タイムカプセル
依頼人の頼みで、もう廃校になったらしい学校の校庭にいた。持っていたシャベルが何か固いものに当たる。確かにさっき見たプラスチックのケースだ。
「おっと、これかな」
ケースを傷つけないように周りの土をどかしてから、慎重に引き上げる。土がついて汚れているが、透明なケースの中身は無事なようだ。穴に土を戻して、校庭から去る。
「うわー、懐かしい」
ケースを見ると、依頼人の男は声を出して喜んだ。男はさっき見たより背が少し伸びていて、高そうな時計をつけていた。よく見ると顔に少しシワができていたが、穏やかな性格は変わっていない。
「ありがとうございます。さすがに二十年も前なんで忘れていましたよー」
「いえいえ。覚えているのが得意なもので」
「え。メモとかなさらないんですか」
「あ、いえ。商売柄というか、一応のメモはありますよ」
「やっぱりそうですよね。いやー懐かしいなあ。でも店長さんは二十年たってもあの時のままですね」
「ありがとうございます。今後ともごひいきに」
男は上機嫌で、ケースを車に乗せて店から出ていった。あの男で今年の依頼はなくなったので、店のシャッターを閉めて店の端にある重いハッチを開けて地下に入った。ハシゴを降りて、パソコンに向かう。
「たしか次は三年後の二か月後」
パソコンで三年後に起きるようにセットする。隣のベッドが入ったカプセルが上に開く。中のベッドに横になって、カプセルを閉じた。
これを始めてから何年たっただろうか。百年くらい前にタイムマシンを作り未来に行けるようになったことは良かったが、過去に帰ることはできないことに後悔した。未来に行くことは簡単だが、過去は自分の知識ではどうしたらいいかわからない。
「ああ、早く過去に帰れるモノを作ってくれ」
目を閉じて、三年後になるのを寝て待った。