1 ユースフルデイズ ~青々とした日々へ~
はじめまして!
多くの作品から、此方を選んで頂き誠にありがとうございます。
はじめて小説を書き至らない所が多々あります。もし、読んで頂けたら幸いです。
私自身ぜんぜんモテないです。ですが服が大好きで書かせて頂きました。
佐藤くんと小野寺さんは私自身が感じた要素をちょいちょいいれております。
もし、読まれた方がいらっしゃってメンズ服に興味を持って頂けたら嬉しいです。
夕暮れ高校の体育館裏……まるで気持ちは浮わついた様にフワッフワッとしている。目の前には憧れのあの子が立っている。周りには誰もいない。けどどこかで運動部らしい掛け声が聴こえる気がした。
「早川三咲さん、ぼっぼっぼっ僕と付き合ってください!!!」
「えっ……」
そのあと無言が続き、彼女は漸く下げている顔を上げた。
「佐藤くん……えっ……なんで私なの……? 私そこまで可愛くないし、どっちかって言うと男っぽいからそこまで、自分が良いと思わないし……」
「そんなことないです! 早川さんは美人だし、聡明だし、僕は……一緒に帰ったあの日から、そう……風で髪が揺れた……」
「あの!………困ります」
彼女はまた俯いた後に言った。
「えっ……」
頭の中でジリリリリという音とカチ、カチ、カチ、という二つの音が頭の中で響く。目の前グルグルと回り、時計の針が逆回転するようにグルグル。
口の中は乾燥し、喉の奥からどぶ臭さが溢れ出た。
「なんか臭い……」
そう申し訳無さそうなニュアンスで言われ脚に力が入らなくなり、足元がぬかるむ様に崩れる。突如開いた体育館の裏口扉から、姿見が出て僕を写し出す。それは小汚ない小汚ない大きなネズミ。そして目の前が真っ暗になった。
僕は少し汗ばんだ体を咄嗟に起こす。ついつい周りを見渡し、窓にうっすら写った自分を見て心なしか安堵した。
「はぁっ! はぁ、はぁ、はぁ…………あっ、朝か……」
射し込む光、まぶしくて少し顔を背ける。そして、さっきから鳴りっぱなしのうるさい目覚まし時計を軽く叩くように止めた。
「かずちゃーん、ごはんやで~!」
母の声が聞こえ、僕はメガネをかけて立ち上がり、扉を開けて、「はーい。すぐ行く~」と言葉を返す。
それから、僕は身支度をした。そして、自分の机に置いてある古い腕時計を持って、「行ってきまーす!」と出掛けた。
カチ、カチ、カチ、カチ。といつも通り動いている。
佐藤一成、16才。身長169センチ、体重58キロ。顔はソース顔と言われるくらいの色黒の濃い顔つき。少し出っ歯。高校生。
趣味はアニメと漫画と音楽と映画とお笑いと読書と。ある程度のサブカルオタク男子。
学生カーストだと最下層の方。東京に引っ越してきて半年は立つ。
ただ……こんな冴えない男にも好きな人がいる。
うちは制服と私服両方を選べる珍しい高校。
僕は基本制服だ。お洒落な服なんて無いし、興味ないし……
あんなのはまるで、人生に余裕のあるヤツたちがやる事だ……と恋愛ゲームのクール主人公のように語ってみてる。
「……くん、な! 佐藤くん」
と呼び掛けと触れられてる感覚で、ふと我に戻った。
日中は丁度良い暖かさ。季節は秋。
「どうした、ボーッとして、で、どうする? 今週土日、うち来る?」
友人である、オカッパ頭の一条くんと話す。
「あっえっ、あっごめん、昨日ちゃんと寝れてなくて……」
「あぁ、あれか、テス勉か、あと二週間だもんね 」
「あっうん。そうそう」
「なんか、そっけないね」
「うん……あっ、いやそんなこと無いよ!」
一条くんは少し怪訝な顔をした。
一条くんごめん……違うんだよ……あぁぁ、早川さん。あなたはいつ見ても綺麗だ…………
僕が気になって仕方ないお方、早川三咲さん。気品があってミステリアスで美しい……
髪型はベリーショートヘアーっていうのかなぁ……でも、ゆるく優しい感じのパーマがかかっていると思う。
身長は僕と同じくらい。スタイルはスラリとして、少し話しかけずらい雰囲気があるボーイッシュな子だが……大人びて美人な御方。普段はメガネを掛けている。声は少し低めで太いというより含みのある落ち着いたカンジ。
頭はスゴく良いらしく、男が近づくより女性陣が近づく。
うちのクラスでは男人気一番、超絶かわいい系の幸村さんがいるが……僕は、たぶん、いや誰よりも早川さんに一目惚れ……心奪われている。
実は最近……漸く早川さんと少しコミュニケーションをとれるようになってきた。そう、きっかけは文化祭の出し物……『ロミオとジュリエット』
僕は最近、兵庫県から転入したばっかりで……
それとは別で僕が一番思うのは、一年生のコミュニケーションが取れていない6月に文化祭をやるのは早くないだろうか……と考えるが、学校の方針だから仕方ない。
それで、その時に早川さんがロミオを演じ、ジュリエットはクラス一番人気の幸村さん。
いわば、美女と美女のロミジュリだ。
僕はたまたまロミオのライバルのティボルト役をやり、関わる事になった。
いや、だって……出演者を募集してる時に誰も手を挙げないんだよ。
後から適当に誰か選ばれた人が可哀想ってのもあるし、やる気がない人がやって、演し物が台無しになるのは悲しいし……僕は役者選びの時に、挙手してしまった。
そう言えばあん時……周りの人たちはどよめいてたなぁ……でも僕は、演劇は嫌いではない。
まぁ、クラスの男たちは芝居をやるのを恥ずかしがってたので、数人の男子しか舞台には上がらなく、あとは裏方だった。
これが俗に言う、思春期というものだろうか。
そんな頼りない情けない男子達。いや……男女含め他のクラスメイトたちより、彼女は芝居に真剣に取り組んでいた。スゴく真面目に。
それゆえに僕たちは立ち回り等の打ち合わせ以外、話す事は無かった。
だが、そんなある日の放課後だ。
これは自分事だけど……実は僕は……微妙な関係な人との沈黙は苦手で……本当に息苦しくなる時がある。
そういう時の僕はだいたい余計な事を言ってしまう。
「早川さん……っ、趣味って何ですか?」
僕は必死に絞り出した質問により、笑顔がひきつってしまった。
早川さんは苦笑いをしながら
「あっ……えっと……ゲームですかね」
「えっ、意外ですね!」
僕は心の声が表に出て、即答してしまった。彼女は少し驚いて、愛想笑いをする。
そういう時、なんか知らないが……お構い無しに、ついつい会話を続けてしまう。
「えっと、好きなゲームとかってあるんですか?」
「えっ、えっと……サンダーレイクエムですかね……」
「あっ! 知ってる! 名作ですよね!あのタクティカルRPG! キャラかっこいいですよね!」
「えっ! そうです! そうです! 佐藤さんやったことあるんですか?」
「あっいや……知ってるだけで……」
「あっ……そうなんですか……」
まぁ、その日はそれで終わった……が、それ以降……
なぜか練習を含め、彼女と話す事が増えていった。
それから練習を積み重ねて……本番は、まぁ……ミスはなく、うまくいった。クラスの打ち上げが終わり、クラスは和気藹々となっている。
たまたまその日……なぜか知らないが、はじめて早川さんと一緒に帰ることになった。
横に歩く彼女。僕たちはちぐはくに歩幅を合わせる。
目を合わせるのは恥ずかしく、流し目で彼女を見てしまう。私服姿の彼女は思った以上に……綺麗というより可愛い。
白の花の刺繍が入ったヒラヒラの服に細目のジーパンにベージュのヒール。大人だと感じた。
それでも、さっきまでの打ち上げの……熱を帯びたテンションが、僕たちにも余韻として残っている。
「佐藤さん! あそこの立ち回りスゴくやりやすくて、良かったです! 佐藤さんが相手役で良かったです!」
「いやいや、早川さんが一緒にやってくれたおかげですよ。ラストのシーンなんて感動しちゃいました!」
「いやいやいや! 私は佐藤さんの役最高だと思いました!佐藤さんと一緒にいる時間、楽しかったです!」
「いやいや、僕も早川さんとやるの楽しかったです!」
それから、二人で『いやいや』を何度も言っていた。
お酒なんかお正月くらいしか飲んだこと無いけど、それくらいの様な……テンションはあがっていた。
彼女のこんなにテンションが高いのは、見たことは無い。笑うと少し男の子ぽくも感じる……が……でも、その姿は年相応の女の子だった。
そんな姿の僕達はまるで……今から始まろうとしてる夏に向けて、はしゃぎ過ぎている子供だ。
普段なら女子とこの距離は気まずさでいっぱいなのに、彼女となら楽しいドキドキだ……
その時、少し風が吹いた。彼女の短い髪が揺れ、なぜかいい匂いがしたような気がした。
柔らかい嫌味の無い優しい香り……ゆるふわな髪の毛。
月の光に照らされた彼女の白い肌。血色のいい赤ピンクの唇。切れ長だが大きな目。
満月の光に照らされた彼女は……まるで綺麗なお姫様だ。
ああ、そっか……僕は彼女に惚れてしまったんだ……
それから僕は、彼女から目が離せない。他のクラスの男子や同じクラスの男子が話しかけようとするが……基本は愛想笑い。話はすぐ終わらせようとする。あんな可愛い彼女を知っているのは僕だけだ。
今日も気が付くと、彼女に目がいってしまう。いつもはその事を意識した瞬間に、周りにバレたくなく目線をそらす様にしている。
だが、今日は違った……
なんと、今日は意識する前に、彼女と目があってしまったのだ。
彼女との距離、約2.5メートル……
彼女はたまたま軽いストレッチで、こちらを振り向いた様だ。その時に目があってしまい、彼女を見ていた事がバレた……そして、固まってしまう僕。
いっそのこと、固まった石のような僕は……どこかに転がりたい。そうすれば、何か変わるのかなぁ……そんなローリングストーン……いや、実際はロンリーストーン。
そんな馬鹿な事を一瞬で考えて、彼女と見つめ合って三秒が過ぎようとした。
すると彼女は少し目線を下げた後……すぐに小さく手を上げた。そのサインが僕に対してのモノであると感じ、直ぐにその返事をしようとしたら……
「早川ちゃーん! 聞いてよ~……」
と言われ彼女は、また前を向き、友人である長瀬さんと話はじめた。
さっきまでの小さな幸せは、ポツリと消えた。
そう、そこには……申し訳ない程度に上げた僕の右手だけが残る。
「うわ、なんか佐藤が手を上げて固まってる……うわ……」
と後ろの方から女子の声が聞こえ、直ぐ様手を引っ込めた。
嬉しい気持ちになりそうな時に限って、いつもそうだ。自身の情けなさに今日も、目が泳ぐ。
そうだった……僕なんて冴えないただのオタク男子で、貧乏人。それに反してたまに彼女が私服で来るとき、個性的な柄の入った服、おもしろいデザインの服を着てくる。だけど彼女からお洒落というものを感じるし、そして育ちの良さも感じる。
僕が勝手に思うに、僕たちはとんだロミオとジュリェット。身分違いにも程がある。昔、有名なバンドの曲であったなぁ……彼女にとって、僕の思いは『大・迷・惑!!』
でも……だから……せめて彼女の友人、話せる人、隣にいても……おかしくない男になりたい……どうしたらいいの……
ふと、そんな事を思っていた今日この頃。帰り、ふらっと本屋に寄った。
まず、何が必要なの? 見た目? かっこよくなるべき……お洒落? カフェとか? いやまず、見た目だろう……やっぱり、服……なんだろうか……
それから何日か経った……僕は数少ない友人の一条くんに……ぼそっと言ってしまった。
「僕どうやったら、かっこよくなれるかなぁ……」
「なに急に、どうかした?」
「いや、あっ、えぇぇっと……」
……どうしよう正直に好きな人がいるからなんて……言えない。何か恥ずかしい……
僕は普段絶対にしない、おちゃらけて言う事に決め、誤魔化すことにした。
「なんか、ハーレム系の主人公みたいなぁぁ、イケメンになりたいんだよねぇ………ほらっ、こんなんだからぁぁ、一生、彼女できないかもしれないぃぃぃ」
と少し動揺で舌がもつれる様に言った後、彼を見た。
少し、一条くんは考えて、
「佐藤くん。お洒落なんて関係ないよ。大切なのは紳士であることだと思うよ」
「いや、一条くんも……まだ彼女出来たこと無いでしょ……」
「……うん……」
そして、二人の間に沈黙が流れた。
それから、また数日が経った。もちろん、彼女と僕の環境は変わらない……毎日毎日、彼女を見てるとドキドキする。
結局、どうすればいいかわからない。スマホで調べても何かしっくりこないし……
本屋に行っても、なんかお洒落の本がいっぱいあって、僕に似合うのってなに? お母さんが買ってくる服(大型スーパーの服)はぜったいなんか違うし…………だれか教えて~! というか……服って値段、どんなもんなの? まぁ、某大きい有名な安い服屋とかでいいのか?
えっ、なに揃えればいいの?
僕はそんな事を考えながら教室の自分の机で、うつ伏せになる。すると、クラスの軽そうな男子グループの羽田くんたちの会話が聞こえた。
「そういえばさぁ、なんか駅前近くのさ、古着屋リニューアルしたんだっけ?」
「あぁ、あそこか、なんかリニューアルしてから一人変な店員さんたまにいるよなぁ!」
「服選んでるとさぁ、絡んできて、服勝手にチョイスしてくる人~。まぁっ、美人と可愛い兼ね備えてるんだけど、たまに圧がすごくて怖いし、変にテンション高いからヤバそうなぁ……」
「あの店員さんぐいぐいくるからなぁ。何か金踏んだ繰りそうでゆっくり見れないんだよなぁ! 茶髪で圧があるからヤンキーぽいけど、パッと見、魔女?」
「わかるわ~魔女。 魔女って、いついるの?」
「いや、不定期だからわかんないんだよなぁ~」
と会話が聞こえた。
えっ、魔女……?
そんな見た目の人が現実にいるんだったら、見てみたいよ。あいつら大袈裟で失礼な奴らだし……というか駅前の近くに古着屋あったんだ。
僕はスマホを取り出し、うつ伏せの状態から顔をあげ調べた。
あっ、ここか!……近くは行ったことあるなぁ……気晴らしに帰り行ってみるか……その寝不足の回らない頭で思った。
改めて……寝不足は恐ろしい……判断力を鈍らせるのだから……
授業が終わり、ついつい駅前に足が傾いた。そして……
来てしまった。
あいつらが言ってたより……普通じゃん……外観は明るく、でも、吊るされたコートやジャケット。世間で言う、格好いいと言われる服を着たマネキンが見える。入り口の左側にはお洒落な自転車が置いてあった。
そんなに入りづらさは無い。が……アレ……? よくよく考えたら、こんな根暗そうなヤツが入ってきたら嫌がるかなぁ……場違いだよな……
こんな……色黒なのに、眼鏡で、髪の毛もボサボサで……出っ歯で、オタク感、満載。
それに比べ、中にいる店員さんたちはちゃんとお洒落だし、お客さんもお洒落に見える。というかお洒落がわからん。
カップル連れもいるし、チャラい人もいる……なんだろう……すごくみんな幸せそうでキラキラしてる……
はっ、なんで……なんで僕は入ろうとしたんだろ……とんだ勘違い野郎だ……
慣れない場もあり、息が早くなる……心臓もドキドキする……
入り口のガラスに自分の立ち姿がうっすら映る。その姿はまるで、ドブネズミだ……あぁ……そっか……僕は違う……
こんな小汚ない男が入ったら、皆さんに迷惑がかかる。皆さんの気分を害するよなぁ。そうだ、帰って昨日の深夜のアニメ……録画してたの見よう……
僕には関係ない世界だ。
やっぱり僕には無理なんだ。
アニメや漫画は僕を助けてくれる。
僕を傷つけない。
彼女との事はきっとフィクションで……あの晩の月と風が、魅せてくれた綺麗な夢を……ただ見つ続けただけなんだ……
僕なんかが彼女と関わるなんて……おこがましい。彼女の周りの人たちも、クラスの奴らもきっと……僕を道化だと思うだろう……別世界の住人だ。
『彼女はお姫様、僕はネズミ……』
そのワードが頭の中に巡り、浸透していく……僕はここまで来て、漸く諦めがついた。
ふと顔を下げ一息つき、目をつぶる。そして、帰ろうと身体を傾ける。
すると、やさしく風が吹いた。まるで風は僕の頬を撫でるように……
えっ、今の……!? いや、たまたま……だろう……でも、そうだ……この香り……あの時……そう、彼女からした香りだ。
今、同じ匂いが。彼女が近くにいるわけないのに……
僕は顔を上げ、見回してみる。
そういえば結局、あの匂い………なんなんだろう?
ふと、頭の中に彼女の言った言葉が聞こえた気がした。
『……佐藤さんと一緒にいる時間、楽しかったです!』
僕はその声のお陰で胸が熱くなり、手を当てる。その高鳴る鼓動を信じたくなった。まるで、さっきまで侵食してきそうな思いがどこかに吹かれて、僕の中に新しい気持ちが上書きされる。
そうだ……きっと彼女のためだけじゃない。自分のためにも頑張ってみよう。今の自分を変えるためにも。
そこからはじめて、ちゃんと彼女と向き合うために。
僕は自分の鞄の持ち手を握りしめ、帰ろうとした足の向きを変える。そして、一歩前に進み出す。
僕は見たことのない世界へ、中へ入った。
つたない文章を読んで頂き誠にありがとうございます。
私は日本のロックが好きでタイトル名や文章等に歌詞、曲名をオマージュしております。
もし、興味を持って今後も読んで頂けたら本当に幸いです。最後まで本当にありがとうございます。