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85/88

84:本当に大変な目に遭いました。




「……ごめん!」


 一瞬、何を謝られているのかと思いましたら、まさかのテオ様のテオ様がとても元気付いていらっしゃいました。

 テオ様が私から距離を取りながら、真っ青なお顔で叫ぶように「ごめん」と何度も言われます。


「私は……汚いですか?」


 こんな聞き方、とても狡いと分かっています。

 言った瞬間に、テオ様が怒ったような顔をされました。


「そんなわけないだろう⁉ ミラベルは……ミラベルは美しい、綺麗だよ」

「それなら、テオ様……上書き、して下さい」

「…………ミラベル?」


 苦しくて、怖くて、痛くて、気持ち悪かった。

 悔しくて、悔しくて、悔しくて。

 誰にも何も言えなくて。


「怖かった! 痛かった!」

「ん」


 ゆっくりと、テオ様が近付いてきてくれました。


「知らない男に、触られた!」

「っ、ん」


 また柔らかく抱きしめて下さいました。


「テオ様以外にされるくらいなら、死のうと思いました」

「…………ぃやだ」


 テオ様の体がビクリとし、ギュッと強く抱き寄せられました。

 痛いほどに、抱きしめて下さいました。


「……私、テオ様としかしてない!」

「ん」

「私、誘ってません!」

「ん」

「何で、笑われないと、いけないのですか⁉」

「っ……ん」


 また、テオ様の体がビクリと震えました。


「何で、私だけが悪者にされるのですか⁉」

「……すまない」

「みんな、大嫌いです!」

「ん」

「テオ様が、私を切り捨てたんだと思った!」

「ミラベル……」


 テオ様が悲しそうな瞳で、私を見つめていました。


「アンジェリカ様の方が、色気があって、大人ですもんね⁉ 国同士の繋がりも出来て、みんな大喜びでしたもんね!」

「ミラベル、嫌な思いばかりさせてごめんね」

「……」

「ミラベル、顔を上げて?」

「……」

「ミラベル、その顔は駄目」


 何が駄目なのかわかりません。

 私は怒っているのです。

 

「ミラベル。ねぇ、私のミラベル。かわいい、ミラベル。いっぱい愛してあげる。私でいっぱいにしてあげる。嫌なこと、ぜーんぶ忘れて、ふわふわで、幸せいっぱいにしてあげる。だから、ずっと、私の側にいて?」

「……はい」


 コクリと頷き、返事をすると、テオ様がパァァァっと光り輝くような笑顔になり、私を抱き上げてベッドへ移動しました。


 流石に、生理中ということもあり、この日は唇を重ね、抱きしめあって眠るだけに留めました。

 テオ様の鼻息が異様に荒い問題は、丸っと無視です。




 監視が無くなったフリーストなお風呂を楽しみ、夫婦の寝室に行くと、部屋の中央に仁王立ちしたテオ様がいらっしゃいました。


「ミラベル、終わったと聞いたが?」

「……どこ情報ですかソレ」

「ザラ」


 ――――ちっ。


「をい!」


 心の中の舌打ちは、どうやら現実世界でも鳴り響いたもようです。


 正直、触れられるのは今も怖いです。

 でも、テオ様と進みたい。

 テオ様と、二人で、求め合いたい。

 だから――――。


「テオ様」


 テオ様の頬を撫で、するりと首に腕を回し、柔らかな唇にそっと私のそれを重ねました。

 



 テオ様は、とても優しく抱いて下さいました。

 嫌な記憶を、歓びの情動だけで上書きするかのように。

 幸せで、温かくて、愛しさが溢れかえり、苦しくなる程でした。


 体をある程度清め、ベッドで二人抱きしめ合いながら、昇る朝日を見つめていました。

 乱れてしまった私の髪を指で()きながら、テオ様が柔らかいキスをしてきます。


「ミラベル、綺麗だよ」

「テオ様も」

「んー? まぁ、そうだけどね。『格好良い』がいい」


 ――――『綺麗』は否定しないのですね。


 唇を尖らせてプチプチと言うテオ様が、とっても可愛らしくて、クスクスと笑いが漏れてしまいました。


「何だか元気そうだね? それなら、もう一回、頑張れるね?」

「え――――」


 いえいえ、無理です、クタクタです。もう朝です。と言いたいのに、口を塞がれ、またドロドロのクタクタにされてしまいました。




 それから三日後、先王の妹様は幽閉され、アンジェリカ様は窃盗の容疑で捕縛後、エフセイ王太子殿下がエゾノイ王国へと連れ帰りました。


 そして、三ヶ月後の八月に、私達の婚約の儀が執り行われました。

 久しぶりにテオ様の瞳の色のドレスを纏いましたら、テオ様がちょっと……いえ、激しく興奮されて、本当に、ほんっっっとうにっ、大変な目に遭いました。




 本日は複数回更新しております。

 次話、とうとう完結でございます(*´﹀`*)


 最終回は、本日21時頃に更新します!



 追記:激的な失念をかましていたので、改稿しております。2022.2.1 笛路

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