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喧嘩してわかること・下

全ての物質には、生物非生物関わらず魔力が宿る。

悪魔時代に俺が導き出した答えの一つだ。

そして、魔力にはそれぞれ特徴がある。

人には人の、悪魔には悪魔の、魂には魂の。

そして、金属には金属の特徴がある。


さらに、魔力の特徴を読み切れば、脆い場所が見えてくる。

あとは、自分の剣が一番丈夫な場所で、相手の剣の一番脆い場所を叩くだけ。

やろうとしてることは、王家に代々伝わってきたらしい、レオン王子のお気に入りと思われる剣の破壊だ。

まさに悪魔の発想。思いついてもやるべきではない。

せめて仮の技名でも叫んで警告しておこう。

不意打ちでこれをやるのは俺の良心が耐えられない。


「おおぉぉお!!『ウェポンブレイク』!!」


「なにっ!あっ、あぁぁぁぁぁ!!」


うん、自慢の剣が綺麗に真っ二つ。


「あっ…あぁ…うっ…ひぐっ…うぇぇ…」


「…その…すまない…まさか泣くほどとは思ってなかった。」


「すまないだと!そんなんで済むわけあるか!!母さんから、入学祝いに譲り受けた剣なのに…ぐすっ…」


親からの贈り物か…あー、うん。それはまずい。

親がいない孤児の身でも、親みたいに慕う人はいるからその気持ちは分からんでもない。

というか、さっきフォルビア様を馬鹿にされた時に同じように考えた気もする。


院長は俺の父親がわりだったからな。フォルビア様を馬鹿にされたとき、親同然の人の大事なものが汚された気がした…のかもしれない。

あるいは、俺自身も心のどこかでフォルビア様を信仰してたのかもな。

まぁ、他人の気持ちは読めるくせに、自分がどんな気持ちだったのかがわからないのは、まだ俺が悪魔の魂に引きずられてる証拠だろう。


いや、今そのことは重要じゃない。ここまで泣いている人をほっとくのは印象が悪い。

とはいえ、親の贈り物壊した本人が王子を慰めていいのか?

というか、今からでも王子と仲良くなれるのか?

とにかくやってみないと始まらない。どこかで聞いた、『喧嘩するほど仲が良い』って言葉を信じろ。


「あー…その、王子?俺には母親とかいないけどよ、お前の母さんからの貰い物が大事だってのは、なんとなくわかる。だから、壊してしまってすまない。だけど…」


「だけど…?…ぐすっ…なんだよ…。」


「だけど、俺にだって親代わりに育ててくれた人はいるし、その人の大事な物を悪く言われると傷つくんだ。だからお前がフォルビア様を大したことないって言ったことにすごく腹が立った。父親みたいにしてくれた院長の信じてる神様だからさ。」


「……そうだったのか…。悪かった。孤児には親のことを誇りに思う気持ちなんて、分からないと思ってた。どうせ誇れる家柄もない奴だって見下してた。お前の親の大事な物を、悪く言ってしまった。」


「別にいい。もう怒ってないから。むしろ俺の方が取り返しのつかないことをした。」


「うんうん、水と土の相性はよし、雨上がりにはよく固まるってね。丸く収まってよかったよかった。」


「丸く収まってねぇよ…王子の剣壊しちゃったし…って!俺やばいことしてるじゃん!俺、お前の母親に処刑されちまうのか!?」


「…あははっ…大丈夫さ、母さんはそんなに心の狭い人じゃない。それに、指示を出したのは学園長だろう?相談してるところは見てたからさ。もし首が飛ぶなら学園長のクビさ。」


あぁ、こいつも切り替えが早い奴だ。

大事な剣だったはずなのに、もう冗談が口に出せる。


「ぐぇっ…レオン君。どうか、どうか勘弁してください。王様には言わないで…。」


「王家に代々伝わる大事な剣が折れたんだぞ?報告はする!絶対だ!」


「どうかご容赦ください…お願いします…」


よし、俺も乗っかろうかな。


「でも、学園長責任取るって言ったよな?」


「あっ!言った!でもやだー!クビにしないでー!!」


「クビになるかは父さんが決めることだけどな。」


「そんなー!ご無体なー!」


まぁ、王様の許可はあったらしいし、クビにはならないだろ。


「あぁそうだ!グレイ!」


「なんだ?王子。」


「俺のことはレオンと呼べ。お前は、俺の友にふさわしいだけの誇りを持ってると認めてやるよ!大事な剣を壊したんだから、もちろん断らないよな!」


「あぁもちろんだ、レオン。これからよろしくな。」


誘い文句の生意気さはすぐには治らなさそうだったけど、こうして俺に一人目の友達ができた。

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