第五話「なにか嫌な予感がするぜ」
「ここがイント領か。雰囲気が暗いな。」
「そうですね・・・」
トュレイマンとティシアはイント領に来ていた。
トュレイマンの言うとおりに街の雰囲気が暗かった。
人は暗い顔をしており、地べたに座っており
「助けてくれ・・・」「もういやだ・・・」
と聞きたくはないような言葉が聞こえてくる。
トュレイマンがティシアを見て
「そろそろ元気に出してくれねぇか?」
「無理です・・・」
ティシアが顔を俯けながら答える。
「何でだよ?」
とトュレイマンが聞くと、ティシアが一息つき
「イント領はサドル領と条約を結んでいるんです。お互いに助け合おうって。なのに
何の相談もなしにこんなことをしています。サドル領は信頼されてないんですよ・・・」
とティシアが説明した。それ見てトュレイマンは呆れた顔をして
「考えすぎだろ。」
と言った。
「まぁとりあえず住民に話しでも聞いてみるか。」
トュレイマンは地べたに座っている住民の前に行った。
住民は俯いている。
「ひいいもう少し待ってください。あと少し、あと少しです。」
住民は震えている。
「何言ってんだあんた。何かと勘違いしてないか?」
と住民が顔をあげてトュレイマンを見ると震えが止まった。
「取立てじゃないのですか。良かった。あなたは一体・・・?」
「僅かな光って知ってるか?」
「僅かな光!?」
住民は大きな声を上げた。
「声が大きいぜ。」
とトュレイマンが言った。周りの住民がトュレイマンを見ている。
「ついに動き出したんですね。依頼を出したかいがあった。」
「なんだ、あんたが依頼した人か。」
「そんで何が起きているんだ?」
「ある日、突然、税が重くなったんです。私達には払うのは到底無理な額です。」
「ある日、ねぇ。」
とトュレイマンがわざとらしく間を置いて言った。何か、考えているようだ。
今までだまっていたティシアが
「払わなかったらどうなるんですか?」
と恐る恐る聞いた。
「城に連れてかれるのです。帰ってきた者は一人も・・・」
「そうですか。」
とティシアが暗い顔をした。
「あ・・あ・・・れは・・・・」
と住民は怯えている。住民が見ている方向を見ると兵士がいたのだ。
こっちを見るとこっちに来た。
「旅の者か、何のようだ?」
と兵士が冷静に聞いてきた。トュレイマンは普通にしている。
「別に・・・んにしてもこの街は雰囲気が暗いな。笑う門に福来る、だぜ。
あんまり暗いと僅かな光と言う名をした不幸が来るぜ。」
「!!」
兵士が驚いている。
「貴様、何者だ!」
兵士が怖い顔をしてトュレイマンに聞いた。しかしトュレイマンはまったく動じない。
しばらくトュレイマンは黙っていた。
「僅かな光を持ってきた者さ。」
とトュレイマンが冷静に答えると兵士が槍を構え
「死ねぇ!」
とトュレイマンを突こうとしてきた。トュレイマンは軽々しく避ける。
「そんなにあの世の風景が見たいのか。ではお望みどおりに見せてやるよ。」
トュレイマンがそう言うと剣を出し、兵士を斬ろうとしたが
「殺しはいけません!」
とティシアが叫んだ。
それが聞こえたのかトュレイマンはチッと舌打ちをし、剣をしまった。
「帰りな。城に。」
トュレイマンが兵士を見ながら言った。睨んでいる。
「わ、分かった。」
兵士がそう言うと走って行ってしまった。
「さてこれからどうしようかな?」
とトュレイマンがふざけた顔で言った。わざとらしく。
「夜に潜入する、というのがいいんじゃない?」
ティシアがトュレイマンに提案した。
「そうするか。すまねぇが夜までここに居ていいか?」
「どうぞ中に入ってください。」
二人は住民の家の中にいた。
トュレイマンはイスに座り、ティシアもイスに座っていた。
「トュレイマンが読書なんて柄に合いませんね。」
「これはただの本じゃない。奥義書だ。」
「おうぎしょ?」
「奥義書って言うのは・・・説明した方がいいのか?」
ティシアが頷いた。
「奥義書って言うのはな、技の出し方が載っている本だ。」
「技?」
「瞬動!跳高!って言うやつさ。」
「ああ。」
「剣には流派って言うのがあるのは教えたよな。
流派によっていろんな技がある。その技が載っているのがこの本だ。」
「なるほど。」
「俺が読んでいるのは斬鉄流の奥義書だ。」
「そうなんですか。」
そして夜になった。さすがに夜とあって暗い。
「静かですね。」
「さて潜入と行くか。」
二人は城に向かって歩きだした。
「さてどう潜入するかな?」
とトュレイマンが言っている。
トュレイマンが言うとおり潜入が難しくなっている。
城の周りに囲いがあり、入り口は一つしかない。入り口は正門へと続いており、
正門には兵士が立っている。
「そうですね。あまり人には見つかりたくないものです。」
ティシアが兵士を見ながら言った。
「囲い・・か。」
とトュレイマンが囲いを見ていった。
トュレイマンがいきなりティシアがお姫様だっこした。
「な、何をするんですか!?」
「こうするんだよ!跳高!」
とトュレイマンが言うと高く飛んだ。
トュレイマンとティシアは囲いの上に着いた。
「しゃがんで歩けよ。」
「分かりました。」
囲いの壁は低く、普通に歩いているとばれてしまう。
しばらく歩いていると、囲いと城が接している場所に着いた。
「この窓から潜入できそうだ。鍵もかかってねぇし。」
トュレイマンが窓を静かに開けた。
トュレイマンとティシアは城の潜入に成功した。
奥義書の説明をします。
トュレイマンの言うとおり、流派によっていろんな技があり、
その技をが載っているのが奥義書です。