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75/88

75:寒い。




******




 ザラとリジーに薬を塗りたくられ、厚手で柔らかい夜着を着せてもらいました。

 ベッドの上でぼーっと外を眺めていたら、ロブが部屋に入って来ました。

 ぐしゃぐしゃの花束と、ノックスを連れて。


「ノックス! まぁ、大きくなって!」

「はい、殿下がそこら辺で千切ってた花束です」


 ロブが近付こうとして、止まってくれました。

 私がビクリと身体を震わせたことに、気が付いてしまったのでしょう。

 ロブがザラに花束を渡し、ノックスのお尻を押して、こちらに行くようにと指示していました。


 ノックスはベッドに前足を乗せ、クリクリとした瞳で、私を静かに見つめてきました。

 鼻筋を撫でると、嬉しそうに目を閉じ、ヒュゥゥンと可愛らしい鳴き声を出しました。


「うふふ、かわいい」

「わふん!」

「あら、かわいいは嫌なの?」

「わふぅぅん!」


 何だかノックスとお話ができているような気がして、楽しくなりました。


 花束はザラが花瓶に活けてくれて、サイドボードに置いてくれました。


「綺麗。……まとまりないけど」

「そうですね。長さもバラバラで、センスゼロでしたわ」

「あはは、ひどぉい! ……っ」


 何でもないことを話して、笑って、顔の痛みに気付いて、思い出して、震えて。


「…………ねぇ、ザラ」

「はい、何でしょうか?」

「……寒いの」

「そうですね。…………今日は、とても寒いですね」

「うん。…………ザラ、抱きしめて?」


 ザラに縋るように手を伸ばすと、ザラが泣きながら柔らかく抱きしめてくれました。

 ザラは温かくて、抱きしめられていると、穏やかな気持ちになれて、ウトウトとしてしまいました。


「眠られて大丈夫ですよ。ずっと側にいますから」

「ん……」


 目が覚めたこの日から、私はずっと部屋に籠もっていました。

 ザラとリジーだけが部屋に入り、ロブは休憩と睡眠以外、ずっと部屋の外で警備をしてくれているようでした。




 部屋に籠もっている間、何度かテオ様の訪問があったようですが、全て断るように、報告もしないで、と頼んでいます。


 あの事件の日から数日で始まる予定だった月のものが、三週間経っても来ず、私は軽いパニック状態になっていました。


 夜は、どうしても目が冴えて眠れず、ただ窓の外を眺める日々が続いています。

 だって、眠ったら…………怖いことが起こるから。


「……ミラベル、入ってもいい?」

「…………」

「ミラベルの顔が見たい。話したいことがあるんだ」

「…………」


 この数日、夫婦の寝室の方から、ノックとテオ様の声が聞こえてきますが、返事はしません。

 いつも、返事をしなければ、入って来ません。

 ですが、今日は違いました。


 ガチャリと鍵が開けられ、テオ様がゆっくりとベッドに近付いて来ました。


「っ! や……こないで」

「ミラベル、久しぶり」

「…………てお、さま?」

「ん?」


 憔悴しきっていて、それでも無理矢理に笑っている。そんなお顔をテオ様がいました。

 テオ様が、ベッドから少し離れた場所に、書き物机のイスを置いて、ドサリと倒れ込むように、座られました。


「……ミラベル、月のものが来ていないんだよね?」

「っ! 何で……」


 ――――知っているのですか。


「医師には見てもらった?」


 ブンブンと首を横に振りました。

 だって、医師は、男性だから。


「私の子が出来たかもしれないんだよ?」

「ぃゃ…………」

「っ……嫌、なの?」


 テオ様が、泣きそうなお顔になってしまいました。


「ミラベル……ごめんね。全部全部、私のせいにしていいからね?」


 テオ様が、膝の上に置いていた手をギリリと握りしめて拳を作り、深呼吸を繰り返していました。


「ミラベル、……ミラベル・アップルビー伯爵令嬢。その方を、重要参考人とし、二国間で行われる協議の場において、証人喚問をすることとなった。時は来週末。場所は、当王国の議事堂にて行う。必ず出頭するように」


 協議。

 証人喚問。

 重要参考人。

 出頭?

 証言するという事?

 ……何を?

 …………将軍にされた事を?




 次話も明日21時頃に更新します。

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― 新着の感想 ―
[一言] お月さまより此方の方が早いから、両方読むはめになっております(^_^;) 嫌だけど我慢してロブにまかせている殿下も辛いですよね。 早く皆が幸せになれますように★*☆♪♪
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