81:今後どうしたいか。
私がどうしたいか、とブラッドフォード王太子殿下に聞かれました。
きっと、『今後どうしたいか』という事でしょう。
「…………修道院に入りたいです」
「ミラベル……」
テオ様の顔が見れません。
とても悲しい声を出されている事には気付きましたが、どうしても、見ることが出来ませんでした。
「ミラベル嬢、そうした場合の、皆の認識がどうなるかは考えたかい?」
ブラッドフォード王太子殿下が少し心配そうな声で訪ねてこられました。
皆の認識。それは、よくよく考えました。
「はい」
「聞いても?」
「……きっと、今回の事は、事実で……事後で…………私は穢れていると、思われるでしょう」
議事堂内が静寂に包まれました。
声が震えそうです。
ゆっくりと深呼吸して、話を続けました。
「っ……実際に、私は穢されました。私は、セオドリック殿下に相応しくはありません」
「穢れてなどいない! 穢されてなどいないっ! 未遂だったと――――」
「セオドリック!」
陛下のお声が議事堂内に響き、テオ様がグッと黙られました。
「ミラベル嬢を追い詰めるな」
「っ、私は――――」
「ミラベル嬢、もう少し、ゆっくりと考えなさい。その時間はある。いいね?」
「っ、はい。陛下」
今の会話は内密にするように。部屋に戻って良いが、事が終わるまでは誰とも面会をしないで欲しい。とブラッドフォード王太子殿下に言われました。
全てが終わったら、今回の件については、国王陛下とエゾノイ王国王太子殿下の名において、内容の訂正を行うとも約束してくださいました。
了承して、皆様に挨拶をし、外で待っていてくれたザラとリジー、そして、ずっと側にいてくれたロブとともに部屋へ戻りました。
「お嬢様、お疲れのようですが、何があったのですか?」
「私からは話せないわ。侍女長から通達が出るまで待っていてちょうだい」
「「……かしこまりました」」
部屋に戻り、誰も通さないで欲しい。とお願いして、ソファに体を投げ出しました。
部屋に戻って何時間か経った頃、部屋のドアがノックされました。
外が薄暗くなって来ているので、ザラかリジーが灯りを点けに来てくれたのだと思いました。
「開いているわよ」
ドアがゆっくりと開き、そこから現れたのは、仄暗い顔をしたテオ様でした。
「っ!」
「…………行くの?」
「え?」
テオ様の透き通るようなアクアマリンの瞳が、段々と濁って行っているような、そんな気がしました。
「修道院に、行くの?」
「……はい」
「いなくならないで、って言っただろ!」
「返事はしていません」
すとん、とテオ様から表情が抜け落ちたように見えました。
怒らせてしまった、と思った次の瞬間、テオ様が私を無理矢理に抱きかかえ、夫婦の寝室に入り、私をベッドの上にそうっと、置きました。
「きゃっ、テ、テオ様っ⁉」
テオ様が全ての鍵を閉め、誰も入っては来られないようにすると、のっそりと私に近付いて来ました。
「テオ様っ、何を……」
「この部屋にずっといて。私がミラベルの世話を全部する。私以外、この部屋には来させない。もう怖いものは来ない。だから、いなくならないで……嫌いでいいから、いなくならないで」
ベッドの横に立ち、俯いて懇願するように、そう言われました。
私の話を聞こうともしないテオ様に、何だかイライラしてきました。
「本当に、心の底から嫌いになりますよ」
「構わない。私は愛しているから」
「私は、嫌いです」
「…………ん」
その日から、私とテオ様の変な日常が始まりました。
次話も明日21時頃に更新します。




