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46/88

46:聞いてませんけど⁉

 



 湖畔に着き、テオ様にエスコートしてもらいつつ馬車から降りると、むせ返る程に甘く柔らかな空気と景色が広がっていました。

 キラキラと透き通る湖と、色とりどりに咲き誇る花々、全てが光り輝いて見えます。


「素敵なところですねぇ」

「……ん」


 辺りを見回しつつテオ様に話し掛けますが、またもや適当に返事されてしまいました。

 少し歩いた所にある大きな木の根元に毛布のような敷物をし、軽食や飲み物の準備をしてもらいました。


「我らは崇高なる議題について討議する。下僕共はこの地より去れ」

「えぇと、二人きりで話したいから、なるべく遠くにいて欲しいとの事ですわ」

「「畏まりました」」


 ちょと無理矢理な意訳で誤魔化しましたが、『崇高なる議題』の意味が全く解りませんでした。

 皆がある程度距離を取ったので、テオ様にお茶を渡しつつ、何をお話したいのかと尋ねました。


「ん……」

「テオ様?」


 馬車を降りる少し前からずっとこの調子で『ん』や『あぁ』しか話されません。

 受け取ったお茶も、香りや味を楽しむ事もなく、ぐいっとお酒でも煽るかのように一気飲みして、スッとカップを返してきました。

 せっかくの綺麗な場所で、ピクニックで、初デートで、心が弾んでいたのに……。


「テオ様、帰りましょう」

「っ、は⁉ 何故…………」

「だって、楽しくないのでしょう? 私とデートする気はないのでしょう?」

「ちが……う」


 何が違うというのでしょう。

 馬車から降りてからは、こちらも見ず、返事も適当で、二人きりになってもそれは変わらなくて。

 こんなの、デートじゃ無い!


「ミラベル……」


 ふにゅりと唇が重なりました。

 テオ様が腰を抱き寄せ、首の後ろに手を添えて、そっと押し倒してきました。

 敷物の上に寝そべった私にテオ様が覆い被さってきて、さらに唇を重ね、執拗に貪られました。


「……誰にも渡さない」


 キスの合間に真顔でぽつりと洩らされた言葉に、背筋とお腹がゾクリとしました。

 

 テオ様の手が頬を撫で、胸を通り過ぎ、脇腹を撫で、スカートをたくし上げようとした所で、ハッと我に返り、テオ様の左手首を掴んで拒みました。


「何故止める」

「っ……皆の目がありますから」

「そう、だな……」


 納得した! 良かった! と思った瞬間、ぐらりと視界が揺れ、テオ様に抱きかかえられていました。

 テオ様が私を横抱きにしたままぐんぐんと進み、湖畔の側にひっそりと佇んでいる別荘へと入ってしまいました。


 別荘はクリーム色の壁紙と紺色のフカリとした絨毯で、本来ならば落ち着いた雰囲気で、窓辺から静かに湖畔を眺めるような場所なのでしょう。

 ですが、私達が入った瞬間、エントランスにいたメイド達が慌てて奥に引っ込んだり、別荘内の安全確認をしていたのであろう騎士達が敬礼したりと、雑然かつ騒然としていました。


「テ、テオ様、こちらは」

「大丈夫だ。元々泊まる予定だったから部屋の準備はされている」


 ――――聞いてませんけど⁉


 テオ様に止まって欲しいと頼みましたが、嫌だと言われてしまいました。

 人前でお姫様抱っこなど、とても恥ずかしいのですが。




 泊まる予定だったらしい部屋に入る時、テオ様がちらりと廊下にいた騎士やメイド達を見渡されました。


「こちらから呼ぶまで誰も近づくな。護衛は部屋の外にロブ一人でいい」


 そう言うと、バタンとドアを閉めました。

 ゆったりと歩いて、私をベッドに下ろすと、先程の続きが……執拗なキスが再開されました。




 ここらへんから、全年齢版と大人版で『あはんで、あはん』な違いが出始めます。


 次話も明日21時頃に更新します。

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