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81/88

81:今後どうしたいか。




 私がどうしたいか、とブラッドフォード王太子殿下に聞かれました。

 きっと、『今後どうしたいか』という事でしょう。


「…………修道院に入りたいです」

「ミラベル……」


 テオ様の顔が見れません。

 とても悲しい声を出されている事には気付きましたが、どうしても、見ることが出来ませんでした。


「ミラベル嬢、そうした場合の、皆の認識がどうなるかは考えたかい?」


 ブラッドフォード王太子殿下が少し心配そうな声で訪ねてこられました。

 皆の認識。それは、よくよく考えました。


「はい」

「聞いても?」

「……きっと、今回の事は、事実で……事後で…………私は穢れていると、思われるでしょう」


 議事堂内が静寂に包まれました。

 声が震えそうです。

 ゆっくりと深呼吸して、話を続けました。


「っ……実際に、私は穢されました。私は、セオドリック殿下に相応しくはありません」

「穢れてなどいない! 穢されてなどいないっ! 未遂だったと――――」

「セオドリック!」


 陛下のお声が議事堂内に響き、テオ様がグッと黙られました。


「ミラベル嬢を追い詰めるな」

「っ、私は――――」

「ミラベル嬢、もう少し、ゆっくりと考えなさい。その時間はある。いいね?」

「っ、はい。陛下」




 今の会話は内密にするように。部屋に戻って良いが、事が終わるまでは誰とも面会をしないで欲しい。とブラッドフォード王太子殿下に言われました。

 全てが終わったら、今回の件については、国王陛下とエゾノイ王国王太子殿下の名において、内容の訂正を行うとも約束してくださいました。


 了承して、皆様に挨拶をし、外で待っていてくれたザラとリジー、そして、ずっと側にいてくれたロブとともに部屋へ戻りました。


「お嬢様、お疲れのようですが、何があったのですか?」

「私からは話せないわ。侍女長から通達が出るまで待っていてちょうだい」

「「……かしこまりました」」


 部屋に戻り、誰も通さないで欲しい。とお願いして、ソファに体を投げ出しました。

 



 部屋に戻って何時間か経った頃、部屋のドアがノックされました。

 外が薄暗くなって来ているので、ザラかリジーが灯りを点けに来てくれたのだと思いました。


「開いているわよ」


 ドアがゆっくりと開き、そこから現れたのは、仄暗い顔をしたテオ様でした。


「っ!」

「…………行くの?」

「え?」


 テオ様の透き通るようなアクアマリンの瞳が、段々と濁って行っているような、そんな気がしました。


「修道院に、行くの?」

「……はい」

「いなくならないで、って言っただろ!」

「返事はしていません」


 すとん、とテオ様から表情が抜け落ちたように見えました。

 怒らせてしまった、と思った次の瞬間、テオ様が私を無理矢理に抱きかかえ、夫婦の寝室に入り、私をベッドの上にそうっと、置きました。


「きゃっ、テ、テオ様っ⁉」


 テオ様が全ての鍵を閉め、誰も入っては来られないようにすると、のっそりと私に近付いて来ました。


「テオ様っ、何を……」

「この部屋にずっといて。私がミラベルの世話を全部する。私以外、この部屋には来させない。もう怖いものは来ない。だから、いなくならないで……嫌いでいいから、いなくならないで」


 ベッドの横に立ち、俯いて懇願するように、そう言われました。

 私の話を聞こうともしないテオ様に、何だかイライラしてきました。


「本当に、心の底から嫌いになりますよ」

「構わない。私は愛しているから」

「私は、嫌いです」

「…………ん」


 その日から、私とテオ様の変な日常が始まりました。




 次話も明日21時頃に更新します。

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