84:本当に大変な目に遭いました。
「……ごめん!」
一瞬、何を謝られているのかと思いましたら、まさかのテオ様のテオ様がとても元気付いていらっしゃいました。
テオ様が私から距離を取りながら、真っ青なお顔で叫ぶように「ごめん」と何度も言われます。
「私は……汚いですか?」
こんな聞き方、とても狡いと分かっています。
言った瞬間に、テオ様が怒ったような顔をされました。
「そんなわけないだろう⁉ ミラベルは……ミラベルは美しい、綺麗だよ」
「それなら、テオ様……上書き、して下さい」
「…………ミラベル?」
苦しくて、怖くて、痛くて、気持ち悪かった。
悔しくて、悔しくて、悔しくて。
誰にも何も言えなくて。
「怖かった! 痛かった!」
「ん」
ゆっくりと、テオ様が近付いてきてくれました。
「知らない男に、触られた!」
「っ、ん」
また柔らかく抱きしめて下さいました。
「テオ様以外にされるくらいなら、死のうと思いました」
「…………ぃやだ」
テオ様の体がビクリとし、ギュッと強く抱き寄せられました。
痛いほどに、抱きしめて下さいました。
「……私、テオ様としかしてない!」
「ん」
「私、誘ってません!」
「ん」
「何で、笑われないと、いけないのですか⁉」
「っ……ん」
また、テオ様の体がビクリと震えました。
「何で、私だけが悪者にされるのですか⁉」
「……すまない」
「みんな、大嫌いです!」
「ん」
「テオ様が、私を切り捨てたんだと思った!」
「ミラベル……」
テオ様が悲しそうな瞳で、私を見つめていました。
「アンジェリカ様の方が、色気があって、大人ですもんね⁉ 国同士の繋がりも出来て、みんな大喜びでしたもんね!」
「ミラベル、嫌な思いばかりさせてごめんね」
「……」
「ミラベル、顔を上げて?」
「……」
「ミラベル、その顔は駄目」
何が駄目なのかわかりません。
私は怒っているのです。
「ミラベル。ねぇ、私のミラベル。かわいい、ミラベル。いっぱい愛してあげる。私でいっぱいにしてあげる。嫌なこと、ぜーんぶ忘れて、ふわふわで、幸せいっぱいにしてあげる。だから、ずっと、私の側にいて?」
「……はい」
コクリと頷き、返事をすると、テオ様がパァァァっと光り輝くような笑顔になり、私を抱き上げてベッドへ移動しました。
流石に、生理中ということもあり、この日は唇を重ね、抱きしめあって眠るだけに留めました。
テオ様の鼻息が異様に荒い問題は、丸っと無視です。
監視が無くなったフリーストなお風呂を楽しみ、夫婦の寝室に行くと、部屋の中央に仁王立ちしたテオ様がいらっしゃいました。
「ミラベル、終わったと聞いたが?」
「……どこ情報ですかソレ」
「ザラ」
――――ちっ。
「をい!」
心の中の舌打ちは、どうやら現実世界でも鳴り響いたもようです。
正直、触れられるのは今も怖いです。
でも、テオ様と進みたい。
テオ様と、二人で、求め合いたい。
だから――――。
「テオ様」
テオ様の頬を撫で、するりと首に腕を回し、柔らかな唇にそっと私のそれを重ねました。
テオ様は、とても優しく抱いて下さいました。
嫌な記憶を、歓びの情動だけで上書きするかのように。
幸せで、温かくて、愛しさが溢れかえり、苦しくなる程でした。
体をある程度清め、ベッドで二人抱きしめ合いながら、昇る朝日を見つめていました。
乱れてしまった私の髪を指で梳きながら、テオ様が柔らかいキスをしてきます。
「ミラベル、綺麗だよ」
「テオ様も」
「んー? まぁ、そうだけどね。『格好良い』がいい」
――――『綺麗』は否定しないのですね。
唇を尖らせてプチプチと言うテオ様が、とっても可愛らしくて、クスクスと笑いが漏れてしまいました。
「何だか元気そうだね? それなら、もう一回、頑張れるね?」
「え――――」
いえいえ、無理です、クタクタです。もう朝です。と言いたいのに、口を塞がれ、またドロドロのクタクタにされてしまいました。
それから三日後、先王の妹様は幽閉され、アンジェリカ様は窃盗の容疑で捕縛後、エフセイ王太子殿下がエゾノイ王国へと連れ帰りました。
そして、三ヶ月後の八月に、私達の婚約の儀が執り行われました。
久しぶりにテオ様の瞳の色のドレスを纏いましたら、テオ様がちょっと……いえ、激しく興奮されて、本当に、ほんっっっとうにっ、大変な目に遭いました。
本日は複数回更新しております。
次話、とうとう完結でございます(*´﹀`*)
最終回は、本日21時頃に更新します!
追記:激的な失念をかましていたので、改稿しております。2022.2.1 笛路




