表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

51/88

51:女は度胸。




******

 



 目覚めの一発、眼球へのキラキラご尊顔攻撃。

 寝顔が眩しいほどに美しいとか、どんな特技でしょうか。


 昨夜は遅くまでおしゃべりしていたので、ちょっと遅めに起きてしまいました。

 テオ様は一昨日から徹夜されてありましたので、昨日はちゃんと寝たのでしょう。

 そして、どうやら今日はお寝坊さんのようです。


 そっとテオ様の胸に耳を寄せると、トクントクンと緩やかな鼓動が聞こえて来ました。

 規律正しいその音に段々と目蓋が重くなって来て、自然と眠りに落ちてしまったようです。




 ――――落差が激し過ぎますわ。


 再度目を覚ますと、テオ様が私の胸を(まさぐ)っている最中でした。


「睡姦は犯罪ですわよ?」

「人聞きの悪い事を言うな!」

「では、この行為は何とお呼びすればよろしいのですか?」

「…………愛しき妖精の体が冷たかったのでな。温めていた。あれだ、手当て療法」


 ――――なるほど?


「ひーたひ! ひたひひたひぃ!」 


 ()()()()テオ様の形の良い鼻が真っ赤になっていらっしゃいました。




 テオ様を部屋から追い出し、着替えと化粧を済ませて部屋から出ると、ロブが廊下にいました。


「ロォブッ、お、おはよう」


 昨日の事を思い出してちょっと恥ずかしくなり、声がひっくり返ってしまいました。


「おはようございます」

「? ……うん」


 何となく、ロブの様子が変です。が! 昨日のことを考えれば、余所余所しくもなるかと納得して、さささっと歩いて食堂へ向かいました。


「我が赤き果実よ、此処へ降り立ち、共に大地の恵みを糧とせん」


(意訳:ミラベル、ここに座って、朝ごはんを一緒に食べよう)


 テオ様が自分の隣の席に座れと言っています。普通は向かい側で食べるのですが?

 そして、何故か使用人全員がニコニコしています。微笑ましいモノを見るような、生ぬっるーい笑顔です。

 これ、断ったらテオ様のご機嫌がドン底になりますよね? 座るべきなのですよね? 嫌な予感しかしていなくとも。


「は……い、失礼いたします」


 ――――近い近い近い!


 十人は座れそうなほど大きなテーブルで肩を寄せ合うほど近くに座られました。

 わざわざイスを動かして。


「赤き果実よ、何が食べたい?」


 朝食はビュッフェ形式になっており、目の前に焼き立てのパンやスコーン、サラダ、スクランブルエッグ、ベーコン、フルーツなどが沢山並んでいます。

 どうやらテオ様が自ら取り分けて下さるようです。


 前世の記憶に引っ張られ、もったいないと思うのですが、余った分は使用人達の朝ごはんに追加されるとの事なので、気にするなと言われました。

 食べ残しを、と申し訳なくなるのですが、やはりそれもこの世界では普通の事なのですよね。

 何年経っても慣れません。


「えぇっと、取り敢えず全部少しずつお願いいたします。お替りは後で考えます。あ、パンは二つで」

「ふふっ、相変わらず良く食べるな」


 ぽそりと小さな声で食欲旺盛さを笑われてしまいました。

 朝ごはんはちゃんと食べないと、日中の行動が辛くなるのですよと言っても、テオ様はクスクスと笑うばかりでした。


「いじけるな。ほら、口を開けて」


 取り分けて下さった私のお皿を何故か自分の前に置いたテオ様が、サラダのミニトマトをフォークに刺して、私の口元に持って来られました。


 ――――こっ、これは!


 あーん、しろという事なのでしょう。

 人目の多いこの場所で、付き合いたてのバカップルのように……あ、一応付き合いたてでしたわ。

 取り敢えず、ミニトマトに罪は無いですし、食べましょう。テオ様の眉毛がへにょんとなってきて、何だか泣きそうですし。


 ――――女は度胸ですわ!




 次話も明日21時頃に更新します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ