最終話『世界樹の果実』
「あぁ、忙しい忙しい」
テオトルが脇目も振らずに、
青白い球を創元の宮殿に投げ込んでいる。
「あっ!来たね英雄ちゃん!
待ってたんだ!ささっ、とりあえずお茶でもどう?」
じゃ一杯だけ。
「どうかな?世界を救った気分は?」
どうって、何ともないね。
いつも通りかな。いつも通りの一日が始まった気分だよ。
「そっか。英雄はいつもそう。
凱旋出来るのは、正しい事を当たり前の事として出来る人だ。
君の祖先のヘラクレス君もきっと誇らしく思っていると思うよ?」
はっ、そりゃいいな。
実に良い気分だね、何というか、
ほんとに、良い気分だ。
「ねぇロメディア君。
君は平等について考えた事はあるかい?」
何だよ唐突に。
だけど、まぁ考えた事はあるな。
「そっか。これだけは言っとかなくちゃなって思って。
私だって神様なんだから、
誰かをえこひいきしたくなる時もあるの。
例えば君の友人の、ヴェナちゃんだったり、
君の祖先のヘラクレス君だったり。
でもね、地球の人は何かを勘違いしてるなって思ってさ。
何で君達は、神の元に皆平等だ、
なんて言っておきながら、
天国や地獄の概念があるんだい?」
言われてみれば、確かにな。
「法律を無意識の内に守らせる為の作戦だって事は分かるの。
けど本当に愚かだとおもうのよ、それって。
本当に守らせたいなら、
犯罪を起こせない様にすればいいじゃない?
商品は全て国が管理して、
国は市民に一定のお金を与える」
それじゃ社会主義だろ?
それで上手くいかなかった国だって沢山ある。
「勿論その通り。だから愚か。
人間は自分だけが良ければそれで良いって考え方の人が多い。
だから神様である私はせめて真の平等を、
つらぬきたい。
だけど、君を助けちゃった。
またおやつが減っちゃうや」
なんだよ、そんな悲しそうな顔すんなよ。
テオトルは本当に最高の神様だよ。
「こんなドジ神様なのに?」
だからこそテオトルなのさ。
「ありがとう。元気でるよ。
魂の大元に還すのって、
結構心に来るんだ。
さて続けよう。
信仰心が有ろうと無かろうと、
老人だろうが若者だろうが、
罪人だろうが善人だろうが。
全員等しく還元するの。
それが真の平等ってやつでしょ?」
色々な宗教者から怒られちゃうぞ、それ。
「ちょっと良いですか?」
「はっ?へっ?誰ですか?」
テオトルの体が一瞬痙攣したのが分かる。
この場所で喋ることが出来るのは神ぐらいだ。
そりゃびっくりするよな。
「驚かせてしまいましたか?
申し訳ありません、少しお伝えしたいことがあるので」
「貴方、最高神の一角ね。
何の用?私に成って変わろうと?」
「違います!私です!
世界樹です!」
となるとつまり?
「貴方世界樹自身だって言うの!?
聞いたこと無いんですけど!?」
「カデナリウス殿に付けて頂いた名は、
マンユと、申します」
「あんたカディスに会ったっての!?
私だって最近顔とか見てないのにぃ!」
「世界樹ですから。
世界のどこにでも現れる事は可能なんです。
今回現れさせて貰ったのは、
二つ要件が有りまして、
一つはロメディアさんを、列聖にする事。
もう一つは世界樹に、
果実が実りそうなんです」
「うそぉ!?えっ!?ほんとに!?
一緒に食べようよ!
ってかロメディアが列聖に!?」
テオトルが倒れたああああ!?
「おめでとうございます、
ロメディアさん。貴方は世界樹列聖に選ばれました。
貴方はこれより、試験世界の英雄第2号となります」
あれ、何だか意識が……?
「テオトル様の力をお借りして…と。
私とテオトル様を家族化、
苗字はユグドラード、と。
樹神アンリ・マンユ・ユグドラードの権限により、
ロメディアさんを神霊化、
魂の分離、及び魂核の廃棄、
列聖に並べます!」
世界樹の中へと吸い込まれて行く感覚が体を襲い、
意識を失った。
失う直前に世界樹に、
果実が成る様子が見えた。
(これで、最後、なのか?
なんか、ほんとに、あっけ、なかった、な)
長い旅は終焉を遂げたのだ。
ロメディアの旅のお話はこれでおしまいです。
ですが世界樹のお話はまだまだ続くので、
是非是非、お楽しみいただければ幸いです。




