4 黄昏の智者
今回は小野寺さん、視点で話が展開します。
私的にはお茶目でキュートな方だが大人としての振る舞いは忘れないようにしてる人だと思います。
あと、初めて店の名前が発覚します。
今回も中々長くなってしまったので休まれながらゆっくり読んでた頂ければ幸いです。
ではお願いいたしますm(._.)m
私の名は『魔女……』 正確には 呼び名で通称。本名は小野寺千里香。
私があの少年と出会ったのは……あの秋の日の黄昏。ここ、古着屋「ニュートレジャーアイランド」だった。
グーテン・アーベント!!
っと挨拶をしたら、大概のお客さんは引くだろう。
そして、そこから関わろうとすると、来店してたお客さんは大概逃げるように帰ってしまう。流石の私でも、そこまではしない。なので、最初は無難に普通に接客をする。
ただ……相手が求める事には答えてあげたい……私はそう思う。
で、今日は週の中日。そして世間一般でいう給料日前。店内には閑古鳥が鳴いている。
カッコウ、カッコウ……シーン…………
まさか、この時間からお客さんがいないなんて。私は呆れて、レジ台に肘をついて顎を乗せた。
いつも居てくれる従業員の、鈴木くんと田中くんはある程度の雑務を終わらし、用事があると言って帰ってしまった。
おいおい……私が一応店長代理で、今日は暇だろってわかってるからって……それはないだろう! 私!! か弱い女性なんですけど!!!
まぁ、現に暇だから別にいいけど……
私は納得と不服を抱え、鼻を鳴らす。
そういえば、あの少年はどうしてるだろう……元気でやってるのだろうか……一回しか会ってないが私にはわかる、良い子だと言うこと。
まぁ、あれから2ヶ月ちょっと経った。
来ないと言うことはきっと元気でやってるし、私の助けは必要無いのだろう……ただ、少しでもファッションに興味を持ってくれてたら嬉しい……それにしても、いい尻だったなぁ……
彼の上に向いたヒップラインを思い出すように、右上を顔をあげる。
それにしても……うん、暇だ! お客さん来ないし……やることないし、店の奥で歌を唄ってもバレはしないだろう。もしお客さんが来店したらチャイムは鳴るし!
私はレジから出て、弾む足取りで店の奥のインポートブランドコーナーに行く。
私はこういう暇でテンションが上がらない時には、アレを歌う。
私は大きく息を吸ってから……
「どっき……♪……♪」
そう、昔の名作。幼児向けアニメの主題歌だ。いや、幼児向けと言っても心に訴えかけるものがある。内容は小学生魔女見習いが人々を幸せにしていく作品。
最近、そのアニメの映画の作品をテレビでやっていたのでついつい口ずさんでしまう。
そして、歌は続く。
ラスサビに入り、テンションがあがって踊りながら歌う。
「……♪~♪♪~無休♪!」
歌い上げた……! フルで……! キモチがいい!!
「あの……小野寺さん……?」
急に呼び掛けられた事にビクッとし、声がする方に目をやった。
若い男の子が驚いた顔で、こちらを見ている。
ダークグレーのニットのタートルネック、黒のスキニーパンツ。学校の制服と思われる、ブレザー。
その男の子は小さく丸く開けた口から、横に細め嬉しそうに微笑む。
大の大人が歌っている姿が滑稽だと思われたに違いない。流石の私も顔が赤くなった。
恥ずかしい…… だが、折角お客さんが来店してくれたの
で私は小さな勇気を振り絞り顔をあげる。声をかけてくれた男の子をよく見ると……
あれっ、あの時の少年だ。
私はまたそこで、嬉しさと恥ずかしさに挟まれた高いテンションになった。
「しょっ、少年! 来てくれたんだね! 久々じゃないか! 少し雰囲気が変わっていたから、わからなかったよ。えっ、それよりどうやって入ったの? センサーが……」
私の早口で彼を圧倒した後に、自分で言った言葉で自己解決をする。そう、今は某少年探偵くらいの閃きが頭に過った。
きゅぴん!
「まさか! 君は……アサシン……」
「いえ、違います。僕、たまに店のセンサーに反応しない人みたいで……」
彼は丁寧な突っ込みを入れる。
「いや、そんな事より、すいません、全然顔を出さず……」
「いいよ! いいよ! 気にしないで! まぁ、あれから2ヶ月は経ったが元気そうじゃないか!」
「はい! あっ、あとさっきの曲、ちょっとサビの部分間違ってましたよ 」
「君、見習い魔女世代ではないだろ! どちらかと言うと清純剛力娘s世代だろ 」
「いや、この前テレビで映画版やっていたので、気になって調べたんですよ。映画面白かったし。OPは名曲だと思いましたし……というか、千里香さんも世代ではないのでは……もしかして、アラサー……? いや、過ぎて……」
「私は再放送世代だよ!」
全力で30代前後ではない事を訂正をした。久々に……それも一回しか会ってないのに、ついつい彼とは馴染みやすさを感じた。
そして、この少年……守備範囲広いな……と感心ししてしまう。
「あっ、そうだ! どうだね、あれから?」
「そうなんですよ、あれから色々あったんですよ!」
「ほう、言えることなら聞こうじゃないか 」
私は一番重要なあの話題触れるかとどうか悩む。彼にとってはセンシティブな問題だからだ。顎に右手を添え、左手は右側に添える。まさしく考えるポーズ。
でも、いいだろう! 関わった私には、聞く権利がある!
「前言ってた女の子とは、どうなったのかい?」
「はい、実は……」
「うんうん」
「えっと……」
少年は何て言えばいいか……みたいな顔をし、右手で頬を触る。そして、思い切ったように口を開いた。
「実は……彼女とは…………らっ、LINEを交換しました!」
「おぉ! おめでとう!!!」
「えっ!」
「えっ!」
お互いの反応に食い違いを感じ、お互い一緒に首を傾げる。
「いっ、いや……てっきりそれ以上の関係を期待されてたんじゃないかと思って……」
彼は手を前にし、モジモジしている。私はそんな彼の緊張を解くべくし……
「あぁ、もちろん、付き合ったり、抱き合ったり、チューしたり、ベロチューしたり、それ以上の関係になってたりしたら良いとは思ってたが……」
と悠々自適に私が語っていると、冷たい視線を感じた……
少年はどん引きして、此方を見ている。
あわや……と思ったので、切り替えるように咳払いをした。
「……だが、少年。君は今の選択肢が良いと、納得してるんだろ 」
「はい。彼女の事をちゃんと知って、逆に僕の事を知って貰う事が良いと思いました 」
「うんうん、それで良いと思うよ!」
「それで彼女の好きなゲームを教えて貰い、そこからゲームを買ったりしていたら、お小遣いがヤバくなっちゃって……」
彼は恥ずかしそうに顔を赤くしながら苦笑いをする。だが、それはきっと季節外れの春が彼に訪れたのだろう。
「それで1ヶ月ちょっと前から、バイトを始めました 」
「おお、ちなみに何のバイトだい?」
「駅近くのチェーンの喫茶店です 」
「はじめてのバイト、それに接客業はなかなか大変だろ~」
「はい、失敗したり、わからない事もありますが……」
少年は先程と違い、満面の笑みで
「楽しいです!」
と言い、その華やいだ表情で私も嬉しくなった。
「私はコーヒーも好きだし。今度、私も行きたいからドコか教えて!」
「えっ、恥ずかしいから嫌です!」
「ガーン……少年、それは無いよぉぉ。お姉さん悲しいよ。ショボボボボーン 」
彼は私のテンションの下がり様に、申し訳なさそうに思ったのか、口をモゴモゴしながらも言葉を紡いだ。
「まぁ、もう少し僕が仕事に慣れたら……いいですよ。来てください……それで最近はだいたい、そんなカンジですね 」
「そうかい、そうかい。なら良かった!」
そうこう楽しく話す中、私は別に先程から目に入る彼の上下のコーデが気になり、聞いてみる事にした。
「話は変わるが、その服は自分で選んで買ったのかい?」
「はい! そうなんです! あぁ! そういえば、この古着屋、ニュートレジャーアイランドってチェーン店だったんですね。二駅先のニュートレジャーアイランドで買ったんですよ 」
「あぁ、あそこの店舗かい。あそこはウチの店舗より広いから、見応えあっただろ 」
「はい、広くて興奮しました。服見るのに1時間以上かかりましたよ~ 」
「で、その2アイテムをチョイスしたんだね。シンプルでカッコいいと思うよ 」
「そうなんですよ。 ニットは無印で柔らかく肌触りがいいんですよね。温かいし。下のスキニーはユニクロで伸びるし履きやすいし。トータルでスッキリしたイメージですけど、紺のブレザーと合わせると良い感じなんですよね。まぁ、ブレザーは学校の制服ですけど 」
少年は満足げに、ニットの裾やスキニーの太もも辺りを伸ばしたりする。そして、腕を左右に軽く揺らしながら自身の後ろを見たり、そのコーデをはしゃぎながら私に説明をしてくれた。
私は……そんな少年の成長が嬉しくもあり、愛しさと切なさと心強さ……あっいや、愛しさと心強さは余計か!
まぁ、切なさ! 切なさを感じた。
もう……私は必要ないね……ファッションを普及する私の任務は遂行されたんだ。彼には今後、色んな店で服飾を見て欲しい。
私は意を決するため、息を漏らしてから大きく息を吸って
「さぁ、少年!」
と張りがある声で言うと、少年は驚いた様子でこちらを見る。
「もう……君の心は決まってるようだね。さぁ、胸を張ってお行きなさい! 君は君のお洒落道を目指して!」
「千里香さん……」
少年は切なそうな目で私を見て、息混じりの小声で言う。
その顔にはきっと哀愁が漂っているに違いないっと私は思った。
そして……
「いや、何処にも行かないですよ 」
と疑問符を並べたような顔をから冷静に答える。
「えっ、一人で服を選んでコーディネイトまで考えられる様になったじゃないか!」
「いや、他の店舗に行って、見て思った事があるんです 」
彼は両手を握り小さな子供ぽく、軽く上から下に腕をおろした。彼の仕草に可愛らしさを感じてから、その問を不思議に思い私は質問をする。
「えぇっと、なんだい? 」
「例えば、黒のスーツコーナーがあるじゃないですか 」
「うん 」
「そのコーナーをよく見てると、ちょくちょく黒じゃなく、黒に近いダークネイビーが混ざってて、たまたまかな……と思って表記を見るとブラックって載ってるんですよ 」
「あぁ、いわばミッドナイトネイビーだね。確かに黒と見分けるのは難しい部類ではあるよ。光の当たり方によってはネイビーって分かるし、場合によっては黒以上に黒に、見えてしまうから難しいと思う。でも仕訳する人にもよるが……まぁ、余談だが色に関しては、男性より女性の方が見分ける力があると言われてるらしい。それと海外の冠婚葬祭ではミッドナイトネイビーの方が主流らしい 」
「へぇ~、そうなんですね~」
「うん、それとその件に関しては向こうの店長さんにお客様の声として耳に入れておくよ 」
「すいません、気になってしまったもので……でっ、前にこの店に来たとき……」
「えっ、あの最初のとき以降、来てたのかい?」
「実は報告がてら、何回か来てたんですが……お休みだったみたいなので……」
「あぁ、そうだったんだ……」
私は何て律儀な少年だと思い、感心しながら彼を見る。
「それで!……黒のスーツコーナーを見たんです。するとちゃんと全部ブラックはブラック。えっと、ミッドナイトネイビーでしたっけ、それはちゃんと紺のスーツの所にあった事に感動して 」
「まぁ、うちは優秀なスタッフが多いし、私も気にして見てるからね 」
「はい! それと、服への表記に関しても、ここの店舗の方が詳しく書いてあるし、あと店の大きさ的にも見やすいし、服への丁寧さが伝わってくる気がして。 あと…………この店には、千里香さんがいるんで 」
少年は嬉しそうに話し、照れ臭そうにしながらも、またも満面の笑みで返してくれた。
私は少年の笑顔が眩しく、褒められた事が照れ臭く、口を結んだ状態を見られるのが恥ずかしかったので、口元を手で覆う。ついつい目が泳いでしまう。
「なんだ、少年。さっきからちょくちょく千里香さんって呼んで……ていうか、なんで私の下の名前知ってるんだ。 はっ!! まっ、まさかストーキング! 君いくら、私が魅力的だからって……」
そんな少しあたふたする私に、彼は不思議そうに……
「えっ、いやだって……ほら、レシートの担当者名の所に載ってるじゃないですか。てっきり、公認なのかと……」
「えっ、うそ!」
「ほら! 」
少年は前回のレシートを見せてくれて、それを見ると当たり前の様に下の名前まで記載されている事に唖然とした。
ぅおい!! 個人情報!!!
「これに関しては本社を提訴する!」
「まぁまぁ、まぁまぁ……」
彼は苦笑いをして私を宥める。
「でも……まぁ……君に『千里香さん』っと呼ばれるのは悪くはない。では、これからも『ち・り・か・さ・んっ♥️』って呼んでも良いんだぞっ!」
「あ、いや、ついつい呼んじゃいましたが小野寺さんって呼びます 」
そういうところは連れないな……ツンデレか!
そんな楽しく話す中、彼の気になるところを感じ、その事伝えようと思った。
「それと少年。君の才を見つけたよ 」
「えっ、何ですか?」
「君は、『人たらし』の才があると思う 」
「人たらしですか? それって……悪い意味じゃ……」
少年は少し怪訝そうな顔をしたので……
「あっ、いや、決して人たらしは悪い意味だけじゃないよ。人を惹き付け、人の心を掴むのがうまいって事さ。ここ最近は周りの変化とかあるんじゃないのかい?」
彼は首を傾げながら考える。
「確かにお洒落をした時以降から、話す人は増えました。バイト先では、良くして貰ってますし……」
「うん、これは憶測だが『人たらし』の人は、本来真面目で優しい人が多いんじゃないかと思う。ただ、その能力に気付いて他者を利用したり騙したりする事で悪いイメージがあるね。あと、これも予想だが君は素直で優しすぎると践んでいる。それにより人付き合いが増えた時、悪い影響を受ける場合もある。そしてそのやさしさに勘違いして、寄ってくる輩がいるかもしれないから気をつけた方が良いと思う 」
「なるほど……」
「そして、君のその能力が爆走した場合。もしかしたら、近い将来、大切な人を手放さないといけない時が来るかもしれない。もし、大切な人ができた時、絶対に他の人より大切にしてあげなさい 」
少年は難しい顔をして
「はい! まだ、わからないけど気をつけます 」
と素直に答えた。
「さて! では今日の用事はこれで終わりかなぁ?」
「いえ、実はもう一つ用事がありまして……」
「ほぉ、いったいなんだい?」
「実は、お洒落な真冬でもいけるアウターが欲しくて……どうか、お願いします! 予算は6000円までいけます!」
彼は軽く頭を下げた。
「少年……おいおい。君、いいのかい?」
「もちろん。と言うか小野寺さんに3つくらい選んでもらってから、どれにするか、選ぶのが良いなぁっと思ってて……ダメですか?」
少年は気恥ずかしそうに、困ったような笑い方をする。
私は、なぜか胸の中に……こそばゆくも温かいものを感じた。私はその温かくこそばゆいモノを確かめるのと、それを落ち着かせるために胸の真ん中に手を当てた。
やばい。やばい……私はきっと……この言葉を待っていたんだ、少年。
私の口元を緩ませないでくれ~
激しくなりそうな鼻息を押さえるため、一度大きく鼻から息を吸い、口から一気に短くも小さく息を吐く……
よし!
「少年……」
彼は引き締め直した感じで構える。
「あなたの願い叶えましょ 」
私達二人はアウターコーナーに移動した。
「さぁ、少年。今日の君の様相と、前回買ったアイテムからトータルで考えてみた。まずは一つ目はこちら! コムサメンのトレンチコートさ!」
「うわ! すごくカッコいい!! えっと色はベージュになるんですか……?」
「いや、ベージュじゃなく、アイボリーさ。いわば象牙色とも言われている。私の中でベージュは白ベースの茶色と黄色をちょこっといれた色合いで、一般的に肌色と言われてるだろ。そして私の中でアイボリーは白ベースの薄い黄色と薄い灰色を混ぜたような色合いかなぁ 」
「なるほど、わかりやすいですね!」
「そして、このコートはボタンがダブルになってるから、より都会の大人の様相を表してくれる。あと、肩のところにエポレットが無いがデザインとしてボタンとベルトループが残ってるのが面白い。あと、ガンパッチやDリングも合わさり無骨さを表してくれてカッコいい。さぁっ羽織ってみたまえ!」
私は少年にコートを渡す。
「おぉ、何これ、思った以上に暖かい 」
「そう、それにはベスト型のライナーが着いていて取り外しも可能なんだ。うん、実にシルエットが綺麗だ。あと、コムサメンは日本のファイブフォックスという会社のブランドだよ。モードを基調としたデザインが魅力的なブランドだ。ちなみに2980円。」
「えっ、こんなにクオリティが高いのに、いいんですか。」
「モノには相場というものがあるからね。でも、こいつは、お買い得だと思う 」
そして、私は別のアイテムを出した。
「次はこちらだ。ユニクロ のJWアンダーソンコラボ商品、ネイビーの3wayミリタリーパーカー。まぁ、世間一般にいうマウンテンパーカーだよ。では、今度はコイツを着たまえ 」
少年は羽織ながら
「これ、中の赤いチェック……フリースですか?」
「そうそう、可愛いだろ 」
「はい、すごく良いですね! そして、何これ、凄く温かい!本当に真冬でもいけそうですね!」
「そうなんだよ! 表面の素材は耐久撥水素材で雨にも風にも強い。デザインは米軍のジャケットをインスパイアしているそうだ。もちろんそのまま着れるが、コイツがスゴいのは中のフリースを取り外し、ウインドブレーカーとしても着れる。 それと、フリースを裏返し、赤いチェックを表面にしてフリースジャケットとしても使えるんだ 」
「すごいですね。一着でこんなにも色々と使えるなんて!」
「ホント企業努力がすごいと感じる一品だよ。なんと、こちらが2480円!」
「えぇ、いい! 凄くこれも欲しいです!」
少年は興奮して鼻を鳴らす。
「うんうん、それにさっき着てたブレザーより、この子の方が少し明るめのネイビーだから、スポーティーかつ上品に演出できる 」
少年はうんうんと嬉しい悩みに、唸りながら考えている。その姿が微笑ましく感じた。
「ふふふ、少年……あと一品あるんだよ。それを見てからより悩むといい 」
彼ははっとし、こちらを見る。その顔にはわかりやすく、ワクワクと書いてあるようだ。
「では、こちら! リーバイスのデニムボアジャケット!」
「うぉ! これ! なんというか男らしくて! かっこいい!」
「うん、君は男らしい顔つきをしてるから着こなせると思ってね。さぁ、羽織ってま見せたまえ!」
「はい!」
直ぐ様、少年は羽意気込む様に織った。
うん、いい! とてもかっこいいじゃないか!
私は彼のジャケットに合わせたかの様な胸を張った姿に、ニヤっと笑ってしまう。
「うん、やはり私の見立て通りだ。今までと違う感じで良いじゃないか。そのボアは取り外せないから4月くらいまでしか使えないが、またコーデの幅が広がると思ってね 」
「確かに今までは少し綺麗目でしたからね。あっ、何かちょっとキム◯クみたい……違うか。」
少年は一人でボケて一人で突っ込む。それから彼は、手でボアの感触を確かめた。
「うーんこれ、ボアが柔らかくて着ててすごくいいですね~」
「うんうん。まぁその柔らかさに反して、デニム生地は固いものだから。余談だが、もともとリーバイスは鉱山で働く鉱夫のために作られたワークパンツが始まりだそうだ。元々デニム生地自体が丈夫だしね。長持ちして、風合いも楽しめる品だと思う。それと白のボアが差し色になり、かわいさも演出してるから 」
「うーん、これは悩みますね……」
少年は喜びながらも頭を抱えていた。
「うん、今回はざっくり言うと、①モード、②スポーティー&ミリタリー、③アメカジと言った選択肢だから……ただ、②と③は色合いがブルー系ではあるからね……」
「よし、決めました!」
「うむ、どれにするんだい 」
「僕が……選ぶのは……①と③でお願いします!」
「うん、その根拠は?」
「勘です!」
一瞬私はその変な自信に満ちた様、シンプルな回答に驚いた。だが、理論や理屈を並べるより好きなものは好き、良いものは良いというストレートな気持ちが私の心をより和ませた。そして腹の底から笑いが込み上げてくる。
「勘か……ふっふっふっ……君、いいね! 確かに服選びは経験や知識も必要だけど、勘もそれと同じくらい大切だと思うよ 」
笑う私を彼は、不思議そうに見ていた。
お会計が終わり、彼は買った商品の袋を抱きしめた。どうやら彼は、今回も満足しながら服を買ってくれたようだ。
そして、私は彼を店のドアの前まで見送りにいく。
「では、小野寺さん。またちょくちょく来ますね。まぁ買うのはそんなに買わないかもしれないですが……」
「あぁ、もちろん待っているよ。いつでもおいで、少年。」
「あっ、今度お給料出たら友達と一緒に来ます 」
「うんうん、というか彼女と来てもいいんだぞっ!」
「いや、それはまだ……」
「あと、給料出たら奢ってね!」
「いや、それは小野寺さんが奢ってくださいよ~」
私はこんな関係が嬉しくて笑ってしまう。彼も私につられ笑い返す。
冷たい風が吹き、そんな和やかな時間から現実に戻る。彼は寂しそうな顔をしたが、軽く顔を振り、
「それじゃ、時間もアレなので今度こそ帰ります!」
「うん、今日はありがとうございました!」
「こちらこそありがとうございました!」
と少年は頭を下げた後に、手を振りながら帰っていく。
ふっ、まだまだ子どもだな……っと思った。でも、とても心が……温かい。
私は笑みを浮かべながら、背伸びをした。
結局、最後までお客さん来なかったし……でも、今日は良い一日だった。さて、店閉め店閉め。
後ろ向いて片付けをしようとした時、背後から聞き覚えのある声がした。
「見つけたぞ、千里香……」
私はその呼び掛けに、息を飲んだ……
如何でしたでしょうか。今回は少年と魔女の久々の再会編でしたね。
今回よりちゃんと服の知識を調べたりしたのですが心配は多々ありますね(汗)
「ニュートレジャーアイランド」なんですが某古着屋ショップの名前と、私が好きな有名な曲に文字って名付けました。
あと、最後は少し尾を引く終わらせ方にしました。
いつか、いつかちゃんと伏線を回収いたします。
今回も読んで頂き誠にありがとうございます。また、是非お願いいたします。