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60:君子危うきに近寄らず。




 四阿からは見えないところで騒いでいた人達が徐々に近付いて来ました。

 どうやら四阿の裏手にある道を通って中庭に入って来たようです。


「ここは王族のみが利用出来る場所ですので、どうか――――」

「無礼者! 私も王族よ!」


 ――――王族?


「あっ! セオドリックさまぁ、お会いしとうございましたわ!」


 テオ様と良く似た色合いのプラチナブロンドをサラリと靡かせ、随分と欲情的なデザインの真っ赤なドレスを纏った、絶世の美女とも言えそうな方が足早に近付いて来られました。

 私よりも頭半分ほど背が高く、とても艶めかしい体型と雰囲気の方でした。


「我は貴様を召喚した覚えはない。去れ、煩き者よ」


 女性に向かって『貴様』はちょっと酷いのでは……と思ったのですが、無駄な心配だったようです。


「私はセオドリック様の婚約者ですから、ここを去る必要は無いですわ!」

「……え?」


 なんにも響いていませんでした。

 それどころかテオ様のお言葉を完全にスルーし、テオ様の腕に抱きつかれました。

 あれは昔見た『お胸たゆん・ぽよん』技ですわね。

 押し付け、見せ付け、おっぱい大好きなテオ様を簡単にホイホイする技です。


「……きもちわるい」

「まぁまぁ、照れているのですね? 存外ウブなのですね!」


 ――――ウブ。


 ウブとは、と考えていましたら、ザラがストールを、リジーは温かいお茶を新たに用意してくれました。

 テオ様が横からいなくなったせいなのか、少し寒く感じていたのでちょうどよかったです。


「ありがと」

「いえ。お部屋に戻られますか?」

「……もう少し様子を見たいわ」

「かしこまりました」


 それから十数分ほどテオ様とグラマラスな女性の言い合い……というか、一方通行の主張しあい? を眺めていましたら、急にグラマラスな女性がこちらを指差しました。


「まぁ、セオドリックさまったら。あんな乳臭そうな小娘を誑かすなんて、罪深い人っ。愛人にされますの? それにしても無礼な方ですわね。先程から私の存在を無視して挨拶もしないなんて。不敬罪にしてしまおうかしら?」

「おい、コイツを牢屋にブチ込め!」


 テオ様が騎士に物騒な事を命令していました。


「まぁ! セオドリックさまったら! 私の事をそんなに気にかけてくださるのね。挨拶をしなかったくらいで牢屋に入れるのは可哀想ですわよ?」

「「……」」


 えっと、さっき貴女が『不敬罪』と言いませんでしたっけ? あと、テオ様の『ブチ込め』は貴女の事だと思います。……とは、言っては駄目なのでしょうね。たぶん。

 

 この女性はテオ様と別の方向で言葉が通じない方のようです。

 取り敢えず、遠くから眺めていたいですわ。

 ええと、前世で何か良い名言がありましたね……。


 ――――あ! 君子危うきに近寄らず!




 次話も明日21時頃に更新します。



 下の方に短編のリンクも置いています。

 良ければ∠(`・ω・´)敬礼✧

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