表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/60

第5話 『初めての学校』

 3歳になった。


 この一年間筋トレをしたり、魔法を練習して、

 魔法は第8階位の魔法はある程度、

 使える様になったし、

 女の子といえど、筋肉が付いてきた。


 最初の頃は筋トレも相当キツかったし、

 魔法も使う度に、力が抜けていったのだが、

 毎日繰り返しているうちに、

 魔法はいくら使っても疲れなくなったし、

 筋トレも長く続く様になってきた。


 魔法は特に風魔法が得意で、

 自らの拳に、魔法付与(エンチャント)を施そうと、

 切磋琢磨していたのだが、正直難しい。

 それらしい事は出来るのだが、

 大して威力が出ないのだ。

 まだ力が弱いからだろうか。


 祖父は未だに本が盗まれた事に気づいていない。

 いや気付いているのかもしれないが、

 可愛い俺の悪行に目を瞑っているのかもしれない。

 可愛らしい悪戯だ。 なんせ孫娘だ。

 祖父に抱きついただけで、

 俺にお小遣いをくれる。

 銀貨1枚だが、

 この世界の金の価値がよく分からないので、

 有り難く頂戴している。

 使うことが無いので、貯めているだけだが…。

 貯金箱は土魔法と炎魔法の混合魔法の、

 土器精製(アースウェア)で作り出した。

 この魔法は俺のオリジナルで、

 初めてこの混合魔法を使った際は、

 ごっそりと魔力を奪われ、

 意識を持っていかれそうになったのを覚えている。


 父はどうやらこの村の村長らしいと知った。

 正直びっくりした。

 あの変態が村長とは…この村は大丈夫なのか?

 そう思ったが、仕事はちゃんとしているので、

 評判の村長だそうだ。

 やはり俺がつけてやったうん(・・)のおかげかもな。


 祖父に関しては謎が多い。

 来客に不思議(不気味)な笑顔を送って、身震いさせているのを見た事があるが、何をしていたのだろう。


 そういえば、叔父が家に来たことがあった。

 母型の名字を取っている様で、

 モンパルパ・オッペンハイマーというらしい。

 この世界では貴族がいて、

 爵位もあるそうだ。

 モンパルパは辺境伯だそうだ。


 ちなみに父の階級は騎士であるそうだが、

 貴族であることに間違いはない。

 祖父の爵位はどうなのだろう。

 今度聞いてみよう。


 叔父は国境付近に住んでいるということだが、

 この村はこの国のどこらへんに位置するのだろうか。

 そういえば地図を見た事がない。


 3歳になると、世界を知る為に、

 学校に行く年だそうだ。


 学校とは言ったものの、

 在学期間は3年で、

 その実態は剣の扱いや、

 魔法の使い方や練習といった、

 実技をやるだけで、

 3歳〜6歳までの子に戦闘の基本を教え込むそうだ。


 まぁ文字を理解した俺には、

 剣術を学ぶ、丁度いい訓練場所なのだが。


 社会情勢とかは、家で学ぶ事にしよう。


 学校は午前で終わるそうなので、

 午後は自由な時間にできる。



 俺は学校に期待していた。


 友達ができるからだ。

 異世界 (こちら)に来てからは、

 家族や侍女としか接しておらず、

 友達がいなかったのだ。

 村に出かける良い口実に出来るとも思ったし、

 なんてったって、俺には祖父からもらった、

 大量の貯金があるのだ。

 村でも遊ぶ事が出来ると思う。


 村は良い場所なのだ。

 入学に必要なものを買い揃える際に、

 付いて行ったのだが、

 面白そうな場所が満載で、

 露店では見たことのない不思議な物が売っていた。

 美味しそうな匂いもするし、

 学校帰りに買い食いとかするのも良いだろう。


 ちなみに、木刀と、好きな魔法石(マギア・ストーン)が、

 入学に必要なのだが、

 ギーモンが張り切って、

 金色のブレスレットに魔法石(マギア・ストーン)を埋め込んでくれた。


 -----



 魔法石 (マギア・ストーン)とは


 魔力を記憶する不思議な石で、

 魔法を行使する度に、その魔力に馴染んでいく。

 大きいものでは武具の素材となり、

 小さいものは杖の素材や、武器の装飾品となる。

 長く身に付けた魔法石(マギア・ストーン)は、

 所有者にとって、最適な相棒(パートナー)となるであろう。




 ----(魔術教本より)


 なるほど、学校にいる間付けるだけでも、

 かなり良い素材になるって訳か。

 ギーモンはただでさえ相当良いものを買っていた気がする。

 俺も将来いい武器を持てそうだ。



 それから、俺の身に起こった問題を話そう。

 前世との性別の違いである。


 俺は女の子だったからといって、

 話し言葉を治す気などさらさら無かった。

 “私”とか“アタイ”などを使うのは、

 プライドが許さなかった。


 折角この村では偉い立場にいるみたいなので、

 いっそのこと“我”とか使ってみるか?


 我はロメディア・ハーキュリーズである!

 貴様等下等な人材は我の前にひれ伏すが良い!


 こんな自己紹介を3歳児がするのは、流石にまずい。

 親の教育が疑われてしまう。

 この歳で勘当されるのはごめんだ。

 例え勘当されたとしても、

 ギーモンあたりが止めてくれるだろうが、

 おこずかいの配給を止められそうだ。

 我 の使用もやめておこう。


 そうそう、この間魔法石 (マギア・ストーン)を買った時に、

 女の子なんだからと、

 ギーモンが鏡を買ってくれたのだ。


 鏡に映る俺の外見は、

 黒髪翠眼 (緑目)で、

 髪はショートにしている。

 別に男とも女とも言える外見だし、

 筋トレをしているので、学校では男で通す予定だ。

 村長の跡継ぎと見られるだろうし、

 怪しまれることはないだろうと思う。


 筋トレは膝をついた状態での腕立てができる様になった。

 大きな進歩だ。

 これで筋トレの幅も広がってきただろう。



 -----


 入学前日に、家族が集まって食事をした。


「そうか…ロミーも、もう3歳か」

「そうよ!早いものね…明日から学校かぁ」

「がっはっは!我が孫は主席卒業するであろうな!」


 ギーモンの自信はどこから来るのであろうか。

 思えば、父母の言う通り、この三年は早かった。


「ロミー、明日から学校だけど、友達いっぱい作るのよ?」

「そうだぜ、ロミーは良い子だから、友達ぐらいすぐ出来るさ!」

「トイレに行きたくなったり、痛い思いをしたら先生にちゃんと言うんじゃぞ?」


 皆、俺の心配をしてくれている。

 だが、俺は前世の鬼畜設定の学校を、

 一応クリアしている。

 午前だけなんて簡単さ。


「そうじゃ、ロミーよ。魔法石 (マギア・ストーン)には、名前をつけたかの?」


 えっ?名前つけるタイプなの?


「いや、まだ…だけど。」

「名前をつけた方がいいんだぜ?愛着が湧くしな!」

「そうそう。それに、名前をつけた方が魔力の馴染みが良いのよ?」


 本当なのだろうか?

 だが、この流れは名前をつけなきゃいけない流れだ。

 どうするべきか…?


「ふむ、燃え盛る黙示録(ケオ・アポカリシィ)なんてどうじゃ?」


 おいおい爺ちゃん…あんた良い歳して中二病なわけですか?

 とか思ったが、父も母も、羨望の眼差しで祖父を見る。

 この世界では素晴らしい名付けだったのだろうか?


「ロミー!良いじゃない!その名前にしなさい?」

「そうだぜ、ロミー。こりゃ素晴らしい名前だな。」


 やばい。引くに引けなくなってしまった。

 仕方なく頷いておいた。


 それにしても、今日の食事は美味い。

 美味いと言っても、前世には敵わないだろうが、

 珍しい食材が沢山で、見るのも楽しい。


「この料理、美味しいね。」


 何気なく発した言葉に、

 隅っこにいた侍女さんが、

 ビクっとして、涙目になってきた。


 あれ?俺ってそんな権力者なのかな。

 なんだか楽しくなってきたぞ。


「この料理作った人はだあれ?」


 あくまでも無邪気に攻めていく。


「私…ですが、お口に召しませんでしたか?」

「うんうん?とっても美味しかったよ!」


 侍女さんは口を押さえ礼をする。

 確か、この人の名前はメリッサさんだ。

 結構前俺の大冒険計画中、

 持ち上げて、母の元へ連れて行ったのも彼女だ。

 家族みんなが俺を微笑ましく見つめている。

 幸せだなぁ。


 その日は食事後、母とお風呂に入って、

 一緒に寝てもらった。

 母に抱きついて寝たのだが、

 やっぱり良い匂いだった。


 -----


 目が覚めると、

 侍女達のおかげで、

 学校へ行くための準備が既に終わっていた。

 母と一緒に学校へと向かう。

 とは言っても、家の近くなので、

 たいした距離ではなかったのだが、

 久々に出る外は、とても気持ちが良かった。



 学校には校舎がなく、

 とても広いグラウンドに、

 テントが数十個建てられていた。

 端の方に武道場の様なものが建てられていて、

 その中で、式は挙行された。


 入学式とクラス分けのテストは同時に行われていた。

 入学式中に魔法道具を使って、

 魔力が測定されるのだ。

 やはりクラスも階位制をとっているようで、

 検査官から、それぞれに階位番号を告げられていた。


 ちなみに俺は一年前から魔法を使ってるので、

 自信満々で、そのテストを受けた。


「ロメディア・ハーキュリーズ!1階位クラス!」


 精々2階位くらいからだと思っていたが、

 よくよく考えると、魔力を鍛えられる者なんて、

 周りにはほとんどいないことに気付いた。

 なんせ3歳で、あんな本を読む子なんていないのだ。

 俺は前世の記憶があったからこそ、

 こちらの言語の取得もすんなりだったわけだし。


 1階位だと告げられた時に、

 母をちらりと見ると俺を抱きしめて、

 ずっと頭を撫で続けてくれた。

 谷間に顔が埋まる。

 とっても良い匂いだ。幸せ。


 式が終わり、各クラスに向かう様に言われ、

 母と別れて、自分のクラスへ急いだ。

 母は心配そうにしていたが、

 任せといて!と胸を張って言っておいた。


 テントの様な構造をしたクラスに、

 数人が入り、学校の説明を受けた。

 聞いていた通り、剣や魔法の練習をする様だ。

 ものすごく楽しみである。


 説明が終わり、帰り支度をしていると、

 俺に近づいてくるやつがいた。


「お前名前はなんてんだ?」


 さっき、隣に座っていた子だった。

 まさか話しかけられるとは思っていなかったから、

 心臓が飛び出るかと思った。

 挨拶もなしか、と思ったが、

 子供なので仕方はないだろう。

 名前を聞かれたのにはびっくりした。


「俺はロメディア・ハーキュリーズ。お前の名前はなんだ?」

「俺か?ハリウスっていうんだ!今日からよろしくな!今度どっかに遊びに行こーぜ!」


 無邪気だなぁ。

 こんな時代が俺にもあったんだろうなぁと、

 思うと少し胸が締め付けられる思いになった。

 とはいえ初めての学校で友達が出来た。

 ハリウスか…面白い奴だな。

 今度遊びに行こうと思う。

 村で駄菓子を買ったり、

 村の外で冒険ごっこをしたりするんだろうなぁ。

 とても楽しみである。


 今度遊びに行く約束をして、

 俺は家まで帰る支度を終わらせた。

 正門に侍女(メリッサ)さんが迎えに来ていた。

 俺が飛びつくと、困った様に笑っていた。

 今日学校で会ったことを、侍女(メリッサ)さんに話しながら、家へとたどり着いた。


 食堂へ案内されたので、

 素直について行くと、

 そこには大量のご馳走が並んでいた。


「我が孫が1階位クラスに入った!目出度い!こりゃ目出度い!ほれ!今晩は飲むぞ!」

「おっ!ロミー!おかえり!聞いたぜ!1階位クラスだってな!流石俺の子だ!天才だったな!」


 どうやら母が既に伝えていたみたいで、

 ギーモンが張り切って準備をしたらしい。

 父と祖父は次々と料理を食べていく。

 母も嬉しそうに俺を膝の上に乗せている。

 母が俺の頰にキスをしたので、

 俺も母の頰にキスをしておいた。


 その日はギーモンの計らいで、

 侍女さん達も飲めや歌えやの、お祭り騒ぎだった。


 俺も楽しく過ごさせてもらった。


 その日の夜は、明日からの学校生活を思い浮かべながら、

 深い眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ