乗せ、一緒に王女様の待つお城へ向かいました。

レイシーが帰ってくるのを今か今かと待っていた王女様。『ムーンリットジェム』を見て大喜びです。女王様まで一緒に来たのには驚きましたが、丁寧にもてなしました。王女様と女王様はすっかり仲良くなりました。女王様は

「月に帰るのはもう少し先にする」

と言い始め、お城の召使いたちは困ってしまいました。

三日後、ウサギの兵隊がお城を訪れました。女王様を迎えに来たのです。ウサギたちに叱られた女王様は諦めて帰る支度を始めました。それを見た王女様はウサギの兵隊に

「帰るのは明日の朝まで待って」

と頼みました。そしてレイシーに何か耳打ちしました。

翌朝、女王様たちは別れの挨拶をしに王女様の部屋にやって来ました。王女様はレイシーに言いました。

「レイシー、頼んでいたあれを持ってきて」

「はーい」

レイシーは二つの箱を持って来ました。王女様はそれらを受け取るとそのうちの一つを女王様に渡しました。

「これはね、この国で一番綺麗な『サンリットジェム』で作ったネックレスなの。もう一つは私ので、貴女が持ってきてくれた『ムーンリットジェム』で作られているの。月へ帰ってもこれを見て私を思い出してね」

レイシーは

「そのネックレスは王女様とお揃いなんですよ」

と付け足しました。

「そうなのか!誰かとお揃いの物は初めてじゃ、なんと嬉しいことか」

女王様はさっそくネックレスを着け、ほくほくしながら帰っていきました。

それ以来、時々女王様は遊びに来るようになりました。王女様も月に遊びに行くようになりました。国の民の行き来も盛んになり、その国と月はいつまでも仲良く交流しましたとさ。

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