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45/88

45:窓を流れる景色と音を存分に楽しんでいます!

 




 ガタガタと馬車の軋む音、馬の短い(いなな)き、蹄の音、それらに耳を傾けつつ、ピクニックの目的地である王家が所持する湖畔に向かっています。


 ピクニックをする湖畔は、王都から馬車で二時間ほどの距離にあり、都会に近いわりには自然豊かで静かな場所だと聞いています。

 初めて行く場所なので、とてもワクワクして窓を流れる景色と音を存分に楽しんでいます!

 …………。

 ……。

 ……嘘です。全然楽しくありません。


 ()()()あまりにも空気が重く淀んでいるので、窓を開けて空気の入れ替えをしているだけです。

 ぶっちゃけますと、ちょっと肌寒いです。


「「……」」


 取り敢えず、何か話そうと思い、口を開きました。


「テオ様――――」

「『テオ様』? お嬢、いつからそう呼ぶように?」

「えっ……と、その、先日から」

「…………ふぅん」


 ロブが目付き鋭く聞いて来たくせに、返事は適当で、何だかモヤッとしました。


「何よ?」

「別に何でもないっすけど。…………あー、まぁ、チョロいなとは思いました」

「ぉぃ」

「チョロいぃぃ⁉ 私がっ⁉」

「ぉぃ」

「はい。チョロッチョロのチョロですね」

「なん――――」

「おい!」


 なんですって! と叫ぼうとしましたら、テオ様が両手で私の頬を包み、自分の方を向かせ、ガッツリ濃厚なキスをして来ました。


「ふ…………んぅっ」

「ん、ミラベル、他の男を見ないで?」

「っ……ひゃぃ」


 人前でこのような行為をしてしまった事や、顔が真っ赤になっているだろう事があまりにも恥ずかしくて、テオ様の肩に顔を埋めました。

 テオ様はそれを感じ取って下さったのか、私の顔を隠すように抱きしめて下さいました。


「ロブ、その方はただの護衛であろう?」

「……はい」

「ならば弁えろ」

「っ、はい」

「ミラベルの乱れた姿を見ることは許さん。降りろとまでは言わん。馭者の隣に移動せよ」

「…………承知、しました」


 ガサゴソと人の動く音と気配がした後、一度馬車が止まり、すぐに発車しました。


「もう大丈夫だ、二人きりになった」

「……いや、大丈夫とか言われましても。そもそもテオ様が大丈夫じゃなくされたんですが?」


 テオ様の肩に顔を埋めたままで話していましたら、テオ様の手の動きが怪しくなってきましたので、サッと離れて向かい側の座席に移動しました。


「……何故、離れる」

「身の危険を感じましたので」

「「……」」


 しばらく無言になった後、テオ様が大きな溜め息を吐かれ、私の方に手を伸ばして来られました。


「ミラベル、こちらに座れ。後ろ向きは危ない」

「……はい」


 テオ様の横に戻ると、何故か私の頬を無言で撫でてきました。

 湖畔に着くまでの三十分、気が向いたように親指で下唇をなぞっては、また頬を撫でる。ただそれだけをされていました。

 話し掛けても、気もそぞろに「ん」とか「あぁ」とかだけしか返事をしてくださいませんでした。

 何だか変だなと思いましたが、変な事はせずに大人しく撫でているだけだったので、特にツッコミもせずそのままにしました。




 次話も明日21時頃に更新します。

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