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誤算:細かいところも見られるもの

特別試験ってのは試験官と受験生で行う模擬戦だ。

内容は、お互いが支給された身代わり宝石を身につけて本気で戦うというものだ。

本気、つまり剣も魔法もなんでもあり。

ただし、宝石が壊れた後も攻撃を続けるようなら失格らしい。


身代わり宝石ってのはその名前の通り、持ち主が致命傷を受けると即座に完全回復させ、かわりに音を立てて砕け散る宝石型の魔道具だ。

この魔道具を初めて見たときは相当驚いた。


身体が丈夫な魔族達は致命傷のことなんて考えない。

だから、身代わり魔道具なんて考えたことがなかった。

人間の身体は脆いから必要なんだろう。


それで、俺より前の人の試合は見れるわけだけど…。

正直、弱くないか?

いや試験官はそれなりに強いんだけど、正直村のしたっぱ聖騎士くんの方が強かったというか…。

あ、だからみんな大丈夫だって言ってたのか。

俺が確実に入学できるような強さになるまで鍛えさせられたんだろうな。


とか考えてるうちに俺の番がきた。

簡単に勝てるけど、手加減するってのも好きじゃない。

だからといって近接で一番得意な剣は、致命傷を与える訳にいかないから使えない。

だって、魔術師になりたいのに剣で致命傷を与えてしまったら、剣術を学ばされるに決まってる。

俺にとっては、魔術で勝利して魔術科に行くことが一番大事なんだ。


というわけで剣は使わない。

だけど魔術補助用の杖なんか高くて買えやしない。

だから俺は、武器を持たない無手の状態で闘技場に立つことにした。


「では、受験生グレイ・フォールと、試験官ナイト・アレンによる模擬戦闘試験を行う!双方構え!」


相手のナントカ?さんは剣を正面に構え、俺は両手を開いたり閉じたりして動きを確認する。

と、始めの合図より前に試験官のおっちゃんが話しかけてきた。


「おい、グレイとやら。武器も持たずに来るとは馬鹿にしているのか!?ナメられたものだな!!」


馬鹿にはしてないけど、あんたの事はナメてる。

という訳にもいかないしな、印象に関わる。


「俺は孤児だからな。武器なんて高いもん買える訳ないだろ。馬鹿にしてる訳じゃないし、もちろんナメてなんかいない!」


「ああ!受付にきた孤児とやらはお前のことか!お前に、孤児ごときが入れるような安い学園じゃないってこと、思い知らせてやるよ!!」


そうは言うけどさっきより機嫌は良さそうだ。

馬鹿にされたように見えたのが嫌だったんだろうな。

ナイスな答えだったらしいぞ俺。でも怒らせないようにナメてかかるのは今後やめような俺。


「試験…はじめ!!」


合図と同時にナントカさんが走ってくる。

よく見て、重心を落として、体を逸らして足をかける!


「あ?おぁぁぁあ!?」


あとは人族式魔術を当てれば致命傷、俺の勝ち!

戦闘中の興奮状態で悪魔式魔術を出さないためにこっちはしっかり訓練してきたんだよ!

悪魔式の方は自然体だと出てしまう。

だから、普段取らない行動を人族式を使うための鍵にすることで悪魔式の方を封じ込めるのさ!

そのための行動は、左手を強く握り込むこと。

しっかり左手に力を入れるだけの時間が有れば、人族式魔術で致命傷まで持っていける!


「『クレイ・アップ』!からの『ウィンド・カット』!」


土魔術で軽くカチあげて狙いを付けやすくし、風魔法で首を狙う!

ここで試合終了の破砕音だ!


「…し、勝者、グレイ・フォール!」


よし!やっぱあっさり決まったけど俺の勝ち!

あそうだ、印象アップのために倒れてるナントカさんに手を貸しに行こうかな!


「試験官さん。大丈夫か?」


「あぁ、大丈夫だ。馬鹿にされてるのかとも思ったが、まさか負けてしまうとは…。なかなかやるじゃないか。是非うちの剣術科に来て欲しいな。」


…ん?あれ!?剣術科!?


「あの、魔術科に入りたくて魔術を使ったんだけど…」


「そうだったのか?魔術は他の貴族でも使えるくらいのものだったが、剣を避けた時の動きは凄腕の剣士のようだったのだが…。俺としては剣術を学んで欲しいぞ。」


あぁなるほど、周りからは魔術が目立つように立ち回ったけど、相手してるナントカさんにはしっかりと身のこなしまで見られたと。

しかも、魔術の使い方はともかく内容は、貴族なら誰でも使えるような初級魔術だった、ということか…。


俺、戦い方間違えたっぽい?

試験官は目の良さで決まる。

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