7 星になれたら #2
前回の続きです。
セイカちゃんがどういう感じで絡んでくるか楽しみにして頂ければ幸いです。
7-2 エソラごと
二月に入った。冬らしく寒い気候。吐く息も白くなるくらいだ。
バイト先で働いてるといつも通りセイカちゃんがいる。
僕はゴミ出しをしてる最中。
「あれ? もしかして、佐藤さん?!」
ふと聞き覚えのある声、もしかして……と振り替えると
「早川さん!! えっ、なんでこんなところにいるの? 」
「塾帰りなんですよ。そういえば、ここがバイト先でしたね 」
「はい!」
あぁ~、今日も綺麗だ。そして……かつ格好いい! 今日は、なんとパンツルックだ。
カーキーのミリタリーコート。紺色のニットに、白のシャツをレイヤードしてベージュのパンツ。黒のレザーのビットローファー。そして、特徴的なベリーショートだけどふわってしてる髪。
あぁ、いつも見てるが町で見ると都会の女性って感じがする。そして、そこら辺の男よりイケメン!
僕はこんな所で会った幸運に、心の中で『イェェェェス!!』と叫んでいる。
でも、いざ彼女を前に急に話すとなると何を話せばいいかわからない……人は緊張を前にすると、知能が落ちるのだ。
だが、そんなことも関係なく僕の最近の日常は訪れる。
「ネズミ!!」
早川さんも例のごとく同じ反応。彼女は一瞬、僕の方に近づき、僕の肩に軽く触れた。こんな一瞬だけど僕の心臓はハイビートを刻む。
ありがとう、セイカちゃん! 僕はこの肩を洗わないよ! たぶんな……
まぁ、そんな事より……驚いた早川さんを落ち着かせないと……
でも全部を説明すると早川さんの大切な時間をくだらない事に使わせてしまうのは申し訳ない……
とりあえず、要点だけでも……
「あっ、違うんです! 色々あって僕のあだ名がネズミなんです。」
「佐藤さん、ネズミって言われてるんですか?!」
「まぁ……はい、お恥ずかしながら…………」
と僕が恥ずかしそうに話すと、彼女は鼻息を漏らし微笑む。
「でも、でも私。ネズミは、よく見ると可愛いと思いますよ。キャラクター展開とかも多いですし。佐藤さんの笑顔が可愛いからそう言われるんですね 」
などと気をつかわせてしまった……
それより、彼女の怖がる顔と笑顔がすごく可愛いかった……心のフォルダに永久保存保存。
そんな事を知らず、セイカちゃんはいつも通り近づいてきたが早川さんを見ると固まった。
僕が呼び掛けるとセイカちゃんは少しボーッとしてから僕の後ろに隠れた。
あれ、初対面の人だからか……か?
でも、小野寺さんの時とは違う。
早川さんは目の前の少女が気になり、声を掛けた。
「君、セイカちゃんって言うんだ?」
聞かれたセイカちゃんは小さな声で答える。
「はい、そうです 」
「そうか~、よくご挨拶できたね。えらいね!」
早川さんは近づき同じ目線に合わせてから彼女の頭撫でた。
セイカちゃんは顔を赤らめ下を向く。その表情はニヤニヤを必死に我慢しようとしている。
まさか……ここにきて、早川さんの能力発動!!
流石、早川さん。こんな短時間で女の子を惚れさせた! ホント恐ろしい子。早川三咲。
でも……セイカちゃん、気づいて! 早川さんは可憐で美しい聡明な女の子なんだけど!!
そのあと、セイカちゃんは早川さんに見せたいものがあるといい、店奥の席にある自分のリュックから例のキーホルダーを取ってくるっといい走っていった。
「ごめんね、常連さんのお子さんで」
「いや、大丈夫ですよ。私子供は苦手ではないので。でもあの子って……たしか近くの総合病院にいってますよね。」
「そうそう、お母さんの妊娠の件とかで通院してて」
「あぁ、やっぱり……実はウチの母が看護師でその病院にいってるんです。忙しい時に荷物とか届けるんですけど……でも、たしか……あの子…………」
っとちょうど、早川さんが何かを言いかけた時だった。
たまたま、僕が早川さんの『あの子……』の発言でセイカちゃんの方を見た。するとセイカちゃんは、なぜか何かに褄付いたのか急に状態を崩し、宙に浮いた。
こういう時って、ホントにスローモーションに見えるんだな。
とっさに僕は浮いてるセイカちゃんの下に滑り込むしかないと、本能で判断し、そして……
ズァズァズァズァズァズァザザザァァァ!!
なんとか、僕はクッションになった。
身体が痛い……重い……刷れた面が熱い…………
眼鏡! 眼鏡眼鏡……あぁ、無事だ……と眼鏡を見つけ安堵したつかの間。
「佐藤さん!」って声に気付き、早川さんが急いで近寄ってくる足音が聞こえる。
あっ、セイカちゃん!と思い、僕は早川さんに手伝ってもらいセイカちゃんを起き上がらせて椅子に座らせてあげた。
店内から数少ない他のスタッフと常連さんがその一部始終見てたようで心配でかけよってくれた。
セイカちゃんは何が起こったかわからない様子で少し朦朧としている。
僕が屈んで「大丈夫っ?」っと言ったら、漸く整理がついたようだ。
急に涙目になり、みるみる顔を歪ませながら泣き声で僕の頭を何度も叩いた。
「うるさい! 変態! 調子にのるな! うるさい! うるさい! 黙れ変態!…………ネズミのくせに!!」
おぉ、ジーザス……
その後も何度も叩かれた。ただ、その叩かれてる僕の頭からは痛みを感じなかった……
そのあと、少し心配になってた周りの人たちに、早川さんがちゃんと説明してくれた。
「まぁ、佐藤くんがそんな少女に手を出すような事はしないか。」
「あの兄ちゃん真面目で笑顔がいいし、まっ、無いか……」
「チキンぽいし、そんな度胸ないだろ 」
「なんか、オタクッぽいけど、大丈夫だろ 」
等々……ある程度信頼を得てるから大事にはならなかったとは思う。あれ? おいおい、待て待て……途中、馬鹿にされたような事を言われ気が……そして、偏見は良くない! まぁ、信頼されてると、そう信じたい……というか、一歩間違えると犯罪者扱いだったかもな……世間こわい……
早川さんにはここまで付き合って貰ったが、これ以上引っ張ると申し訳ないと思い、先に帰ってもらった。
その後、セイカちゃんのお母さんが来て報告するかどうか悩んだが一応報告する事にした。
セイカちゃんのお母さんは驚いた様子だったが直ぐ様
「すいません、うちの子がまたご迷惑をお掛けしてしまって……」
「いえ、セイカちゃんに怪我がなくてよかったです」
「えっと、よければ、今、手持ちが少ないですが……」
彼女は鞄の中の財布に手をやろうした。
「えっ、いえ、これも仕事です。それに、仕事の傷は僕にとって勲章みたいなものです。これで、水もしたたるじゃないですが『傷も似合ういい男』って感じでね! いい感じでしょ!」
そう言うと、彼女はさっきまでの真剣な顔から、小さく吹き出し笑ってくれた。
「ふっ、佐藤さんっていい人なんですね。それに面白い人です 」
僕はその笑顔に安心して、話題を変えた。
「そういえば、お腹の赤ちゃんは……?」
「ホント、今にもって感じなんですが……まぁ、すぐだと思います 」
「へぇ~、楽しみにしてますね。元気なセイカちゃんの妹さんを生んでください 」
「えぇ、ありがとうございます 」
そうこう話してたら、今日一番に手を焼かせたセイカちゃんが反省しているみたく、大人しくなっている……
「……ネズミ!」
「あっこら、セイカ! また……助けてもらったのにそんな言い方しちゃダメでしょ」
「あっ、いえ、良いんです。で、どうしたのセイカちゃん?」
彼女は流石に迷惑をかけたと思ったのか、しおらしく、
「いつもの……あれ……貰ってない……」
と言われ……思い出し、いつものアレを急いで取り入った。そしていつもの如く渡し、彼女はさっそく開ける。
ビリビリビリビリ。
彼女はキーホルダーを取り出し、まじまじとみた瞬間。
「やったーーー!!!」
「全部を揃ったのかい?」
「うん! これでね、願いがかなう!」
僕も嬉しくなって、ついつい小さい拍手をしてしまった。
そして、ふと……セイカちゃんの誕生日がもう少しである事を思い出す。
ついつい、その小さな少女を喜ばしたいと思い、ほぼノープランだが……あるプランが一瞬で決まった。
できるかわからないけど、やってみよう!
僕は背筋を伸ばし、右手を前にやり、足をクロスさせ頭を下げた。
「おめでとうございます。セイカ様。あなたは7つの星を集めたので、あなたが思う願いとは……少し違いますが魔女の名により、その特典としてパーティーにご招待いたします。」
「えっ、」
セイカちゃんとお母さんは急だったのですごく驚いた。 若干お母さんの方は顔をひきつり引いていた。
「えっ、いいの?」
セイカちゃんは目を爛々と輝かせながら此方をみた。
お母さんは、さっきのひきつった顔から申し訳なさそうに、
「えっ、これ以上ご迷惑をおかけする訳には……」
「あっ、いえ、大丈夫ですよ 」
と僕は頭を搔きながら照れ臭く答えて言葉を続けた。
「まぁ、そんな凄い事はできないですが……あぁ、でも、もちろん赤ちゃんが無事生まれて、逆にご迷惑でなければですが……」
お母さんは悩みながら、セイカちゃんの顔を見る。
「ママ! 私、魔女のパーティーに出たい!」
お母さんは納得したように笑顔を見せて息を漏らし……
「ありがとうございます。お願いいたします!」
と軽く頭を下げ快諾してくれた。
「で、あの……日にちはいつですか……?」
「よろしければ、2月21日。此方に入らしてください!」
僕はそのあと、セイカちゃんの方を見てしゃがんでゆっくりと伝えた。
「あと一つ、君に『宿題』を出すね…………」
その後、伝える事を伝えた後、セイカちゃん達が帰る時。
セイカちゃんが近寄ってきた。
「ねぇ、ネズミ……」
彼女はすごく照れ臭そうな顔をしながら近づき
「ありがとう 」
と小さく言った。
「どういたしまして 」
「あと、もう一つお願いがあるの?」
「うん? 何?」
「ネズミの持っている時計を少しの間、貸して欲しいの……ダメ?」
僕は少し考えたが……ここまできたらお人好しを貫こう!
「うん、いいよ。でも、失くさないでね。僕にとっても大切なものだし、ちゃんと返してね」
そう伝えて、自分のバックから腕時計を取り出しセイカちゃんの小さな掌の上に乗せる。
「うん、わかった!」
彼女は笑顔でしっかりと答えた。普段から僕にたいしても、こうしてくれれば可愛い子だと思うんだけど。
そして、僕は奔走する。その日が来るまでに。
誕生日近日まで、セイカちゃんたちは来なかった。
きっと赤ちゃんが生まれてくるので店に来る余裕がないのだろう。
そして、誕生日4日前、準備はある程度進んだ。
バイトをしてるとセイカちゃんたちが来て、無事に妹が生まれた事を報告してくれた。名前はまだ決まってないらしい。セイカちゃんもお母さんもとても嬉しそうだった。
丁度、小野寺さんも居合わせてセイカちゃんのお母さんと話をしている。セイカちゃんは『ネズミ』とは言うものの、前みたいな意地悪は言わなくなった。
そして、楽しそうに話してる姿が僕にもうれしい。彼女は学校でキーホルダーの事を自慢したり、もう少しで秘密のパーティーが開かれる事、授業の題材で絵は何を書くかを話したりしてくれてる。
よし、あともう少し。がんばって、用意をしなきゃ!
二月の中でも少しづつ少しづつ変わっていく。日がほんの少しずつ長くなってるような……
そして、少し春を乗せてるような風が吹く。
そういえば、セイカちゃんがキーホルダー7つ集めるって流れなんですが
子供って、遊ぶとき勝手にルールを決め勝手に遊んでるイメージだったのでそのイメージで描かせて頂きました!
あと、#3で終わらせれるかと思ったのですが書いていたら長くなってたぶん#4で終わるかとは思います。
今回も読んで頂きました誠にありがとうございます!