空中科学都市と"能力"
2XXX年 日本は科学を発展させるために莫大な資金を注ぎ、一つの都市をつくった。それが、空中科学都市 通称Aerial Science City《ASC》。
東京都の上空1000mに位置している浮遊都市。ASCの科学技術は、地上での最先端技術の約50年後の姿と言われており、科学技術の進歩の速度も著しく、今も急速な発展を遂げている。天気予報などはもう既に無く、天気カレンダーなるものが発売されている。人口は約1万人。住居資格は、国から選ばれた優れた才能を持つ者とその親族のみ。日本国民は全員、3歳の時に能力判定試験という試験を受ける。この試験で物理学や化学、数学などで特異な才能を認められた者が、この都市に住まうことができる。つまり、勉強や努力では埋めることができない才能を持った者が国によって選ばれる。
ASCでは、科学技術の発達により、Capacityチップ略して、”Cチップ”というものが開発された。これは、体内に埋め込むことで、炎や電気を操ったり、念力を使ったりと様々な力を得ることができる。そして、その得た力を能力と呼んだ。
能力は生まれつき人それぞれ決まっており、適性がある。それと同時に能力の限界値もだいたい決まっている。例えば、電気を放出する能力の場合、数ボルトの電圧の電気を流せる者もいれば、数百ボルトの電圧の電気を流せる者もいる。能力にはランクがあり、高い順にS,A,B,C,D,Eの6段階でランク分けされている。
俺は荒木 空、17歳の高校生。3歳の時に能力判定試験を受けて、国から選ばれ、この都市に来た。それと同時に、幼稚園に入ったのち、小学校、中学校、高校と進学した。能力は風力操作。ASC第一高等学校に在籍している。
ASCには高等学校が3校あり、その中でも、比較的能力や科学的な才能が高い者が集まるのが、ASC第一高等学校。他には、第二、第三とあり、能力などに準じ、進学先が変わる。
「はぁ、はぁ」
俺は今、追われている。風力操作で走っている速度をかなりあげているのだが、なかなか引き離せない。
それは、追っ手の能力が電力操作だからだ。電力をつかって身体能力を高めている。開けた場所に来た時、足が何かに引っかかってコケてしまった。
「やっと捕まえたぜ、空」
コケた瞬間追いつかれてしまった。ゲームオーバーだ。俺を追っていたのは、同じクラスの白崎 聖也。幼稚園、小中高と同じ学校の親友だ。2ヶ月前にお金を借りて、流石に返せと言われたが、手持ちが無く逃げようとした結果がこれだ。
「待ってくれ聖也、後から返すから。」
俺は懇願したが、許してくれそうにない。
「しょうがない。じゃあ、能力で勝負してお前が勝ったら、金を返す」
「いいぜ、空」
「じゃあ行くぜ、聖也」
「おう、空」
「風衝弾!」
「電光槍!」
俺たちは、同時に能力を発動した。
「「あれ?」」
だが、能力は発動しなかった。というよりできなかった。
「これは、対能力障壁」
「ここは能力使用禁止区のはずだぞ、荒木、白崎」
「「あ、青木先生!?」」
「またお前らか、これで何度目だ」
たまたま近くを通りかかった担任の青木先生に見つかってしまった。
「「すみません」」
「明日、能力検査が終わったら職員室に来い、わかったな?」
「「はい」」
ASCでは、年に一度能力検査が行われる。その人が持っている能力の実用性や汎用性、攻撃が可能な能力ならばその威力など様々な項目で得点がつけられ、その合計点数でランクを分けられる。
「荒木 空様 総合評価 982/1000点 ランクSです」
トーンが全く変わらない機械に言われた。
「白崎 聖也様 総合評価 984/1000点 ランクSです」
「おい、聖也、評価どうだった?」
「984点でランクS、空は?」
「...982点でランクS」
「今回は俺の勝ちだ、金返せよ」
「わかった、今日返すよ」
「そういえば青木先生に職員室に呼ばれてたな、めんどいけど、行くか」
「来たな、荒木、白崎、とりあえずお前らは反省文書いて来い」
「「え」」
「これでも大目に見たんだぞ、都市警察に見つかってたら罰金になってたぞ」
「ところで、二人とも今回の能力検査の結果はどうだったんだ」
「982点でランクSです」
「984点でランクSです」
「二人とも、前回よりも40点近く上がっているな」
「「ありがとうございます」」
「しかし、なんで校内順位首席と次席の優等生がなんで問題児なんだ、成績が良い分教師たちも注意がしづらくて、仕方がない」
「まあ、今日はもう帰っていいぞ」
「さようなら」
「さようなら、青木先生」
この空中科学都市の人口は約一万人。そのうちAランクの者が、100人程度、Bランクの者が300人程度、Cランクの者が1000人程度、Dランクの者が3000人程度、Eランクの者が5000人程度いる。
そして、Sランクに属する者は、たった12人の限られた人間のみ。