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20:召喚状




 初春の肌寒さで目覚め、のっそりと起き上がりました。

 あまり見覚えの無い内装を見回して、王城の休憩用の部屋で籠城していたことを思い出しました。

 どうやらそのまま眠ってしまったようです。

 備え付けの洗面所に向かい鏡を見ると、目蓋が赤らみ腫れぼったくなっていました。

 ソファに座り、冷水にひたしたタオルで目蓋の腫れを落ち着けていると、扉がノックされロブの声が聞こえてきました。


「お嬢、起きられましたか?」

「……えぇ。ロブ、帰らなかったの?」

「お嬢の護衛ですからね」

「っ、ありがとう」


 お腹は減ってないか? 朝食を部屋に運び込んでいいか? と聞かれたので、お願いしました。ぶっちゃけペコペコです。


「お嬢……その、王子殿下からこちらを預かってます」


 朝食と共にロブが気まずそうに手紙を差し出して来て、「それから――――」と続けて、セオドリック殿下と話した内容を教えてくれました。

 ロブの身分や私との関係、私に本当のパートナーがいないことなどを話したそうです。


「そう。大丈夫よ」


 ロブは至極申し訳無さそうにしていましたが、元々サロンでロブは護衛だと話そうとしていましたので、特に問題は無いのです。

 ただ、この手紙……いえ、召喚状と言ったほうが良さそうなモノの方が問題な気がします。


『 我が赤き果実


  我の呼び掛けに応え、赤き高貴なるロサが永遠に咲き誇るガゼボにその姿を表せ!

  ソル(太陽)と時計の二針が天頂で出逢いし時刻、我の真意を知ることとなろう!


  セオドリック』


(意訳:ミラベル、赤バラがモチーフの四阿に来てください。お昼の十二時にお伝えしたいことがあります。セオドリック)


 で、合っているとは思います。意訳の能力が落ちていなければ。

 日が一番高いのは十二時ではありませんが、時計の針が……とか(のたま)っていらっしゃるので、たぶんお昼の十二時のことでしょう。




 殿下の手紙のせいなのか、胸が苦しくて朝食が進まないわ……と思っていましたら、デビュタントボールのドレスのままだった事に気付きました。

 ただ単にコルセットで苦しかっただけでした。


「ですよねー。お嬢、風邪引いても、腹痛くても、絶対に飯モリモリ――――」

「煩いわよっ! 着替えたいから誰か呼んでちょうだい」

「はいはい」


 ロブに着替えたい旨を伝えると、以前私の専属になっていた侍女のリジーが来ました。


「久しぶりね。()()よろしくね」

「ミラベル様、本当にお久しぶりです。とてもお美しくなられましたね!」


 リジーが「どれを召されますか?」と持って来た数着のデイドレスなどを見て、お母様もグルか、と落胆してしまいました。

 だって、どう見ても全て私が領地から持って来て、タウンハウスに置いているはずのドレスや小物だったのです。

 ただ帰るためだけの着替えなら何着もこちらに移すはずがありません。


「……深い緑のドレスにするわ」

「畏まりました」


 デイドレスに着替えて、セオドリック殿下の指定した四阿がある王城庭園にむかいました。

 何があるのか、何を言われるのか、予想がつきませんが、どうせアホ……げふん。突拍子もないような事を言い出すはずです。

 まぁ、今回はお付き合いして差し上げましょう。




 次話も明日21時頃に更新します。

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