14 綺麗な彩り
今回も読んで頂き、誠にありがとうございます!
今回の話しは……
うん、特にコメント思い付かないので、
今回も長いのでゆっくり、読んで頂ければ幸いです!
僕は今……机に座り、腕を組み真剣に考えている……憧れと理想か……
またもや、個人的に親しみやすく、馴染む方か……答えが決まらない。
目を閉じて、上を向く……暗闇の世界……
「うーん……」
だめだ、決められない。だって、決めてでき……良好なら……そのまま……
とりあえず、息を抜きまた息を吸う。
どちらにするか……メリット……デメリット……今から……あぁ! 決められない!! 大切なのは自分のキモチだってことは、承知している。それでもなんて、優柔不断な男なんだ!! 僕ってやつは……ほんと、そういう所が嫌になる……
トス、トス、トスッ
「佐藤くん、決まった?」
物静かに、一条くんが訪ねてきた。
僕は目を開き、彼を見る。
「いや、駄目だ……決められない!」
「駄目だよ。 もう決めなきゃ、時間が無いんだよ。」
「だって、どっちも好きなんだよ!」
「あのね、佐藤くん……世の中、どっちもって、そういう事は選べないんだよ。君には、君の選ばなきゃいけない答えがあるんだ。どっちもなんて言ってると両方無くすんだよ。二兎追うものは一兎も得ず……時間が無いんだよ! 早く!」
普段ローテンションの一条くんには珍し勢いで迫られたので、ついつい……
「えぇい!! ままよ! ぼっ、僕は!!!」
こちらも勢いよく指をさした。
一条くんは納得した様子でうなずき、
「うん……君もちゃんと選べるじゃない 」
と言われ、ようやく僕は肩の力が抜けた。
その様子を理解したように荻野目さんが来た。
「佐藤くん……決めてしまったのかい?」
「はい、僕は僕なりの答えを出したつもりです 」
僕の真剣な顔を見て彼は静かに首を立てに振った。
「荻野目さんはどう思いますか? 僕の選択 」
「ふっ、俺の答えは……君が幸せになるなら、俺は構わない。」
そう言いながらも、少し不服そうな顔をして了承してくれた。
そしてそんな僕たちの様子を見て、早川さんと長瀬さんは心配そうな顔で近づいて来る。
「佐藤くん!」「佐藤くん!」
「答えは決めたの?」
「どっちにするかって?」
僕は黙って頷く。そして、僕は……また指をさした……
時期は巡って、9月の終わり頃……前回のデートの後も変わらず。
だが、気持ちは色々と揺れて……
そういえば……千里香さんと出会って、一年が経とうとしている。
僕は学校終わりに『ニュートレジャーアイランド』へ向かった。
千里香さんは傘を地面に剣の様に刺し、立ちはだかっている。
「やぁ、少年……前回の件はどうなった?」
彼女は声低く、真剣に聞いた。
「はい、ちゃんと決めて……もう、済みました。」
「では、君の答えを問おう!」
僕はおもむろに、鞄の中の……あるモノを……彼女の目の前に差し出した。
彼女はそれを見て、顔がみるみる明るくなる。
「おぉ! なかなか、いい出来じゃないか?」
僕は彼女の笑顔で安心した。
「まぁ、素人としては頑張ったと思いました。僕には優秀な先生が付いていたので……」
「おぉ、魔女! 来てやったぞ!」
「千里香さん、 こんにちわ。」
荻野目さんと一条くんも顔を出しにやって来た。
「でも、あれだね。日本の高校は結構、本格的なモノを作らせるんだね 」
「いや、マニュアル通りに普通に作れば……それなりのモノができるんですが……せっかく衣類に関わってるので、なんか本格的にお洒落なものにしたかったんですよ 」
「うんうん、なかなか悪くないんじゃないかい。この……『エプロン』!」
彼女は僕の作ったエプロンを広げ、嬉しそうに回転した。
今回、家庭科の授業でエプロンを一から作ることになった……
それで小学生の頃のように作るようのセットではなく、一からデザインし素材等も自分でチョイスするという流れだ。
僕は、デザインのとき……ミリタリー感のあるカーキ色のエプロンを作るか……ワーク感のあるしぶいデニムのエプロンを作るか……
そうのように悩んでいたのだ。
デザイン的にポケットと多めと、ちょっとしたギミックのあるミリタリーのエプロンを作りたかったが、難しいと思い悩みつつ、理想に憧れる。
その事を一条くんに相談してみた。
「ああ、このデザインは難しいと思う。 よっぽど根気が必要じゃないかなぁ。あと、少し『佐藤くん』自身に寄せたものでもいいかも……」
そう言われ一度白紙にしてから、僕は自身がよく着る服をイメージした。
すると、デニムが好きと言うことに気が付いた。
また一条くんに相談すると、
「本格的なデニム生地だと、固くて作れないかも……でも、デニム風の柔らか目の生地を使えば、良いのを作れるかも……」
と言われ、またそこで悩んだ……
そして、荻野目さんや早川さんと長瀬さんにも相談する。
荻野目さんの場合。
「えっ、いや、両方難しいだろ……君、作るの慣れてないんだったら、もう一回考え直して無難なやつを作って成績に繋げた方がいいぞ」
早川さんの場合。
「ほぉー。面白いですね! ミリタリー! 私も結構、ミリタリーファッションも好きで~私は普通な感じなやつに、犬か猫の刺繍でもしようかなぁ~って思ってたので。よし、その案……私も少し取り入れますね~ありがとう!」
長瀬さんの場合。
「デニム! いいね! 佐藤くんのイメージって結構デニムのイメージがあるし、きっと馴染むよ! 私はデニムがいいと思う! きっと似合うし……」
千里香さんにも聞いたら、テンション高めに色んな案を出してくれたが……予想斜め上だったので半分ははぶいた。
そして悩みに悩んだ。
でも、結局みんなバラバラの意見をもらい考えに考え抜く……
そういえば……待てよ! 両方を混ぜるのはどうだろうか……ミリタリーとデニム……いや、そんな僕、器用ではないぞ……
そして、出した答えが目の前の『パッチワーク風デニムのエプロン』
色んな人の手を借り、余った良さげな生地をもらったり、面白そうな素材を組み合わした。我ながら悪くない出来だと思う。授業の後も修正修正を繰り返し苦心の作品だ。
家庭科の先生にも聞き、作るときの主なアドバイスは一条くんに、付きっきりで教わり完成。
「それにしても頑張ったな! 少年! 初めての作成だと、なかなかなものだと思うぞ。肩と腰を繋げるのをサスペンダー的な感じにしてるのも……グッドだ! それに、あえて下の方を割いてスリットぽくして、歩きやすくしてるのも、またポイントだね。でっ、もし、本格的にエプロンとして使うときはスナップボタンで止めれるようになってるとは……考えているし。真ん中に大きいポケットもデザイン的にいい。そして、両サイドに使い勝手が良さそうなポケット……やるね!」
彼女はウインクしながら、こちらを見た。
「まぁ、デザインはシンプルながら少し遊び心のある所は評価されてますね。でも……上には上がいたので……僕なんて全然……」
僕は自身の作品に自信が持てず、顔を逸らした。
「えっ、それはどういう事だい?」
「それは……この二人がエライもん作っちゃったからです……」
「ん?!」
一条くんも鞄から自分の作品を取り出し、千里香さんに差し出した。
「えっ! これ!!」
「はい 」
千里香さんは驚愕し、一条くんはニコニコしている。
「うそだろ…………割烹着!!」
「はい 」
そう一条くんはエプロンではなく、割烹着を作った。それもただの割烹着ではなく、オリジナリティ溢れたもの。彼の好きな和テイストを存分に加えたもの……所々に色んな和柄をちりばめて、素材はちりめん生地等と組み合わせている。
「なっ、なるほど……カラーは優しい緑色。首もとのボタンを織り、少しアシメにする。そして、手の所を膨らませるしていて……かつ、作業等の邪魔にならないように手首のところにゴムを入れているのか……そして、着衣は後ろから出来るように、背中側が紐になっている。あと、さりげない両サイドの弦と右側の小さな蝶も左側の小さな蛾のデザインがいいね 」
彼女はまじまじと彼の作品を見ている。
「これも、きっと千里香さんと出会えたから、完成したんです 」
彼は少し照れながら答えた。彼女は感心しながら、にやける。
「あっ、そ、そうかい……いや……一条くんに言われると照れるね……」
頬を人差し指で軽く掻きながら、気恥ずかしさを誤魔化した。
「おっと、魔女! まだ、俺の作品を観てないだろう……切り札は最後まで取っておくものだよ。ふっ、ふふふ……」
彼は大胆不適に笑う。
千里香さんは流し目で彼の事を見て言葉を選んでいる様子だ。
「うーん……もしかして、君の作品は……まさかと思うが、今着てるそれかい?」
荻野目さんは二人が話してる最中に、いつのまにか自分の作品を着ていたようだ。
「そう、俺の作品は……これだ!!」
「あの……それ……」
彼女には珍しく困惑している。
「君…………確かに、一条くんは『エプロン』という課題で割烹着を作っているが……たしかに、日本で言うエプロンは割烹着だから、まだしも……君のそれは……」
彼女は唾を飲み込み、覚悟をしながら口を開いた。
「いや、それ……コートじゃん!! えっ、ナポレオンコート?」
そう、荻野目さんは今回のエプロンという課題なのに、何故かコートを作っている。
鮮やかな真っ赤なコート。ダブルボタンで、所々メタルな装飾品。中2感溢れるのを作ってしまったのだ。
そして今彼は……この暑いのに……茶色の皮手袋。黄色の丸のサングラス。髪の毛はワックスを付け立てている。
いや、もうコレ……ほぼコスプレ!
「ふっ、確かに今回の課題は『エプロン』だ。だが、学生の自主性を重んじた授業だと踏んでいる。そう、エプロンとは……自由だ! エプロンという概念は……自由なんだ!」
彼は右の拳に力を込め熱弁する。
「そこで、俺の人生の指針となった。『ドライカン』の主人公をイメージして作った。俺らしい……エプロンなんだ! ふっ、これも魔女……貴方に会ったから、自分の信じるモノを作れた。貴方のおかげできた作品だ。感謝している 」
「うん、うっ……うん、君の意見はわかった……んで、その……結局……2人の家庭科の先生の評価はどうなんだい?」
彼女は僕に意見を……いや、助けを求めた。
「えぇ……っと、一条くんはその今の千里香さんの様に完成度の高さですごく好評でしたね……えぇっと……荻野目さんは……」
僕はホントの事を、口に出しづらく視線を逃がし……一条くんを見た。
「あぁ、先生も最初見た時、凍ってたけど……優しく、『荻野目くん、これはコートだね。作り直そうか……』って言われてました。」
荻野目さんはその様子を思い出すようにウンウンと頷く。
「まぁ、俺が時代を先取り過ぎたんだなぁ。いつの時代も先駆者は異端者として扱われる。仕方がない……」
「いや、その後。家庭科の先生に同じ事言って……それ聞いて先生、軽くキレてたからね。『エプロンを作ろうね! 成績つけられないから!』って、あの穏やかな先生の怒った顔……初めてみたよ……」
一条くんも結局、呆れたようで目を逸らした。流石の千里香さんも苦笑いをして誤魔化している。
「んで、結局……君はエプロンを作り直したのかい?」
「んまぁ、上の立場を利用して、圧力かけられたし……軽く『成績をやらない』って脅されたから……それに、布無くなったから、仕方なく新しい布を買い直したよ。まぁ、赤は飽きたから、紫の普通のエプロンを一日で仕上げ提出したさ 」
彼はスマホを取り出し、千里香さんに画像を見せた。
「普通にいいの作れるのに、わざわざ……人を怒らせる様なことを……」
「まぁ、俺にしたら自分を主張する良いチャンスだと思ってな 」
「まぁ、君のたまにぶっ飛んだ所は嫌いではないがね 」
彼女は口元に手付け、クククっと、喉を鳴らしながら笑った。
「あっ、そういえば、早川くんと長瀬少女はどんなのを作ったのかい?」
僕はスマホで二人の作品を撮っていたので、画像を出した。
「まず、早川さんのはコレです 」
「ほう、本当にミリタリー感のあるエプロンを作ったんだね! それも黒をベースにかっこいい~そして、その逆に……隅っこに付けてる白の犬と猫のロゴっぽいのが、かわいい……彼女らしい作品だ。ポケットは胸に1つ、お腹辺りに大きく1つ、両サイドに2つ。肩の所が皮になってるからそこがまた良いね! ちょっと、ベストっぽくも見えるし! 実にいい!!」
僕はスマホの画面をスライドした。
「長瀬さんのはこんな感じです 」
彼女はその画像を見て、目の色が変わる。
「ほぅ! 早川くんとは違うアプローチだね。以外だったよ。彼女がどんどん変わろうとしてるのが伝わる 」
画面に写り出されたのは、淡いパステルの黄色をベースに、裾の部分をマーメイド型のようにフリルを付けた。肩のところと、腰回りを結ぶ紐はそれぞれ幅の違うレースになっていてる。そして両サイドにポケット。今回作った彼女の作品は、可愛いを重要視しているのだろう。
「うん、長瀬少女もやるね。まるで将来誰かさんの奥さんの座を狙ってるような感じなのかなぁ~」
「えっ、長瀬さんはそんな人いたんですね!! それは隅に置けない 」
僕の言葉を聞き、千里香さんは鼻で笑った。
「さて、もちろん早川くんと長瀬少女の作品、両方すばらしい。生で現物を観たかったが、いないから仕方がない……」
それから彼女は少し考え、何かを思い付いたかの様に顔を上げた。そして彼女は僕たち三人にある提案を出す。
「うん! 君たちの作品はとてもいいから……今から明明後日の営業終了まで、入り口付近にマネキンに着せて飾っても良いかなぁ!」
僕たち三人は急なことで驚き声が出ない。
「なに、ちょっとした品評会みたいなものさ。せっかくだし色んな人にも観てもらいたいだろう?」
と聞かれて僕たち三人は顔を見合わせる。
一条くんは小さく手を上げる。
「えっ、と……どういった感じにするんですか?」
「そうだね……もちろん、全体のテーマは掲示しないよ。だって1人明らかに『エプロン』では無いからね……まぁ、作品を展示して……その近くに黒板、ホワイトボード……もしくは投票箱を出し、お客様に良いとと思ったものに、票をあげて貰う。もちろん、一票じゃなくてもいい。全部良いと思ったら全部に票を入れて貰う。今回は勝ち負けとか賞品とかは無いが……人に肯定して貰うと嬉しいだろ~。別にそれぞれが良いものだと思うし、比べる必要も無い。ただ、他の誰かも知らない人に観て貰うって重要だと想うからね!もちろん、嫌ならやらなくても構わないよ!」
そう言われ、荻野目さんはニヤリと口角をあげた。
「ふふふっ……なるほど……面白いなぁ! 魔女! ある意味、前回のリベンジマッチだなぁ!…………」
「いや、違うよ 」
荻野目さんは千里香さんの言葉を聞かず熱く話し続ける。
「俺が単独で優勝し、俺の凄さを見せつけてやる! 」
彼女は彼の熱に押され、溜め息をつくしかなくたった。
「だから、違うってのに……まぁ……さぁて、2人はどうかなぁ?」
彼女は目線をこちらに送り、ウインクをする。
一条くんも一歩前に出て、大きく頷いた。
「良いですね! 僕も知らない人に観て欲しいです! 」
三人は納得しそして僕の方に目をやる……急な展開に驚き、付いていけなくなり……僕は唇を結び、俯く。
確かに、結局は身内にしか観られてないし……でも、何か変な事とか書かれたらどうしよう……だけど、みんな乗るきだし……色んな人に観られる……昔はスゴく楽しかったのに……僕は、いつからこんな弱虫になったんだろう……
「少年!」
千里香さんの柔らかい声が聴こえ、僕は顔を上げた。
「君がやりたくなかったら、やらなくていい。周りの顔色を気にするな。ただ……」
彼女はトストスッと、僕に近づき……僕の胸に人差し指を当てた。
「素直に。自分の心に聴くんだ。なんで、やりたいのか……もしくは、やりたくないのか……そして、直感や本能はどちらに揺れてるのかそれらを大切にして欲しい……」
「はい」
僕は唇に力を少し入れて、目を泳がせる。
「3分だけ、考えさせてください」
さっき答えを言おうと思ったが、彼女の言葉で改めて考える事を選んだ。
ある程度決めていたのだが、本当にそれで良いのか……なぜ、そう言う風に考えたか……店の商品を手に取りながら、最初の一分は考えに考える。その後の一分は無心にする。
残り30秒くらいになった時、僕は三人近づき、伝える。僕の心の奥にある答えは、最初から変わらなかった。
「千里香さん!」
彼女と二人は此方を見る。
「僕も参加したいです!」
三人は嬉しそうに近づく。
「ああ、勿論だとも! では、早速飾ろうではないか! 鈴木と田中にも手伝ってもらおう 」
それからお二人に千里香さんが伝えてくれ、すぐに用意してくれた。
「さて、ブランド名と各自コンセプトはどうする?」
「ブランド名と各自のコンセプトですか?」
「そりゃ、折角だから付けようじゃないか」
僕たち三人は、うーんっと唸り考え、各自提出する。
「なるほど、荻野目くんがブランド名が『Take Ogi』か 」
「ふっ、TAKEO KIKUCHIみたいでカッコいいだろう。それに『Take』はもちろん、『武』という意味も籠めてるが『テイク』っとも掛けてるんだ。手に取ってもらいたい。それも籠めてだ。」
「なるほどね! いいねぇ! 作品は……『RED Cyclone』ほう、面白いね。えっと……次に一条くんは……」
荻野目さんはまだ説明と喋りたそうにしてたが、千里香さんに流され、少し悲しそうにした。
話を振られた一条くんはにこやかに笑みを溢す。
「はい。 僕はブランド名は『馨』で作品は『憩い』にしました。日本伝統のエプロン、割烹着はやはり家族団欒をイメージされてると思いまして。かつ、お洒落に生活の一部を彩って欲しいからそう名付けました 」
「うんうん、素敵な想いだ。ブランド名が1文字でシンプルにカッコいいし、実に良い」
二人は千里香さんに誉められ満足そうにしている。
「では、最後に……少年! 君のは……」
「僕のは……ブランド名が『FIRST』で作品名が『thanks to everyone be connected』」です。
「ほう、みんなのお陰で繋がるか……」
「はい! 今の僕があるのもそうですが、今回の作品を作るのにあたって色んな人の協力があったから、これが出来たんだと思います。それとパッチワーク調にも掛けてます 」
自信満々に僕がそれを言うと、三人は少し呆れた様子で鼻から息を洩らした。
「少年……確かにみんなの協力があったから、それは出来た。でもね、君の発想と真面目さと情熱……そして、努力でそれができたんだよ。誰かのお陰っじゃなく、たまには自分自身に誇りをもって、『これは自分の努力だ』って胸を張たまえ 」
彼女はそう言うと同時に自身の腰に両手をまわし、ふんっと鼻息をまたも漏らす。
僕はその姿が面白く感じ、少しにやけたが、
「いえ、それでもみんなのお陰です!」
と僕は嬉しそうに言うと、みんな微笑む。
鈴木さんが用意の最中にやにやしながらじーっと見つめた。
「いいねぇ~青春だなぁ。まぁ、1人っ場違いな人が混ざってるけど……」
「うるさいなぁ。どうせ、私はアラサーですよ!」
「あははは、拗ねないでくださいよ 」
鈴木さんは手をつけ彼女をなだめる。
「まぁ、こうやって作品の展示してると……我々の若い時、学生時代を思い出すじゃない。千里香ちゃっ、いや、店長 」
彼は軽く言い直した。その彼の気軽な言動に僕は首を傾げる。
なんで、『学生時代』というワードと……言いなれてるように『ちゃん』付けをしようとしたんだろう……
僕たちは小さな疑問を忘れて、マネキンのセッティングを手伝う。
セッティングが完了し彼女は自身の人差し指を唇につけ、トントンっとたたく。
「では、結果は明明後日……お楽しみに!」
僕たちは結果を楽しみに……その日が来るのを待つ。
そして日曜日。僕たちは夜19時にニュートレジャーアイランドに集まった。
セットされてた衣装と投票の箱は回収されている。
「千里香さん、今日の……そのジレ変わってますね。カッコいいけどセクシーというか……バーテンダーさんとかのやつですか?」
「あぁ、これかい? これはカマーベストというんだ。またの名をバックレスベスト。元々は発祥である英国紳士の盛夏の燕尾服の新型であったんだ。そして、カマーベストをアメリカ旅行社が持ち帰り、ダンスの衣装として着こなした事から注目されるんだよ。英国では紳士の夏場のカジュアル衣は、シャツ・ベスト・ズボンの3点、夏場は背中が広く開いたカマーベストを取り入れてるそうだ。日本ではどちらかと言うとフォーマルで使われたり、もしくは給士等 の仕事着、カジュアルだとレディースは使われる事は多いね。まぁ前回、君たちが楽しく喫茶店に行ったって聞いたから羨ましいと思って……」
彼女の声は少しづつ小さくなり、顔をクシャっとして
「あぁ、私も行きたかったなぁ~っと」
と彼女は膨れっ面をした。
彼女のその態度に咄嗟に頭を下げた。
「すいませんでした!」
僕がそう言うと、一条くんと荻野目さんもつられる。
「すいませんでした……」
「まぁ! 私は! もぉうぉ! 気にしてないが!! 」
彼女はつよがりながら、そう言ってからベストの胸部分に手をつけ、そのベストを見る。
「まぁ…………このカマーベストは特別製でね。私の師匠が製品を生産する前に作るプロトタイプなんだ。だいたい私をモデルに誂えてくれてたんだ 」
彼女は懐かしみながら微笑む。まるで絵画のようだが、その顔には少し寂しさを感じた。
「まぁ、そんな事より結果だね 」
彼女は切り替える様に、此方を見る。
田中さんが気がつくとしれっと来て、小さい紙を広げる。
「まず、一位が一条くん。二位と三位が僅差で…………二位が荻野目くん、三位が少年くんだ 」
パチパチパチパチ。
一条くんはそれを聞き、誇らしげに腕を組む。
「なんか、嬉しいです。一位貰えるのって。知らない人が僕の作品を観て投票してくれてると思うと 」
「そうだね。ちなみに感想もちょこっとあってね 」
田中さんは別の紙を広げる。
「まず、『割烹着なのに、お洒落。細かい作りがちゃんとしてある。少しアシメ調でかっこいい。和服ぽさが素敵。外にも着て行けそう』……等々」
「なんか、照れますね……」
その感想を聞き、照れ臭そうに頭の後ろを擦ってる。そんな一条くんを余所に荻野目さんは少し不服そうに腕を組ながら、人差し指と親指の間に顎をつけた。
「まぁ、俺のも良かったハズだ。時代を先取り過ぎたからなぁ 」
「大丈夫。君のにも感想があるよ 」
また、田中さんが紙を広げる。
「『真っ赤のコートなかなかハードロックぽくて痺れる。これを着て銃を持ったらSFの主人公みたい……』など」
「おぉ、やはり同志が何人かはいるなぁ 」
そんな彼も嬉しそうに頷く。
「もちろん、少年くんにも感想あるよ 」
「えぇ!」
最下位の僕にもあるかなぁっと半信半疑だったが、あったことに思わず感動して驚いてしまった。
「『タイトルと作風が一致してて面白い。武骨ながら作りに丁寧さがありいい……』」
田中さんは次の感想を読もうとしたが、目で先を読む。少し黙り、小さく息を吐いてから笑顔で
「『たぶん、作り手の不器用さが味になっており、人間らしい作品。ワーク感がそれを引き立てている。身近な人に着ていて欲しい』」
「えっ、最後のは良い感想なんですか?」
「少年くん、作品にその人の味が出てそれが伝わるのは、もの凄いことだよ 」
田中さんは僕に近づき僕の肩に手を置く。そして彼は優しく僕の肩を揺する。
「結果は最下位かもしれないけど、誇ってもいいんじゃない」
彼の然り気無い優しさで僕は嬉しくなり、満面の笑みが溢れた。
「はい! 悔しいですけど、嬉しいです!」
そう答えると皆が拍手してくれた。
それから発表も終わり、各自解散となった。僕が帰ろうとした時、千里香さんが近づいてきて、
「どうだった? こういうのも楽しいだろ?」
「えぇ、なんか知らない人に観られるのも悪くないと思いました 」
「ある意味、君の可能性も広がると思ってね 」
「はい……結果はアレでしたが、楽しかったです 」
僕は息を漏らしながら笑う。
「でも、改めて思うと、服を作ってる人々ってすごいですよね! デザインやコンセプト、企画……色んな方々が関わってできてるんだろうなぁって思いました。そういう仕事ってカッコいいですね! 僕なんて……まだ、学生ですし、アルバイトでただ喫茶店の仕事をしてるだけで……千里香さんは店長だし、鈴木さんや田中さんも楽しそうに働いてて、一条くんは将来職人さんを目指してるっぽいし、荻野目さんはファッション関係のネットを管理してて……二人は有望だし……みんなカッコいいなぁって。僕なんて……ホントぜんぜんだなぁって……」
そんな僕の姿を見て、千里香さんは少し考えながら唸り首を傾げた。
「少年。君は喫茶店のバイトの仕事は楽しくないのかい?」
「あっいえ、楽しくない事はないです! 目の前のお客さんが嬉しそうにしてると、僕もなんか嬉しくなったりしますし。ただ、周りが凄すぎて自分なんて霞んじゃうんだなぁって……」
「あのね、少年……君の優先すべき事は、学生としての本分である勉強さ。それに加えてアルバイトもしてるんだよ。自分の為であろうと誰の為であろうと、それはすごい事さ。たしかに、仕事に大きいも小さいもないって言うが……実際は、あるかもしれない。でもね、仕事をしてる事自体が、みんな誉められるべき事だと私は思う。みんな仕事をやって、相手にそれが伝わり、もしかしたら他の知らない……まだ出会ったことのない人の笑い声を作ってるのかもしれない。仕事をやる事で自身や相手の人生を彩る事もあるんだ。でも、みんな必死だから、なかなかそういう事に気がつかない……あと昔の日本のことわざにもあるだろう、『風が吹けば桶屋がもうかる』って良いことも悪いことも何かしら因果はある、繋がりがあるんだ。色んな物事もそうだが……だからせめて、私は仕事にも誠実に向き合いたいと思っているよ。それこそが『仕事をしてる人がかっこよく見える理由』なんだと……まぁ、私は私なりの仕事の誠実を目指すがね! 目指せオンリーワン!!」
彼女は右の人差し指を上にあげて、左手は腰にあて笑っていた。そんな様子を見ていると、彼女は形を崩すように右手を降ろす。
「まぁ小さいことも、些細な事も気にしてあげれば……自分の周りの世界だけでも変えれると私は信じたい……」
そして彼女はその長い女神のような手を僕に向ける。
「そして、君はこれからどうなりたいんだい?」
「僕は……」
少し考えて、答えは出ず……
「今からでもいい。人間は考える事が重要なんだ。色んな人に関わり、色んな事を考えて生きること。それも悪くないだろう 」
彼女はニヤッと笑い此方を見た。それから切り替え、少し甘えるようにすり寄る。
「そう言えば……お願いがあるんだが……」
そう言われ、僕たちはそこから少し話をして……帰宅する。
「ただいま!」
「おかえり!」
弟と母の声が聞こえ、ダイニングに向かう。改めて二人の顔を見て、僕は嬉しくまた、
「ただいま!」
「おかえり!」
晩御飯を食べてる時、2人にエプロンの事、品評会の事を話し、改めてエプロンを見せて褒められる。
「あれ? カズちゃん、頬が赤いで」
「ほんまや、ニヤニヤして~褒めすぎたかなぁ 」
母と弟に言われ、手鏡を渡され確認する。僕の頬は、温かなピンクに染まっている。
そんな小さな幸せを噛み締めながら、ご飯を食べる。
後日、バイト先の就業中。働いていて、ふと千里香さんの言葉が甦り、ニコニコと働く。
僕の仕事はコーヒーが相棒だ。誰が褒めるでもないけど、この小さなプライドが勲章だ。
僕のした単純作業がこの世界を回り回って、目の前の人や、まだ出会ったこともない人の笑い声を作ってるんだ。そんな今日も充実した仕事。
そして、いつものルーティーンでニュートレジャーアイランドへ向かう。
「やぁ、いらっしゃい! 少年!!」
彼女はいつもの上下黒の服と……そして、パッチワーク調のワークデニムエプロン。
そう、僕の作った、エプロンを着けて働く。僕はそれを見て、ハニカム。そんな彼女の姿やふれあいが嬉しくて、恥ずかしくて。
そして、彼女はその様子を悟り茶化すように近づく。
きっと、また……僕の頬は……温かなピンクに染まる。
長いのに読んで頂き誠にありがとうございますm(。_。)m!
今回、エプロンを作るをお話でしたね(まぁ、1人別のもの作ってましたけど……)
エプロンを通して、日常の家事やお仕事、夢に向かって頑張ってる人たち、勉強諸々含め、私は努力してる片方みなさんって、かっこいいと思います。
もちろん、自身のため。
もしくは誰かのため。
そんな人間関係が、その人の色を増やし人生を彩ると私は思っています。
次回のお話は、一つ先のお話のプロローグになりますので短めです。
また、少し大変なお話になりそうで、私も負けないように描けるよう頑張ります!
今回も長いのに読んで頂きありがとうございましたm(。_。)m!!




