表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/88

22:ニギニギ、ニギニギ……グッ!

 



「…………へぇ」


 殿下はこの五年間、精力的に執務や社交をし、友人もできた、普通に話していた、と仰られました。


「へぇ、とはなんだ! 我がファクルタ(能力)ースを侮るなよ? 我は闇に侵されてなお光を失わず、凡庸なる者共と対話し、時には我に近付けるようをコントラク(契約)トゥスもしたのだぞ」

「………………へぇ」


 今のどこに普通の会話があったのか、説明を求めたくもありますが……面倒ですので放置します。


「それで、私はまた殿下の()()()に戻されたのですか?」

「通訳者……まぁ、なんだ…………そうだが?」


 殿下がなぜが俯き気味でチラチラとこちらを伺ってきます。

 私より背が高いのに上目遣いってどうやっているんでしょうか。


 ちょっとかわいいぃぃいえいえ、絆されてはなりませんっ!

 あと、近いです、すんごく近いです。もうちょっと離れて座られて下さい。

 何なら向かい側とかに!

 ちょ、なんで肩をくっ付けてくるんですか。


 妙にグイグイ近付いてくるセオドリック殿下の胸を押し返しながら話を続けました。


「せっ、正式にですか?」

「正式、というか、元々だ」


 ――――ん? 元々?


 ちょっと良く意味が解りませんでした。

 元々とはどういう意味なのでしょうか。


「我と赤き果実の契約は切れてはおらぬ」

「……ずっと婚やく……ちがった。通訳者のままだったと?」

「なぁ、そろそろ『通訳者』と言うのは諦めたらどうだ?」


 何を急に標準語でしゃべってるんですか。イラッとしますわね。

 ではなくて!

 今、ものっすごく爆弾投下されましたわよね?


「五年前に、私はお役御免いたしましたよね?」

「いや? 赤き果実が契約に逆らい我に歯向かって来たから一時的処罰を与えただけだが?」

「…………」

「全く。イジけて五年も役目を放棄しおって。我の口添えがなければ婚約者のままではいられなかったのだぞ? 少しは感謝しろ」


 ――――はぃ?


 なんでしょう。イラッとします。『コイツ殴りてぇ』と思ったのは私だけなのでしょうか?


 ()()()()()()()()()()()右手をニギニギして拳を作っていましたら、声が届くか届かないかのところに控えていたロブが何やら変なジェスチャーをしていました。


「おい、赤き果実の護衛が変な動きをしているぞ?」

「殿下に言われたくございません」

「ぬあっ⁉ 我のどこが変なのだ! 我は完璧ではないか!」


 ――――見た目だけは、ですね。


 殿下が登場しながら宣っていた内容は……まぁまぁ同意できてしまいました。


 『この世の全ての光を反射するかのように眩いプラチナブロンドの長い髪』はとても美しいです。

 羨ましいほどにサラサラです。


 『重厚かつ洗練された漆黒の軍服と王族のみに着用が許された豪奢なマント』はとてもお似合いですわね。


 『悠然と庭園を歩んでいた』姿はとても男らしかったですし、『庭園で咲き誇っているどの花よりも美麗』だとは……まぁ、思いましたが!

 ぶっちゃけ、見た目だけは好みではありますが……。


「……中身が非常に残念ですものね」

「は? あの護衛か?」

「いえ。殿下が、です」

「んなぁっ⁉ 我っ⁉」


 殿下が本気で驚かれていましたが、どこに驚く要素があったのでしょうね?

 あと、ロブは何のジェスチャーをしているんでしょうか。


 ――――ん? 手? グーパーグーパー、バツ?


「あ! 殿下を殴ったら駄目?」


 ロブはぶんぶんと上下にヘッドバンキングしていました。


「ふおぉぉ⁉」

「殿下、煩いです」

「はぁぁ⁉」


 ――――煩いなぁ、もぉ。




 次話も明日21時頃に更新します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ