表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

She is a cat

『人間が突然別の生き物になってしまったように振る舞うという事件が多発しており、現在緊急対策チームを結成し……』


どのチャンネルを見ても、カリナのように心が人間ではなくなってしまった人達のニュースで持ち切りだ。変化してしまった人間の数こそは多くないものの、世界は大混乱。事情を知っている俺ですら、まだまだ動揺しっぱなしだ。


「……」

『……』


当の本人? は猫会議というやつだろうか、何も喋らずに猫同士集まってじっとしている。猫はカリナの事を猫だと、仲間だと認識しているらしい。一体どうなってしまうのかとため息をつきながら神様猫を見やるが、もう頭の中に声は聞こえてこない。神様はもう宿っていないのだろうか。


「……!」


突然四つん這いになっていたカリナが立ち上がり歩き出す。猫になったはずなのに平然と二足歩行をし始める妹を怪訝な目で見ていると、彼女の向かった先は人間用のトイレであった。平常時が四つん這いになったりと習性的には猫だし人間の言葉も解さないが、記憶やらは人間の方が優先されているらしい。この分なら、俺がトイレやらお風呂やらの世話をする心配はなさそうだ。決して残念ではない。


「とりあえずコミュニケーションを取らないとな……ほら、もっとエサ食えエサ」

「……♪」


トイレから出てきて再びじっとするカリナに、彼女が好きだったチョコレートを与えてやる。好物であるということも覚えているのだろう、すぐに俺の手からチョコレートを奪い取って、きちんと包みも剥がして食べ始めた。猫好きな妹と暮らしているうちに、俺も少しは猫の手なずけ方がわかるようになっている。この調子で餌付けをしていけば、兄に威嚇するということは無くなるだろう。


「……」


しばらく会議をしていた猫達だが、カリナが立ち上がり外に出るのか玄関に向かい、当たり前のように靴を履いて外に出てまた四つん這いになる。猫達はカリナをリーダー格だと思っているのだろうか、神様だった猫も含めてその後をぞろぞろとついていく。きっと散歩に行くのだろう、危ないから俺もこっそりついていこう。


「え、何あの人……何かのプレイ?」

「ひょっとして、ニュースでやってたやつじゃないか? 人間が突然別の生き物になったって」

「お菓子あげたら食べるかな?」


不自然でしかない四つん這いでの散歩をするカリナを見て、周囲の人間は不気味がる人もいたが、面白がって写真を撮ったり、餌を与えようとする人すらいた。猫になってしまったとはいえ、カリナは可愛い女子中学生だ。割と受け入れられるものなのだろう。


「フーッ! フーッ」

「うわ、なんだあのババア。気色わりぃ」


見た目は本当に重要だ。女子大生に可愛いと写真を撮られているカリナとは対照的に、猫になってしまった50代くらいのおばさんは、周囲の人達に否定的に受け止められている。あのおばさんは近所で有名な猫好きのおばさんだ。カリナと同じように、人間よりも猫の方が好きだったのだろう。


「……」

「お、おい、どうしたカリナ?」


しばらく猫達と一緒に散歩を満喫していたカリナだったが、突然その場に倒れこむ。何人かにエサを貰っていたが、まずいものでも食べさせられたのかもしれない。俺は慌ててカリナを抱きかかえると、人間用の病院に駆け込み、医者に事情を説明して診て貰うことに。




「……」


家に戻り、猫に囲まれてすやすやと眠るカリナ。倒れてしまった原因は食べ物ではなく、四つん這いで歩いていたせいで疲れて身体が動かなくなってしまったという非常に単純なものであった。心は猫だとしても身体はやはり猫なのだ、四足歩行は難しいに決まっている。そのうち筋肉がついて平然と歩くようになるのだろうかとため息をついていると、カリナが目を覚ます。


「……♪」

「お、おう? 急に懐いたな」


目を覚ますなり四足歩行は厳しいと学習したのか二足歩行でこちらに駆け寄って来て、その場でゴロゴロし始める。これは猫の遊んで欲しいというポーズだ。先程倒れてしまったカリナを助けたことで一気に懐かれたのだろうか。


「よしよし、いい子だからな、あまりはしゃぐなよ」

「……♪」


とりあえずカリナの頭を撫でてやると、嬉しそうに更にゴロゴロし始める。他の猫達もリーダーが認めたからか、俺から逃げることなく擦り寄ってきて、俺は妹と猫に囲まれる。こうしていれば妹も猫も可愛いのだが、可愛いだけではない、妹も猫も気分屋で面倒な生き物なのだ。しばらく皆を撫でたりして遊んでやっていたが、皆して飽きたのか急にそっぽを向いて天井をじっと眺め始めたり、その場で寝始めたり。妹も眠たくなったらしく、ソファーに転がってすうすうと寝息を立て始めた。


「さて……寝ているうちに対策を考えないとな。猫は妹がしつけてるからエサさえ与えればいいとして……そういえば国も対策チームを立ち上げてるんだったか。確認してみるか……」


全国的にこういったケースが多発しているのだ、どこのテレビ番組もその特集をやっているだろう。テレビをつけると、丁度カリナのように他の動物になってしまった人達が映し出されていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ