やっぱ魔術科に入りてぇよ!
「まぁまぁグレイ君落ち着いて。王族相手にここで喧嘩するのはまずい。」
「じゃあどうすればいいんだよ学園長!」
「大丈夫。大怪我さえさせなければお咎めはなしさ。幸いにも身代わり宝石は残ってる。今から闘技場を使って白黒つければいいさ。ここはそういう学園だからね。」
「なるほど。じゃあ模擬戦だ。もちろんレイフォードさまも逃げたりしないよな?」
「もちろん。貴族でもないポッと出の孤児程度に負けるはずがないからな。」
「じゃあ決まりだね。僕が闘技場の予約入れてくるよ。グレイ君は武器を貸すからこっちにきて。」
「おう。」
…ふぅ。
さっきはついキレてしまったが、俺はもともと落ち着きやすいタチだ。
もうそんなには怒っていない。
でも、命の恩人である院長がフォルビア様を信じてるのに、それを馬鹿にされたら流石にイラッとくるだろう?
だから本当に、ちょっとだけ、イラっとしただけだ。
心のどこかではまだキレているかもしれないけど、それはそれとして学園長の話を聞けるくらいには落ち着いてきている。
「なぁ学園長。あいつレイフォードって名乗ってだけど、どんな名前なの?」
「…彼はレオン・レイフォード。本人が言ってたけど王族で、第三王子って奴ね。グレイ君、せっかくだし一発痛い目見せてやってよ。」
「いいのか?そんなこと言って。さっきはキレてああ言ったけど、俺は心の底から王族と喧嘩したいわけじゃないぞ。」
王族を敵に回したら確かに目立つけど、ついてくるのは悪評だろうからな。
俺の望むモテモテライフからは遠ざかってしまう。
現金なやつと言いたければ言うがいい!
「いいんだよ。そもそも他の王子達は王城から馬車で通うのに、彼だけ寮生活させるように王様からも言われてるんだ。なんでか分かるかい?」
「…さぁ?あいつのことが嫌いとか?いやな感じの奴だしな。」
「違うね。王様は心配しているのさ。あのまま王族の権威に溺れたまま育ったら彼のためにならないってね。だからそういう性格が治るようにって寮生活させてるのさ。」
「…なんでその話を俺に?」
「ほら、さっきみたいに怒ったままならよかったんだけど、グレイ君は結構冷めるの早いよね?今話してる感じでわかるよ。だから、もしかしたら手加減しちゃうんじゃないかって思ってね。むしろ手加減しないで欲しいんだ。一回痛い目を見れば、僕達の言葉を聞いて貰えるかもしれないだろ?」
人様の信仰馬鹿にした時点で手加減する気はなかったけど、もうだいぶ冷めてきてたのも事実だ。
俺って割とわかりやすいのか?
「わかりやすいね。僕はたくさん子供を見てきたから特にね。結構表情に出てるよ?さっきは悪魔みたいに怒った顔してたけど、今は困惑顔って感じ。」
そうなのか…そうか…いや、これはプラスか?
本にも隠し事はしない方がいいって書いてあった。
うん、これはプラスだ。よかったよかった。
「あぁグレイ君。せっかくだし条件をつけさせてくれ。なに、君なら難しくない条件だよ。レオン君は剣術が一番得意だって聞いてるから、剣だけで叩きのめして欲しいんだ。君は魔術が使いたいらしいけど、今日は我慢してくれ。」
「魔術で何もさせずに勝つつもりだったんだが…。」
「それだと剣で魔術に勝てるはずないとか言い出すよ。レオン君はそういうタイプだからね。レオン君の得意分野で、言い訳できないくらい完璧に勝ってね?」
「…わかった。だけど条件がある。」
「いいよ。僕に出来ることならなんでもしてあげる。」
「魔術科と剣術科を掛け持ちさせてくれ。やっぱり諦めきれない。」
「……頑張ってみるよ。」
だって仕方ないだろ?
やっぱり魔力量についても褒めてほしいんだから。
グレイは熱し易く冷め易い性格
その割には自分自身のことではあまりキレない