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82/88

82:どこかが変。




 テオ様に、夫婦の寝室に閉じ込められてしまいました。

 特に話すこともなく、私は本を読んだり、刺繍をしたり。

 テオ様は書類を持ち込まれ、執務をされているようでした。


 食事は毎食部屋で取りました。

 廊下にワゴンで用意され、テオ様が部屋に運び込まれます。

 飲み物もテオ様が入れてくれます。

 そして、二人向き合って黙々と食べるだけ。


「ごちそうさまでした」

「ん」

「……」


 とても息苦しいです。




 身支度やお風呂はザラの手伝いが許されたものの、テオ様がお風呂場の中にまで入ってきて、終始監視されました。


「落ち着いて入れません」

「……嫌いでいい」


 返事になっていないと思うのですが、これ以上何かを言っても、同じ返事しか返ってこないのは、一日で学びました。


 夜は同じベッドで、私を後ろ抱きにして寝られます。

 時々、私のお腹を擦っては、肩に近い首筋にキスを落として、スヤスヤと眠られます。


 少しでも触れられると背中がゾワリとし、息が詰まったように苦しくなります。

 心臓が破裂しそうなほどの鼓動を始めますが、テオ様がこれ以上は何もしないと分かってはいるので、次第に落ち着き、私も眠りに付きます。


 


 三日目の朝、目覚めるとテオ様がいませんでした。

 申し訳無さそうな顔のザラが運んでくれた朝食を取り、ソファで本を読んでいましたら、テオ様が戻って来られました。

 久しぶりに、ニッコリと笑われています。


「ミラベル、アイツが死んだよ」

「っ⁉」

「嬉しく、ないの?」


 アイツ……エゾノイ王国の将軍の事でしょう。

 本当にあの日の密約が実行されたのだと知り、背中がゾワリとしました。

 王侯貴族は、治世において、清濁併せ呑む覚悟が必要なのは解っています。

 治世……国を治め、護る為の。

 でも、これは違う気がするのです。


「人の死を、笑顔で喜べはしません」

「そう? 私は嬉しいよ? ミラベルを苦しめるものが、この世からひとつ無くなったからね」

「……そう、ですか」


 テオ様が嬉しそうに微笑みながら、私の方に左手を伸ばして来られました。


「ミラベル」

「っ……」


 先程感じた寒気のようなものが再発し、ビクリと肩を震わせてしまいました。


「――あぁ。そうだったね。私は嫌われているのだったね。浮かれて、忘れていたよ」


 私の様子を見たテオ様が、スッと真顔になりました。

 伸ばしていた手を引いて、ジッと左手の掌を見つめながら、ボソボソと呟かれました。


「左手にも聖鎧(せいがい)を着けようかなぁ。そうしたら、触れても嫌がられないかなぁ」

「テオ、さま?」

「ん? なあに?」


 呼びかけたものの、何を言えばいいのか分かりませんでした。


 あの事件の日から、テオ様が変です。

 どこかが可笑しいのですが、『()()()()』とハッキリとは言えません。

 ただ、妙な違和感があるのです。

 それは、私自身も同じ状態でした。

 

 間違いなく、あの日の事が尾を引いているのですが、何をどうしたら解決するのか、何をもって解決とするのか、まったく分かりません。

 光芒さえも見えないまま、漫然とした日を過ごしました。




 明日は、12時、15時、18時、21時頃の更新で、完結になります!

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― 新着の感想 ―
[一言] ムムム、21時迄待って一気読みするか、一話ずつ読むか。 感想は全話読み終えてからにします。 (^^ゞ
[良い点] セオドリックにも、この件はトラウマになっていたということでしょうか。 もはや厨二病的セリフが幸せの象徴だったかのようですね(´;ω;`)
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