56:ずっと側に。
※性的表現あり。……いや、わりと毎回ですが。
「――――はい」
顔を強張らせ、でも瞳には希望の光を宿しているテオ様の頬に手を添えて、ゆっくりと返事しました。
覚悟なんて、とうの昔からしています。
ただ、慣例に倣わねばと思っていただけなのです。
返事をした瞬間のテオ様の顔は一生忘れられない、忘れたくないと思いました。
黒と青の美しい瞳を見開き、ぎゅうっと瞑り、目蓋をゆっくりと押し上げるように開くと、目尻を下げるように微笑み、「ミラベル」と私の名前を呟くと、またもやギュムッと目を瞑りました。
テオ様の凛としたお顔がくしゃりと歪みましたが、それは嬉しくて叫び出しそうなのを我慢する、そんな笑顔だったのです。
テオ様が耳を真っ赤に染め、私の首筋に顔を埋めてハフゥとゆっくり息を吐かれました。
「もう、いま、死んでしまいたい」
か細く震えるような声でそんな事を言われるとは思わず、ちょっとびっくりしましたが、直後に「幸せすぎる」と付け加えられたので、ホッとしました。
――――あぁ、私は本当に愛されているのですね。
クスクスと笑いながら「出来れば、お互いがシワだらけになっても、共に生きたいですわ」そう伝えると、テオ様がガバリと頭を上げて、ちゅ、と啄むようなキスをされました。
「勿論だっ!」
「煩いですわ」
「このタイミングで煩いとか言うな……」
「「……ふっ」」
二人でくすくすと笑い合ったおかげで、さっきまでの妙な緊張感や緊迫感みたいなものが解れました。
「ミラベル……」
テオ様が蕩けそうなほどの笑みを溢しながら、またキスをして来ました。
テオ様と間近で視線が合う度に心臓がドクンドクンと激しく鼓動します。
頬に触れられ、首筋を撫でられ、鎖骨にキスを落とされ、膨らみを優しく愛撫され、声が上擦ります。
「ふ、んぁっ」
「……っはぁ。ミラベル、いいね?」
「もぅっ、何度聞くのですか……」
「ん、何度でも。聞かせて?」
「はい。覚悟はできております」
何度目かの覚悟を伝えると、テオ様が本当に嬉しそうに破顔されるので、何だか積極的な気分になってしまいました。
「テオ様……早く来てください」
「っ! ミラベルっっ!」
――――あぁ、とうとう、なのですね。
「ミラベル、頑張ったね。ありがとう」
「……は、いっ」
額に汗をかき、少し堪えたような表情のテオ様が、労るように私の頬を撫でて下さいました。
重なり合い、繋がり、昂り、体温を分け合う事が、こんなにも多幸感を生むのだと知りませんでした。
苦しみや痛みはありましたが、それ以上に幸せな気持ちが勝った事に驚きました。
テオ様には言えませんが、前世での初体験はただただ痛いだけのものだったのでちょっと不安だったのです。
もしかしたら、心から愛し合う二人がお互いに高め合う事が大切なのかもしれない……なんて、ぼぉっとする頭で考えました。
全てが終わったあとは、二人で抱きしめ合い、テオ様の甘い囁きと匂いに包まれて、穏やかに眠りにつきました。
いま、間違いなく、人生で一番幸せな瞬間です。
――――テオ様、愛しています。ずっとお側にいさせて下さいね?
遅くなりました!
今回、ちょいエロです。
ムーンライトノベルズ版ではもうちょっと踏み込んでます。
次話こそは明日21時頃に更新します。




