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古着屋の小野寺さん  作者: 鎚谷ひろみ
sweet&salty
34/52

19 雨上がりに見た幻を今も覚えている#1



明けましておめでとうございますm(。_。)m


今年もゆっくりと投稿していくと思います。


次の話を投稿したら、また例の試験に取り掛かる予定です……



こんなゆっくりな投稿ですが、どうか御贔屓にお願いいたします。

19-1 中東天使の歌





「はじめまして! あなたが千里香!?」

「うん!」

「よろしくね! 私はあなたのパパとママのお友達なの~! ふふふ…………あ・な・た……かわいいわね!」




「あら、 いらっしゃい!!」

「すご~い!! 服がいっぱい!!! まだ、できてないのもある~」

「こういう場所は、はじめて?」

「うん! 」

「ゆっくり、観ていってね!」

「うん!!」




「えっ、私に弟子入りしたいの?!」

「はい!」

「うーん…………私は厳しいわよ。」

「はい!!」

「…………それじゃ、私の事はマスターと呼びなさい!」

「はい! マスター!!」

「私の弟子になって一つだけぜったい、守って欲しい事があるの……」

「はい! 絶対守ります!」




「千里香~ お誕生日おめでとう!! これ、私から!」

「うぁー!! すごい! 」

「世界に一つだけの服……『べっぴんさん』!」

「『べっぴんさん……?』」

「うん! 貴方のためだけの服よ! 着てみて!!…………あら、やっぱり私の見立てに間違いないわね!!」

「すごい……私……綺麗かなぁ……?!」

「うん! とても似合ってるわ! 貴方はお姫様……『べっぴんさん』だからね!」

「ありがとう!! マスター!!!」




「あら、今日は元気ないわね~」

「あっ、すいません…………友達ってなんですかね?」

「うーん…………なに? ケンカでもしたの?」

「えっと……まぁ……」

「まぁ、誰にも言いたくない事はあるからね。私は思うの、『大人は言いたくなったら言う』」ってだからあなたも言いたくなったら言えば言いと思うわ」

「はっ、はい」

「でも、根拠はないけど……大丈夫! あなたは美しく賢い、そして強い。ギルガメッシュ王の様な人。だから誰からも愛されるの 」

「ギルガメッシュって誰ですか?」




「今年もおめでとう!! 千里香!!! 」

「今年もありがとうございます! マスター!!」

「ハッピバースデー トゥユー、ハッピバースデートゥユー! ハッピバースデー ディア 千里香!!……」

「マスター、恥ずかしい……私はもう子供じゃないですよ! 」

「いえ、私からしたら貴方はずっと子供よ!」

「マスター、前から言いたいことが……」

「あら、何かしら?」

「少し音程、違う気が……」

「細かい事はいいの!!」




「千里香、最近忙しいみたいね……無理しなくていいから、あなたのやりたい事をおやりなさい」

「はい……すいません……少しだけ……休ませてもらいます……私……がんばります!!」




「ごめんなさい……私も最近、忙しくて……大丈夫ちゃんとやれてる? あの人……ちゃんとあなたの事を見てくれてる?」

「はい……大丈夫です……」




「マスター! 今年も素敵な服とケーキを頂き、ありがとうございます! 」

「あなたが喜んでくれるなら、私も嬉しいわ! ごめんなさいね……直接、渡せなくて……」

「いえいえ、マスターとこうやってテレビ電話でも話せるのは嬉しいです! 」

「さぁ、ローソクに火を灯して……さぁ、吹いて~」

「ふぅー!」

「おめでとう!! 千里香!!!」

「でも、こうやっていつまで祝ってくれるんですか? 私的には一生、マスターの服を着たいですけど~」

「そうね、とりあえず……30歳までかしらね! 」

「えぇ、30歳までですか~……あ~っあ! 30になりたくないなぁ……」

「……大丈夫! あなたは神様に愛されているわ!! だから30歳にならないわ~そう言う契約だもの! ほら、昔言ったじゃない? ギルガメッシュみたいって」

「あぁ、言ってましたね」

「あなたはギルガメッシュで、いつも天使があなたを見守っているの。だからあなたの毎日はこれからも幸せに溢れるのよ」

「本当ですか~!……」

「ホントホント!!……」




ビリッ…………ゴンッ……ド……ドッド……




「マスター、違うんです!! あれは……本当に、あれは!!!」

「貴方……私との……約束……破ったわよね……何で! 何であんな事したの!!…………私の目を見て!…………言いなさい!! 何も言えないの!? 貴方もそこら辺のケダモノと、代わりは無いのね…………出ていって! もう、二度と……顔を出さないで!!!」


(マスター! 違うんです! あれは、あれは!!……)




ザーザーザー……ザーザーザー…………




うっ……いたたたたっ……足つった……サムい……


私はつった方の足を無理やり伸ばした。


痛ったー……くぅ……


正月を開けて、新年の店の用意。そして新年のキャンペーンをこなした。そして、1月7日……私の誕生日……今日は仕事は……休みだ……



シフトを決める際いに、鈴木が……


「千里香ちゃん! 1月7日、誕生日だってね!!」

「あっ、うん、えっ! なんで知ってんの?」

「いや、少年くんに聞いてさぁ~」

「ふーん……」

「だからさぁ、その日は……」


鈴木が薄気味悪い顔でジーッと見てくる。

「何、何なの?」

「その日を……千里香ちゃんは、休みにさせてやるぜー!!」

「えっ 」

「ほら、去年も仕事だったろ? せっかくの誕生日くらい、ゆっくり休みたいじゃん?……そうだなぁ、誕生日の日と次の日くらいは連休で……」

「いや、別にいいよ……そんなの……」

「いやいや、新年明けまでは俺、北海道で。特に千里香ちゃんに迷惑かけるし、一応他のみんなにも声かけて協力はしてもらってるから~」

「だから、いいって!」

「なぁ! 田中!!」

「そうですよ。誕生日くらい、ゆっくり休んでください。他のみんなにも了承得てますから 」

「えっ、え………」






それ以降何も言えず、休みにさせられた……いや、気を使ってくれるのは嬉しいが……誕生日、だからってやること無いし……外雨降ってるし……


私はスマホで天気予報を検索した。


今日、一日中雨じゃん!!ふざけんな!……えぇ……どうしよう……足痛いし……最近の不摂生が……誕生日に近づくとついつい…………誕生日……なんて、嫌いだ……



私はベッドのサイドに置いてある細長いクッションを抱きしめ丸くなる。そしてもう一度目を閉じた。






再び目を明けると11時過ぎ。だるい体を起こし、台所に行き歯を磨く。軽く朝食の用意をしながらテレビをつけた。正月の特番は収まり、普通のニュースと情報番組が流れている。


トーストとスクランブルエッグと野菜ジュース。落としたてのコーヒーを飲み、体を伸ばす。


「本当にどうしよう……今日……」


やる事無いし……ケーキ……いや、アラサー女が一人自分用のケーキを買ってる姿は滑稽だ……なら、一条くんトコの和菓子でも買っていこうかなぁ。それで一条くんに祝ってもらって……それから、少年の職場に顔を出してちょっかいをかけてから、誕生日を祝って貰う。

うん、そうしよう! 今日は土曜日だし、少年も仕事してるだろうから……驚かせてやろう!!




私はさっそく、シャワーを浴びてから、服を選ぶ……

「どうしようかなぁ~♪ 今日は誕生日~♪ 特別な日……♪♪」

気持ちを落ち込まない為に、自作の歌を唄いながら、クローゼットに近づく。


中の服をカツ、カツと鳴らしながら選ぶ。


そして、やはりマスターが誂えてくれた服の所で手が止まる。

マスター……元気かなぁ……

私の頭がゆっくりと下がっていく……


カツカツ……


私は一番奥の方にある一つの服で手が止まり、一気に鼻から空気が入っていった……目は何度も瞬きを繰り返す。そこから、体が動かせなくなった。


左肩の部分が大きく破れ、修復の後が雑く、あからさまに破れた後が分かる様になっているワンピース……


そう言えば、忘れてた。これは、私の過去の傷だ……

今日だからこそ、今日に弱い自分と向き合うために……


私は急いでその服を取り出した。浅い呼吸を何度も繰り返す。


そして、修正跡が残る上から、色とりどりの小花柄の刺繍を入れた。


「うん、できた!!」


強く握りしめ、ワンピースを上げる。上々な出来だ。世界に一つだけの服……私だけの……べっぴんさん!


気が付くと、15時を回ろうとしたので、急いで支度をして出ていった。






「あら、小野寺さん! いらっしゃい!!」

「こんにちわ~!」

「今日はどうします?」


気品が良く、優しそうな和風美人の一条くんの母上が声をかけてくれる。


「あなた~! 小野寺さんが来てくれてますよ!!」

「はいはい 」


厨房の奥からゆっくりとノソ、ノソ……っと足音が聞こえる。


「あと、今さらなんですがウチの人、実は小野寺さんのファンで~」

「やっ、やめろ……恥ずかしい!」

「いいじゃないですか!! 」


とても微笑ましい夫婦の会話を見せつけられた。



「んで、今日はどうしますか? おすすめは……栗きんとんと白餡を混ぜた饅頭と、1月の花の梅を模したものですが……」

「それじゃ……それを4個づつ、頂けますか?」

「いつも、ありがとうございます!」

「あれ、そういえば……薫くんは……?」

「あぁ……」

ご夫婦お二人はお互い目を合わせてから、

「な、なんか用事らしくて……出ていきました!」

「そうですか……」

「あぁ、よかったら、そこのカフェスペースでお茶でも飲んでいきません? いい茶葉入ったので! あと、試作品のお菓子もあるのでサービスします~!」

「えっ、いいんですか!?」

「お得意様なんですから、お気になさらないでください 」



誕生日! さっそく得してしまった。お茶をしながら、軽く最近の一条くんの話をする。


『最近はあの子の口数が増えた』『今までは家に籠ることが多かったが外に出ることも増えた』と等々嬉しそうに話してくれる。所々に父上がボソリっと言葉を入れ、ゆっくりとした時間が流れた。


というか、一条くんの母上……いや、女将……こんな話す方だったのか……っとふと思った。





お店を17時30分くらいに出て、少年のバイト先に入店した。 土曜日は基本シフトに入ってる事が多いので急に行って驚かしてやろう……そして、仕事終わりに一緒にトレアイに行って誕生日ケーキならぬ、誕生日和菓子と洒落混む……という算段だ。




「いらっしゃいませ……『お一人様ですか?』」


たまたまか、私のメンタル的な問題か……その『お一人様』という言葉が嫌味ぽっく聞こえ、少し苦笑いになってしまった。

「はい 」

「お煙草はお吸いになられますか?」

「いいえ 」

「どうぞ、こちら側のお好きなお席にどうぞ 」


マニュアル通りに席に通される。周りをキョロキョロして、少年が居ないことを確認をした。そして、いつものスタッフの方々や店長が居ない事を確認。ホールにはさっきお出迎えしてくれた、知らない社員らしき40代半ばの白髪まじりの女性のスタッフが回しているようだ。


少年、休憩中なのかなぁ……


お冷やとおしぼりを出される。とりあえず、ゆっくりしたいと思い、紅茶を注文した。

やることがなく、ボーッとスマホを見る。30分位経ち、サービスのお茶が出された時に、そのスタッフに勇気を出して声をかける事にした。

「あの……すいません! お忙しい所申し訳ないのですが……いつもバイトで入っている、佐藤くんは……今日はお休みですか?」

「えっ、いや……あの、それは個人情報になるのでお伝え兼ねますね 」

「あの、私、彼の友人で……」

「えっ!?」


彼女は怪訝な様で私を全身を上から下まで見た。


「いや、それでも申し訳ないのですが、決まりは決まりなので!……お伝え兼ねますね 」


そのスタッフは鼻笑いする。そして目は笑ってはいなく、言葉と態度の節々に少し冷たさと嫌みを感じる。


うっ、胸……いや、態度もデカイ気が……


そして、ネームプレートを見ると副店長 『灰田』と書いてあった。





彼女の態度に萎縮していると、奥の方のスタッフルームらしき所から、バタン!と聞こえた。


「あれ!? 小野寺さん!! 明けましておめでとうございます!!」


いつもの店長がニコニコして近づいてくる。


「あぁ! 店長さん、明けましておめでとうございます!!」

「今年もよろしくお願いします!」

「あの! 今日は佐藤くんは?」

「いやね~、アイツ珍しく今日は休みにして欲しいって言うんですよ~! 」


彼はいつもの様にニコニコしながら答える。

この方は混んでて忙しい時には、ガチャガチャと物音はうるさい……が、お客さんに対しては丁寧に接客をするので嫌いではない。いわば、昭和のおじさんってイメージだ。


私たちが会話をしていると、その40代らしき女性のスタッフは一瞬だが顔を崩し、それから笑顔を作りす様に見えた。



「いやね~あれは俺の予想ですけど……デートですね!」

「えっ、そうなんですか!?」

「たぶんですけど、好きな女のために休みを取ってるんじゃないかと~最近友達っぽい子たちとコソコソ何かやってましたからね~その中に女の子二人もいるんです! いやー、アイツもやる男ですよ!! まぁ今日は佐藤はいないですけど、ゆっくりしていってください!!」


そう言って店長は快活に去っていった。『灰田』というスタッフは少しの不機嫌さを隠して、そそくさと去っていく。


ホールにポツンと一人取り残され、呆然と少年の事を考えた。


私……少年が居ると確定して、来たのに……彼の事の行動を……勝手に決めつけて……もし、早川くんとのデートだとしたら……なんで、相談してくれなかったんだろ? ホントに私は必要なくなったのかもなぁ……


私は大きなため息をついて、一気に紅茶を飲み干して、御手洗いを済ました。鏡に映る自分が情けなく感じる。


今日は誕生日……外は雨……お洒落をしても、仲の良い友人たちには会えない……


お会計を済まし、外に出る。外はすっかり暗くなり、雨もまだまだ止みそうにもない……私は傘を差し、ぱらつく雨の中を歩き出した。




土日だから駅周辺はある程度人通りが多い。小さい子供と手を繋ぎ、玩具の袋を揺らしながら歩く親子。腕を組ながら楽しそうに会話をするカップル。孫にお別れをいう老夫婦。ニヤニヤとスマホを見ながら彼女を待ってるらしき男性。濡れながら無邪気に追いかけっこをしている学生たち。妊娠している奥さんに気を遣い、たくさんの荷物を持つ旦那さん……数え上げれば、その人その人たちの『幸せ』の一コマが過ぎ去っていく。

瞬きはまるでカメラのシャッターの様に、私の脳と心に収まっていった。過ぎ去っていく人たちを見て、きっと私もあの様になれた……この先に、そうなれる可能性はあるんだろうなぁっと想う。

だが、現に今は一人きり……目頭が熱くなり、上を向く。

いかん、いかん……これじゃ去年と同じじゃないか……

私は唇を噛み締めて、気を紛らわし鼻から息を吸って落ち着かせた。口から息を吐いた後、首を左右にふり、

小さく「よし!」と言い、また歩き出す。






宛もなく歩くとついつい、トレアイの近くに着いてしまった。ふと……『店に寄ろうかなぁ~』と過ったが……



『あれ~? 千里香ちゃん、休みなのに~寂しくて着ちゃったの~?』

『店長、駄目じゃないですか。せっかくの誕生日休みなんですから。店なんか来ちゃ駄目ですよ』



ニヤニヤ意地悪を言う鈴木、休みの日に顔を出した私を見て引いてる田中たちの顔が浮かんだ……



私は、プイッと向かい側のトレアイに背を向け呟いた。

「いいもん……アラサー女でも一人きりの誕生日……大人らしく楽しむもん」




目の前のスーパーに入りお酒コーナーを見渡す。


へぇー、ノンアルコールでもこんなに種類あるんだ~……あっコレ、朝の情報バラエティで取り上げられた事もあったノンアルのワインだ……


物珍しげに物色していく。でも、明日も休みだしアルコールが入ってるのでいいや。




微アルコールビール1缶、ハイボール1缶、チューハイ1缶と美味しそうなポテトチップスを一袋を購入し、外に出る。空を見上げると曇っているが雨は一時的に止んでるようだ。


歩道に出て、端に寄る。


プスッ!


その音に反応して少し周りの人が此方を見る。私はそんな事を気にしない様に微アルコールビールを開け、ゴクッゴクッ……と飲んでいった。


ハァーっと、息を漏らすと……そんな私を尻目に色んな人たちが過ぎていった。アルコールは顔を少しづつ温めていき、気持ちが軽くなっていく。


見ろ!! これが27歳になった女の強さだ!!!


気が付くと歩いている人もいない。私の気持ちはまだ鬱蒼と茂っている。

駄目だ駄目! テンションを上げなきゃ!!

私はTATSUYAの上にある、お酒とお菓子持ち込み可のカラオケ屋に入っていく。






「お一人様ですか?」

「はい! 」

「お時間は?」

「一時間半で!」

「お煙草はお吸いになられますか?」

「いいえ!」

「ドリンクはどうしますか?」

「ワンドリンクで、特性レモンスカッシュで!」

「では、17番のお部屋にお入りください。」

「ありがとうございます!」




私は部屋に入り、さっそく曲を入力した。伴奏でテンションがあがり、立って唄う。気が付くと、自作で全身を動かしながら唄っていく。


「…………♪~……」


ガチャ!


「失礼します 」

その声で私は恥ずかしくなり、歌詞をゴニョゴニョと唄う。店員さんは静かにドリンクを置く。

「失礼しました」

一礼をしてさっていった。


私はテンションを戻す。

「……アウイェー!!」

唄い終わった後。途中、店員さんが入り、スッキリしなかったのでもう一度同じ曲を入れた……


何曲か歌い終わり、レモンスカッシュがなくなりカランっとグラスの中で鳴る。


それを合図にさっき買ってきたポテチを開け、ハイボールを入れ……グビッ、と鳴らし飲む。


さて、次の曲次の曲。


そうやって何度も歌を繰り返していく。






気が付くと一時間半が過ぎて、さっき買ったお酒とポテチがなくなり……プルルルル、プルルルルと退店の合図が響いた。


さぁ、店を出るか。


ゴミを端に固めて、使ってないおしぼりでテーブルをふき店員さんに迷惑掛けないように早めに出た。



お支払の時に女性の店員さんが私に笑顔を向ける。


「今日は寒いですし、雨で足元が滑りやいすいですからね。気をつけてください 」

「はい、ありがとうございます!」

温かみのある声で言われ、嬉しく酔っぱらった勢いで大きく頭を下げた。




外に出るとフワフワとした状態、階段は濡れていて本当に滑りそうで……店員さんの言葉が身に染みる。雨はまた強くなり、真っ暗だ。


もう、帰るかなぁ……


足先を自宅の方に向けてスマホで時間を確認すると、着信画面に変わった。


画面を見ると、久々に桜井先生からの着信。

「はい! 小野寺です!!」

酔いの影響か、少し大きい声で応答してしまう。


「あの、桜井です……すいません……急に電話掛けてしまって……」

「いえいえ……? どうかされたんですか……」

「っ…………」


電話口の彼の声は少し暗く、何か言い淀んでいる様だ。


「えっと……何かあったんですか?」

「いや、あの、俺……誰に相談すれば良いのかわからなくて……」

「はい 」

「あっ、実は……菫さんと旅行しようと計画を立ててたのですが……」

「へぇ~! 素敵じゃないですか!!」

「いや、そうなんですけど……その前に、実はケンカしてしまって……」

「えっ!! なんで!!!」

「あっ……えっと……あっ……最近! 菫さんとのデートとかで、ついつい僕がお金を出すんですが……その『お金使い過ぎです! 私にも出させてください!』って言われて、そこからそのやりとりが何回かあって……いや、自分は男じゃないですか……それで何回も気にせずやっていたら、彼女の方が全然、楽しく話してくれなくなって……なんでか理由を聞くと、さっきの事を含めて、『私の話をちゃんと聞いてくれない!』って言われてしまって……そこから感情がヒートアップしてしまって…………連絡とれないし…………もう、俺……どうすれば……もう辛くて……直接相談に乗って欲しくて……」


彼の何とも言えない声で私の酔った頭の中で、すぐ出た答えは……

「わかりました!! 今、どこにいるんですか?!」

「えっ!? ……今は、学校です……」

「んじゃ! 学校に行きますね!!」

「はい、助かります。 申し訳ないんですが……二年三組の教室まで来て頂けたら助かります……」

「大丈夫です!! すぐに向かいます!!」




今日は、私の誕生日……でも、誰かに必要とされるのは悪くはない……踵を返し、学校へ向かった。





今回も読んで頂き誠にありがとうございますm(。_。)m


もともと千里香さん視点の今回の話しは1つに纏める予定だったんですが、思った以上に長くなったので前半後半に分けて投稿になりました……


一人きり誕生日って慣れてしまうとなんとも思いませんが祝ってくれる人がいたらうれしいですよね~


今回も拙い文章でしたが読んで頂いて本当にありがとうございました!


次の投稿は今月いないには投稿できると思います……

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