53:壊れたレコードとサム。
テオ様とのんびり、ちょっとイチャっとピクニックをした後、王城へ帰る事にしました。
帰りの馬車にロブが乗り込んで来ないので、不思議に思いました。
「え? ロブはどうするの?」
「私は馭者の隣に座ります」
「? うん、分かったわ……」
ロブが馬車のドアを閉めようとしましたが、何とも言い知れぬ違和感と妙な寂しさが背中を駆け巡りました。
「ロブ、今朝からずっと変だけど……どうかしたの?」
「何でもありません」
「言葉使いも変だし。ねぇ、どこ――――」
「言葉使いは、他の者と揃えるようにと我が言った」
急にテオ様が大きめの声で被せて話し、私の腰に手を回すと、抱き寄せるようにして座席に誘導されました。
テオ様に邪魔しないでとお願いしようとしたその時には、馬車の扉は既に閉じられてしまっていて、何だかショックです。
「あ、ロブ……」
「ミラベル、何故そんなにアイツを気に掛ける。今、目の前にいるのは、私なのに…………」
「え、テオ様?」
テオ様が苦しそうな顔をした後、向かい側の座席に座り、「……少し寝る」と言って目を瞑ってしまわれました。
私はただ寂しく馬車の窓から夕陽が沈むのを見続けました。
王城に着いて、テオ様がエスコートはしてくださいましたが、一言も話さずに自室に戻って来てしまいました。
テオ様はエスコートしていた私の手を振り解くと、自分のお部屋の方に行かれました。
「あ……」
「ミラベル様、セオドリック殿下より伝言で、『我は晩餐に参加せぬ』との事です」
先程まで一緒にいたのに、何故か侍女のリジーを通しての伝言。
「殿下は何故あんなに不機嫌になってしまったのかしら」
「え……ミラベル様、お気付きになっていらっしゃらないのですか⁉」
「何を?」
リジーが驚愕し、ザラはやれやれと溜め息を吐き、二人だけで何かもしょもしょと話し始めてしまいました。
一人寂しくソファに座り、ぼーっとしていましたら、二人に食堂に行く時間だと急き立てられました。
「なによ……ほったらかしにしてたのは二人じゃないの」
「はいはい、申し訳ございませんでした」
ザラに適当に謝られながら食堂に向かい、テオ様以外の王族の皆様と晩餐をいただきました。
「えっと……なにコレ」
「夜着でございます」
「透け……」
「夜着でございます」
「防御力が……」
「夜着(略)」
「大丈夫です! 攻撃力は凄くあります!」
お風呂から上がったら、薄ピンクのベビードールのような夜着を着せられました。
隠したい所はギリギリ隠れているけれども……。
レースとオーガンジーで出来たスッケスケの透け透けな超ミニの夜着。
何故コレを着せるのか、いつもの防御力の高い綿の分厚いワンピースはどうしたのかと聞きたいのですが、ザラは壊れたレコードよろしく「夜着でございます」のみ。
リジーに至っては、何故か鼻の穴を膨らませて、両手でサムズアップしています……。
――――身の危険しか感じないのだけれど⁉
「ザラ……ベッドが……」
「清掃中でございます」
「ベッドの木枠しか無いのだけれど?」
「清掃中で(略)」
「この短い間で何があったのよ⁉」
「清掃(略)」
「大丈夫です! 夫婦の寝室のベッドは広いです!」
――――何がどう大丈夫なの⁉
壊れたレコードとサムズアップに背中を(物理的に)押されて、隣にある未だ足を踏み入れたことの無かった夫婦の寝室へと押し込められました。
次話も明日21時頃に更新します。




