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古着屋の小野寺さん  作者: 鎚谷ひろみ
sweet&sour
10/52

7 星になれたら♯4

今回で「星になれたら」完結です。


佐藤くんの少し違う一面が見れると思います。


なんやかんや、今回はボリュームが#1~#4となかなかボリューミーとなりましたが

ゆっくり読まれると幸いです。

宜しくお願いいたします。


一応、今回の伏線と思われる所々は回収したつもりです。



7-4 in order not to fade Drawing you





「ママ! 見て! たくさんの星!」

「あら~すごいわね! というか、この車の中からでも、わかるのすごいわね~」

「え、パパもみたいんだけど……」

「あなたはダメよ! 運転してるんだから……というか、今まで私たちをほったらかした罰だって事、わかってる! それにあなたって人は、いつもいつも…………」

「あぁ、わかってるよ……やっぱり君にはかなわないなぁ………うん、あれ、セイカ? 眠ってしまったのか……まぁ、今日は楽しくて疲れただろうし。俺たちの会話が長くて飽きたんだろう 」

「そうね……まぁ、家族水入らず、この子がいるから遠出はできないけど。あっ、でもセイカは何か良い夢を見てるのかしら 」

「えっ、あっホントだ……きっと、そのお守りのお陰だね。すごく穏やかな顔をしている。おやすみ。セイカ 」

「おやすみなさい、セイカ 」





僕は目が覚めた。彼女の夢を見ていた。家族4人で楽しそうにドライブをしている夢を。





セイカちゃんたちと会わなくなって、1ヶ月が経つ。そう、あのパーティーの後からだ。


喫茶店の方にも顔を出さなくなった。まぁ、赤ちゃんが産まれ忙しいのだろう。


まぁ、連絡がないのは元気って証拠だと僕は思う。



学校の一年の三学期を終える。今日は終業式。

皆に「またね! バイバイ!」と告げた。一条くんや早川さんはLINEをすればいつでも会えるし、小野寺さんは『ニュートレジャーアイランド』に行けば会えるし……


でも、卒業とかもあるもんな……まぁ、僕たちはあと二年あるからまだまだ先だけど……温かくなってきたし、気持ちいいなぁ~


さてとっ! バイトでも行くか!


今日は早めに入り、早めにあがる。いつも通りのスタッフとお客さん。話しかけられてそれに笑顔で答える。僕の日常だ。平和っていいなぁ。


いや、僕はおじいちゃんか!


その時、ピンクベージュのパーカーに青ベースのスカートを着た女の子を連れた親子が店の前を通り過ぎた。


僕はもしかして……と思い、他のスタッフに「ちょっとだけ出ます!」と言い。その親子を走って追いかけた。


店を出て数メートル先の曲がり角に、その人たちを見つけた。


僕は少しの嬉しさを込め、

「あの! すいません!」

と呼び掛けながら走った。


その人たちは振り返り、近づいて顔を見ると全然違った……

「はぁっはぁっ、はぁー、あっ、すいません!人違いでした。すいません……」

そう言うと親子は怪訝そうな顔でさって行った。



僕は恥ずかしさと寂しさで「元気でやってるかなぁ…………」っと俯いて呟いた。


あっ、やばいバイト中だ、仕事に戻らないと……

僕は急いで仕事に戻る。





バイトが終わり、僕は時間があるし『ニュートレジャーアイランド』に行った。


いつも通り、鈴木さんと田中さんは真面目に働いている。

さて、服でもみるかなぁ……もうすぐ春だし、今日はちょっと肉厚なスウェットのパーカーでも見るかなぁ~っと探す。

そして、いつも通り、小野寺さんがちょっかいをかけて、僕たちはじゃれ合う。



そう何も変わらない……いつも通りだ。そして気が付くと夜になっていた。

さて、そろそろ帰るか……っと店を出る事を小野寺さんに伝える。小野寺さんは自動ドア前まで見送りでついてきてくれた。



すると、閉店20分前に30代半ばのご夫婦らしきお客さんが入ってきた。その女性の方を見ると、セイカちゃんのお母さんだ。

僕は見るなり嬉しくなり声をかける。

「ごひさしぶりです! 佐藤です!」

「佐藤さん、小野寺さんお久しぶりです。この前は本当にありがとうございました 」


彼女は深々とお辞儀する。


「いえいえ、やめてください。そんな対した事はしてないので~」

僕はいつも元気なあの子がいないかと、ご夫婦の後ろを確認した。

「あれ、セイカちゃんは? あぁ、夜遅いし家で妹さんとお留守番ですか?会いたかったのになぁ、いつもみたいにネズミって呼ばれるのちょっと期待してたのに~」



セイカちゃんのお母さんは躊躇いながら……でも踏ん切りをつけたように口を開いた。


「セイカは旅立ちました 」



僕は何が起こったか、わからなかった。まるで急に心臓に重い鉛を投げつけられたように……冷たくも鈍い痛み……息が詰まりそうだった。

でも、お母さんの声は落ち着いた少し温かみのある声。

だから、より理解できなかった。

「えっと……えっ、はぁぁ……」

僕は詰まる息をどうにか流すため、無理やり吸い落ち着かせようとする。

「どういう事ですか? あっ、これぇ、あっ、セイカちゃんに言われたんですよね。ネズミを驚かせるためって……もぉう……相変わらず……」


『意地悪だなぁ』っと言いそうになった……


「少年!!!!」


小野寺さんに初めて強く言葉を遮られ、咄嗟の事に怯え言葉を引っ込めた。ふと、お母さんの方に顔を向ける。


その顔は普段の母親の顔ではなく、強く感情を押さえつけてるような表情で……僕は今、すごく失礼でひどい事を口に出す所だった。


「あの子は……セイカは……原因不明の免疫性の病気で…………内臓とかも、病にどんどん侵されてました。治療方法も見つからなく……ただ、定期的に診断に行くしかない状態だったんです。普段の生活には支障はなかったんですが突発的に発作や意識がなくなる事や力が入らなくなる事が多々あり……学校にも行かなくなりました。でも、3、4ヵ月前、あの喫茶店に行ってから、あなたに会うようになってから、あの子は元気になりました。ずっとずっと、あなたの話をしてました。『ネズミはいつもせかせかして、でも、楽しそうに笑ってる』って……それから、他の人と触れあうようになってから、あの子の病気は落ち着いたんです。それでまた、学校にも行けるようになりました。あの子の本来ある日常は戻ってたんです……実はこれ……」

彼女ゆっくりとは一枚の紙を差し出した。僕はその差し出された紙を広げる。



それは絵だった……

空には満点の星とバックには海……

海には星の光が反射して海にも揺らめいた星が描かれている。

真ん中にはドレスを着たセイカちゃん……

両サイドにはグレーのスーツを来た僕と黒のドレスの小野寺さん……


他に一条くん、一条くんのお父さん。早川さん。あとセイカちゃんのパパとママ、そして生まれてきた妹……と思われる人たちが描かれていて、皆スゴく良い笑顔だ。



僕は何を言えばいいか、わからず僕はただ……

「上手……な絵ですね 」

「はい……」

とお母さんが答えた。


「すいません、今さら…………あの子が大変お世話になりました 」

お父さんらしき方が頭を下げる。

「いえ、本当に、対した事はしてないので……」

「あっ、いえ、その事だけじゃないんです。佐藤さん、あの子は……我々の前ではすごく大人しい子でした。文句も言わず、待ってくれていました。ただ、私はあの子に寂しい思いをさせて、妻にも辛い思いをさせて……でも、ある日なんですが……妻と私が電話してた時にセイカは無理やり妻の電話を取ったんです。それで初めてワガママを言われました。あんなに怒ったり泣いたりしたあの子を私は覚えがありません……私たちは、無理やりあの子を大人にさせてしまったんだと思います。それと私は、あの子の病気の事を直視できなかったんだと思います。弱っていく辛そうにしてるあの子を……でも『帰ってきて!』って『ママと一緒にいてあげて』って言われて、私は……心を決めました…………」


お父さんは何かを言おうとしたが……止めたようだった。そして改めて、思い出した様に少しの笑みを見せた。


「あの子の妹が産まれた日。セイカは、久々に私に会って会って何回も私の胸を叩きました。で、その後は疲れて寝ていました。あの子は……ワガママを言っても怒っても、やっぱり心の優しい子だと思いました。その優しさは私達家族の為に、言っていると気付かされました。そして、妹が産まれて、四人で居るのが嬉しくて……もう離れたくないと思ったんです。だから……あなた方には本当に感謝しています 」

お父さんは泣くのをこらえ、頭を深々と下げた。


「佐藤さん、これ……お返しそこなった腕時計です 」


お母さんは腕時計を出した。

「あっ、はい……」

「あの子、その腕時計を片時も離さなかったんです。この人に……泣いて怒ってくれた時も、妹が産まれる時も、最後の時も……あなたがいつも側にいれくれると思ったんです 」



僕は……今どんな顔をしてるんだろ……わからない……見たくもない……なんで、なんで……知っていれば、もっと側にいてあげたのに……もっと優しくしてたのに……



小野寺さんは震えてる僕の背中を優しくさすってくれた。


「あと、これなんですが」


それから、小さな箱二つを小野寺さんと僕に渡した。


「あの子、『ネズミと魔女にはそれぞれに、これとこれを買ってあげてって、本当にお世話になったから』って……一条さんと早川さんにもお店と、病院でお会いしてそれぞれに別のものをお渡ししました 」



僕は箱を受け取った後、僕はその箱を胸に抱き締めながら、足が崩れていった……ただただ、嗚咽と鼻水で顔は……




ご両親がお帰りになり、小野寺さんは、僕が落ち着くまで待ってくれた。店奥から飲み物にココアを用意してくれ、二人で無言のまま飲む。

飲み干して、漸く立てるようにはなった。


僕はたまたま、店の天井の飾りにあのキーホルダーがまだ一つ残ってることに気づいた。


「そういえば、なんでセイカちゃん……そんなに星にこだっわてたのかなぁ。それに願い事あるって言ってたのに、なんで……自分の事は願わなかったんだろう……」


小野寺さんは落ち着いた小さな声で諭すように言う。

「たぶん、あの子は知っていたんだよ。自分が助からないことを……だから他の人の幸せを祈ったんだ。そこは君と同じ。あと、昔からいうじゃない。死んだら星になるって……」


彼女の言葉で僕の胸がまた締め付けられる。

また、顔と心と体が崩れてしまう前に……

「小野寺さん……僕帰ります。こんな時間までありがとうございました……」


僕は立ち上がり、すぐさま入り口まで行き……店の外に出ようとした。


「少年、君は彼女を幸せにした……それは事実だよ 」

彼女の微かな優しさがまた胸を締め付けた。


僕は店を飛び出した……なぜかはわからない……ただ、自分を苦しませないと気がすまなかった。とにかく全力で……どこかに、誰もいない所に、そうじゃないと自分が崩れてしまいそうで……宛もなく走る。寒さで皮膚が痛い。地面を何度も蹴るので筋肉、骨にも……冷たさと痛みが伝わる。

でも、身体は止めれない。


思うがままに……もう次は息は止まりそうなくらい……





僕は気がつくと川原についていた……セイカちゃんの誕生日の時、自転車で必死に逃げた時の河川敷に……本当にたまたまだった……


情けなく疲れた足を引きずりながら……とぼとぼと……橋の下のコンクリートのとこに行き、両腕を壁に叩きつける……

痛いけど、どうしようもできない。


ただ怒りなのか悲しみなのか、それをぶつけたかった……


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぉ!」


叫びにならない叫びだった……なんで叫んでるのかもわからない、喉が熱い……痛い。

でも、ただただ吐き出さないと、頭がおかしくなり、どうしようもできないんだ……



「うるせぇ!!」

どっかから、僕に対しての怒りの声が聞こえる。その言葉がより僕の憤りを強くさせた。

「うるせぇぇぇ! おまえが黙れ!!!」


僕は怒鳴った声が川原に響く。そのヒリついた喉から出る声はどんどん掠れていく。

怒鳴りなれてないから、情けなく無理してるのがわかる……




僕はどうしてしまったんだろう。ただただムシャクシャしていた。このまま……だと、無闇に誰かを傷つけてしまう……なら、いっそのこと……


そう思い、手を振り上げて震える力んだ手を情けなく降ろした。ふと、ポケットに何か、門みたいなのが当たる感覚がある。


なんだっけ……僕は痛々しい悴んだ手でそれを取り出した。



さっき……貰った箱だ。僕は戸惑いながら、その小さな箱を開ける。その中にはとても、優しくも綺麗に光るネックレスが入っていた。


星? いや、海星?


僕はただ止まっていたが、ふと息が漏れた。そして、強張ってた体も力が抜け、その場に座りこむ。


「なんだよ……ヒトデって……」


上を見ると結構な星が輝いている。

東京でも……こんなに綺麗な星々が観れるのかと思った。



僕は家に帰り、母と弟は僕の姿を見て、驚いて駆け寄る。

「どうしたん? なんかあった?」

と言っていたが頑なに言わない僕に何かを悟ったらしく、その日は何も言わなかった。






そして、月日は流れた…………


3月の終わり。僕たちの日常はまた、穏やかに戻る……

小野寺さんの話しによれば、セイカちゃんのお父さんは仕事を変えて、お母さんと妹ちゃんとの側にいられる仕事に転職したそうだ。



僕は今、一条くんに呼びつけられて、一条くん家の和菓子屋さんに着いた所だ。

そして早川さん、小野寺さんと揃い、店奥から一条くんとお父さんがワンホールケーキくらいのサイズの和菓子を持ってきた。

「こちら、うちの永遠定番メニュー!『海と星』です 」

「えっ、すごい! これって……」

「うん、セイカちゃんの望んだ和菓子……まぁ、これで満足してくれるかはわからないけど……」

「では諸君、早速食べよう! 一条くん、取り分けお願いするよ!」

「待っててください 」

そして、その和菓子を切り分ける。


切りわけるのを見ながら、僕は彼女からのプレゼントの事を思い出した。

「そういえば、二人ってセイカちゃんから何貰ったの?」


「あぁ、私は星の形をした指輪 」

「僕は星の装飾品がついてるブレスレット 」

「小野寺さんはたしか……」

「私は星の形のネックレスだよ 」


「えぇ、なんで僕だけヒトデのネックレスなんだよ……」


一条くんは驚いて、

「えっ、そうだったんだ……なるほど……あれ、佐藤くんもしかして、セイカちゃんの漢字知らないの?」

「えっ、知らないけど、なんで……」

と一条くんは作業を中断し、メモ用紙に字を書いた。



『星海』



「んで、これをひっくり返すと」

「……海星ヒトデ……」

「うん。きっと佐藤くんにいつまでも忘れ欲しくないのと、いつも見守るためにそれを選んだんじゃないか?」



小野寺さんは顎に手を当てながら、小さく笑う。


「あと、ヒトデのペンダントトップの意味は『夢を叶える』『光の象徴』と言う意味がある。ハワイの文化では、スターフィッシュは夜空の星が地上に降りてきたものと言われてるんだ。星には身につけた人をいつまでも輝かせるという意味がある。また、星は光の象徴でもあり、持つ人に明るい力を与え、自信を取り戻させ、 悪を寄せ付けないようにしてくれるそうだ。まぁ、人は流れ星に願いをかけることから、夢を叶えるという意味も込められている。自分が居なくなったら君はすごく、自分を追い詰めると思ったんだろう……」


千里香さんが納得し、微笑みながら答えた。

「……ふっ、あと悪い虫がつかないように、だろうね! 少年!」


「もう、千里香さん!セイカちゃんはただ、僕の事をおちょくって楽しんでただけですよ! でも、そう言われると嬉しいのは事実ですけど……と言うか最初から素直だったらもっと可愛かったんですけどね!」

そう言ったとたん、神棚が少し傾き、お供えのお饅頭三個が僕の頭の上に落ちてきた。


「イタッ、えっ……」


もちろん、痛いわけではない。だが、僕は一瞬何が起きたかわからず、回りを見回す。もしかして……


「じゃ、じゃあ、さっさそく食べよう!……」

「今の無視ですか……」

「佐藤さんってたまに空気読めないですよね……」

「それじゃ、ちゃんと切り分けるから……」



そう、もしかしたら……彼女は近くで僕の事を見守っているかもしれない。

もし、そうだとしたら……たまに僕が落ち込みそうな時、辛い時、助けて欲しい。君は僕よりも強い人だから。



本当に本当にこの約4ヵ月、君に振り回された……まるで流れ星のような子……

僕のこれまでと、これからの人生の中では……一瞬の強い煌めきなのかもしれない。


それだから……すごく楽しかったよ……ドキドキしたしワクワクした。おっかない所もあったけど……


ぜったいに君を忘れない。


ありがとう『星海セイカちゃん』

君に貰ったものは大切にするから。




如何だったでしょうか? 佐藤くんの感情的にな一面は、私は少し恐いと思いましたが人が居なくなってしまうと違う面が見えると言うとこがあると思います。


長い回でありましたが読んで頂き誠にありがとうございます!

また、次回も読んで頂けたら幸いです。

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