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16:いざ、デビュタントボールへ。


 


「まぁ! ミラベル! 淡い黄色のドレスとても良く似合っているわ!」

「ありがとう存じます」


 サロンに入るとお母様が笑顔で立ち上がって褒めて下さいました。

 お父様やお兄様、お義姉様もよく似合っている、とても大人っぽく見えると言って下さいました。


「あら? 一緒に届いたトルマリンのジュエリーは付けなかったの?」

「はい……少し色合いなどが合わないかと思いまして」

「そぉ?」


 お母様は何となく不服そうでしたが、それ以上はとやかく言わず、直ぐに笑顔に戻られ、成人に認められる今日の日を祝って下さいました。




 両親と別の馬車に乗り込み、王城に出発です。

 デビュタントボールには基本的に両親と共に呼ばれるのですが、パートナーがいる場合は親とは別の馬車で向かう慣わしです。

 パートナーがいなく、親兄弟にエスコートを頼む場合は同じ馬車で向かうという謎のルールがあります。


「はぁぁぁ、帰りたい」

「まだ出発したばかりよ、ロブ」

「別に旦那様がエスコートでも良かったはずなのになんで、おれ……私、なんですか」


 何故かお父様が拒否し、何故かお兄様は別の夜会に出席するからよ、と何度言えばいいのかしら。

 言う度に何らかの作為を感じて不安になってしまうのに。


「いや、怪しすぎますって。普通、デビュタントボールの日に夜会やる家とか無いでしょう⁉」


 ――――そう、普通はありえない。


 デビュタントボールの日だけはどの貴族も夜会もお茶会も控えるはずなのに。

 エスコートをロブに頼んだと言うと焦りだしたお父様とお兄様、妙にあの青い宝石を気にするお母様、異様なほどに気合を入れて準備するザラ。

 立場が上のこちらからエスコートをお願いしても断りまくってくる領地の家々。

 何もかもが怪しすぎます。

 馬車の窓から段々と近付いてくるライトアップされた王城を見つめながら、ロブと二人、大きな溜め息を吐いたのでした。




 馬車が王城に到着すると、ロブが馬車からサッと降りて、卒なくエスコートしてくれました。


「ふふっ、とても板に付いてるじゃない」

「鬼執事殿にスパルタ教育されましたからね」

「まぁ、鬼だなんて。怖いわぁ」

「ははは、何を仰られるやら。ミラベル嬢のご指示でしょうに」

「うふふふ」

「はははは」


 馬車を降りながらロブと小声で嫌味の応酬と乾いた笑い声を溢していましたら、足早に近づいて来る人物が見えたので、慌てて居住まいを正しました。


「ミラベル!」

「…………殿下。お久しぶりでございます」


 五年前のあの日以来、久しぶりに目にするセオドリック殿下は、もう少年の頃の面影は無くなっているようです。

 背の高さはあまり変わられてはいないようですが、体格ががっしりされた事と、チラリと見える筋張って大きい手指などがとても男らしく感じます。

 キラキラと美しいお顔は相変わらずで、黒い軍服が妙に似合っており、目が奪われてしまいました。

 ちょっと悔しくなりました。……ちょっとだけ、ですよ?


 ――――あ、ガントレットはそのままですのね。




 殿下、やっとこさチラッと出番が来ました!


 次話も明日21時頃に更新します。

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