第三話「僅かな光本部って言うけど俺にとっては大事な家」
ティシアが指差す方向には白い物体が置いてある。
タイヤが四個付いており、前にドアがあり、ドアには窓がついている。
後ろの部分は荷台になっている。
いきなりドアの窓が開き、
「随分、おそ・・・うわっ。誰だそいつ。」
と男が顔を出してきた。金髪でツンツンの髪をしている。
「こいつは土産だ。」
とトュレイマンがわざとらしく言うとティシアが
「土産ってなんですか?」
と怒りながらいった。
「もしかしてお前・・・失敗か。」
「ああ、相手がやり手だった。」
金髪の男は溜息をついた。
「詳しい事は後で聞く。」
と男が言うと、窓がしまった。
「後ろに乗りな。」
「分かりました。」
二人は白いもの荷台に乗った。
しばらくすると白いものが動きだした。
「きゃあ。」
とティシアが悲鳴を上げた。
「確かにこれに初めて乗った時は俺も驚いたからな。」
「今、疑問がたくさんあるんですけど。」
「答えられるだけ答えてやるよ。」
とトュレイマンが言った。
「この白いもの、何なんですか?」
「ああ、このマシンは軽虎と言う。僅かな光、独自のマシンさ。
最高速度50kmは出る。」
「50km!?速いですね。」
「そうだな。」
「それでは次の疑問に行きますね。
トュレイマンが使っていた瞬動!とか跳高!って何ですか?」
「さすが姫さん。剣の流派の事も知らないのか。説明すると長いから面倒だな。」
「ちゃんと教えてください!」
ティシアが怒りながら言う。
「分かったよ。剣にはいろんな流派って言うのがあってな。流派によって色々違うんだ。
流派によっていろんな技がある。俺は斬鉄流だけどな。」
「まだイマイチ分かりません。」
「あんた、剣、使わないから覚えなくていいだろ。」
「そうですね。そしてこの軽虎に乗っている金髪の人、誰なんですか?」
「レンデスの事か?あいつも僅かな光の一員だ。
俺と同じ時期に入った。相棒って所かな。」
「そうなんですか。」
「もう一つあるんですけど・・・」
「何だ?」
「僅かな光ってなんですか?」
「簡単に言えば殺し屋。」
「殺し屋!?」
「ああ。でも殺すのは貴族だけだ。」
「どうして貴族だけなんですか?」
「腐った貴族の力で民は苦しめられている。
あいつらは自分だけ良い思いができるように民に重税をかけたり、労働強いたり、だ。
そんな貴族を殺したい、そんな思いが集まってできたのが僅かな光だ。」
「そうなんですか。でも今日は、守りに来たって・・・」
「そういう場合もあるって事さ。良い政治をしている貴族もいる。
でもな、そういう事を妬む屑が良い貴族を殺そうとしていることもあるわけだ。
それを防ぐためにも、護衛にも当たるってわけだ。」
「分かりました。丁寧に教えてくれてありがとうございます。」
とティシアは礼をした。
「見えてきたぞ。僅かな光本部。」
見えたのは大きな城だった。
「大きいけど私の城よりは小さいかな。」
「しょうがねえだろ。山の中なんだから。」
ドアからレンデスが出てきた。
「さて説明してもらおうか。」
レンデスが凄い剣幕にトュレイマンに近づいていった。
「ボスに話すからついでに聞いといてくれよ。」
トュレイマンがレンデスを見ながら言う。
「ついてきな。」
トュレイマンがティシアを見ながら言う。
ティシアが連れていかれたのは王座のある部屋だった。
玉座には人が座っていた。
男はちょんまげであり、黒の着物を着ていた。
「ボス、今、帰還いたしました。」
レンデスが敬礼をしながら言う。
「見たことのない顔面がいるがどういう事だ。」
「それについては・・・」
トュレイマンは今まであった事、全て説明した。
「そんな事があったのか。」
レンデスは深刻そうな顔をしながら言う。
「ほう、面白そうじゃな。よし、手伝って差し上げよう。」
ボスがどこからか出してきた扇子で自分の顔を扇ぎながら言う。
「ありがとうございます。」
とティシアが礼をしながら言う。
「しかし、この場所に居るからには仕事をしてもらないとならんな。」
「その件についてはこの男の監視をさせてどうでしょうか。」
レンデスがトュレイマンを指で指しながら言う。
「この件と言い、このトュレイマンは問題ばかりを起こします。
だからこの女が監視していればトュレイマンの行動は問題なくなるかと。」
「ほう、良い案じゃ。そうしよう。トュレイマン、良いだろうな?」
「はいはい。分かりました。」
トュレイマンが面倒くさそうに言う。それを見たレンデスは溜息をついている。
「今日はもう寝ると良い。明日、依頼を受けさせる。」
とボスがトュレイマンを見ながら言う。
「そういう事だティシア、行くぞ。」
「どこに?」
「俺の部屋だよ。」
トュレイマンが歩き出すと
「待ってよ。」
とティシアが歩き出した。
歩いているいる途中
「そういえば自己紹介がまだでした。
レンデス・ミルーシェと言います。」
「あ、どうも。私はティシア・メルスと言います。よろしくお願いします。」
二人が自己紹介をしていた。
「それでは。部屋が向こうなので。」
とレンデスは一礼していった。
ティシアがトュレイマンを追って入った部屋は汚かった。
大きい窓があり、ベットが一つあった。剣などが壁に飾られていた。
「なんですか!この部屋は!」
「必要な事がすぐにできるようにしてある。それだけだ。」
トュレイマンが寝ている?と思われるベットが中心に物が配置されていた。
「私の寝る所がないじゃない。」
「俺のベットで寝ればいいじゃねえか。俺はイスで寝る。」
「そんな事したら、トュレイマンに悪いじゃない。」
「構わない。だいたいお姫さんがベット以外で寝れるのか?」
「そ、それは・・・」
「決定。それではおやすみさせてもらうよ。」
とトュレイマンが帽子を下げて顔を隠した。
「で、でも。」
ティシアが言ったが、返事は無かった。
「ね、寝息も聞こえない。」
とティシアが驚いた。
ティシアが少し抵抗を持ちながらベットに入った。
ティシアは目を覚ました。眩しい日差しがあった。
ティシアはふとイスの方を見る。トュレイマンの姿はなかった。
外から大きな声が聞こえてくる。トュレイマンの声だった。
ティシアは外に出て行った。
「ちっ瞬動!」
とトュレイマンが言うと
「そんな技で不意を衝こうというのか。」
とレンデスがすぐに後ろを向き剣を受け止めていた。
「レンデスも剣使いだったんだ。でも今、持っているのは木刀です。」
ティシアが興味深そうに見ていた。
「相変わらずやるな。」
「当たり前だ。お前にに退けを取るわけはいけない。」
トュレイマンが必死に剣を押しながら言う。
レンデスが普通に言った。
二人は距離を取った。
「新技を考えたんだが使わさせもらうよ。」
とレンデスがそう言うと剣を構えた。
「いいぞ、と言ってねぇぞ。」
とトュレイマンは言っているが、防御の体制に入った。
そしてレンデスが走り出した。レンデスはトュレイマンを斬ろうとした。
トュレイマンは剣で塞いだ。しかし
「確かに当たったはずだ。まさか・・・」
「そのまさかだよ。」
とレンデスが言い、トュレイマンの腰を斬った。
「ぐはっ。」
と言いトュレイマンが倒れた。
「痛てーな。少しは手加減しろよ。それで今のはどういうカラクリなんだ?」
「幻鏡斬、とでも言うかな。相手の前に見えない鏡を作り、相手に幻を見せる技だ。」
とレンデスが息を切らせながら言う。
「その見えない鏡は自分の体を見えなくするのか?
普通に考えたらお前が写る訳ないしな。」
「そうだ。」
とレンデスが短く返事した。
「トュレイマンー。」
とティシアが走ってくる。トュレイマンの近くに来た
「大丈夫?」
とティシアがトュレイマンに聞く。
「問題ない。」
とトュレイマンが言うが
「嘘はいけません。」
「ばれてたか。」
そしてティシアが腰を見ると
「腫れてますね。待ってて。」
「こんなの放っておけば・・・」
とティシアがトュレイマンに腰に手を置くとティシアの手が光った。
「!?」
レンデスが驚いていた。
「痛みがなくなった。どういう事か説明してもらえるか?」
トュレイマンがティシアの顔を見ながら言う。
「えーとこれはね・・・」
人物の紹介と技の解説をします。
レンデス・ミルーシェ
性別・男
23歳
身長167cm
トュレイマン唯一の友達。真面目な性格だが口が悪い。
トュレイマンと同じ剣使いだが我流である。
ボス
僅かな光のボス。男だと言う以外何も分からない謎の人物である。
技の解説
技名〔読み方〕流派
解説
瞬動〔しゅんどう〕斬鉄流
一瞬で動く技。敵の後ろに回るなど、斬鉄流の基本の技。
跳高〔ちょうこう〕斬鉄流
高く跳ぶ技。
幻鏡斬〔げんきょうざん〕我流
レンデスのオリジナルの技。
敵の前に見えない鏡を作り出し、敵に幻を見せ、背後から斬る技。なお自分の作り出した鏡は敵の体を無視し、自分だけ写る。