第47話 『最終決戦・後編』
剣がぶつかり、
何度も何度も火花が散る。
時々横から援護射撃が撃たれるが、
いとも容易く剣で切り裂き、
無効化する。
ギーモンは試験世界内では、
俺が作った神剣の次に強いであろう、
不壊金属製の、
麒麟伝八剣と呼ばれる剣が一つ、
麒麟角獄剣を中段に構え、
ブレイダルと睨み合っている。
それに対し、恐らく神鉄で出来ているであろう、
ブレイダルの剣は間違いなく試験世界の物ではない。
魔力が込められて、
常人なら見ているだけで吐き気を催すほどであろう、
怨念などがひしひしと伝わってくる。
「契約者よ。手を出さなくて良いのか?
確かに其方の祖父は強い。
一手一手無駄もなく、
隙がない様に見える。
しかし、それ以上にあの王は、
余裕を持て余し、
祖父殿と戦っておられる。
このままでは言うまでも泣き敗北を記すことになるであろう」
かと言って、
不用意に援護射撃などを行い、
失敗などして仕舞えば、
元も子もなくなってしまう。
どうするべきだ?
そもそも救うことは出来るのか?
「ロメディアよ!
其方も参戦せぬか!
妾等だけでは到底太刀打ち出来ぬのだ!」
「あんな小娘、魂だけ大きいだけで、
我の敵などでは無いわ!
幾ら虫螻供が束になった所で、
我はどうにかなる筈がなかろう!」
容赦無く斬撃が繰り返される。
剣が交わった際に放たれる衝撃波は、
街を、村を、城を、次々と無に帰して行く。
ギーモンは斬撃から放たれる衝撃波を避けることに精一杯で、
ワーザックはギーモンが居るため、
全力で魔法が放てずに居る。
「ヴェナ。ハデス。
第0階位魔法だ。
ヴェナは1階位で、構わない。
ハデスは俺が過去に、
お前を媒体として放った0階位を参考に、
他の魔法を行使してくれ」
「でも、そんな事したら、
ギーモンとワーザックが死んじゃう!
それじゃ駄目よ」
「元より皆死ぬ気だ!
どっちみち死ぬかもしれない、
そんな覚悟で此処に来て居るんだ!
俺だってしたか無いさ!
だけど、これぐらいしか、
これぐらいしか思い浮かばないんだ!」
時間にして数秒、
だが、体感的には数時間、
数年の歳月が経ったかの様な緊張状態で、
一時、静寂が場を支配する。
最初に口を割ったのはハデスだった。
「悪くない考えだ。
其方等の覚悟は確と見定めさせて貰った。
我の契約者として、
迅速な判断、最適の道であったといえよう。
となれば実行に移すまで。
我の依代は王の石
試験世界内の、
0階位魔法なら全属性行使が出来る。
確か我の中で奏者は魔法を合成したな。
恐らくあれ如きでは奴を倒す事は出来ないであろうが、
少々ならダメージを与えられるだろう。
後は契約者自身が動くのだ」
なるほど、
後は俺が、か。ちょっと待てよ?
「お前は?お前は戦わないのかよ?」
「我は自爆する為に魔力を残さねばならぬ。
いくら自然界から供給をして居るとはいえ、
試験世界丸ごと爆発させろとの命令が来ておるのでな。
契約者の命令よりも優先させねばならないお方である故に、
誠に申し訳ないな」
俺より優先って事は、
テオトルか。あの人も世界丸ごとだなんて、
無茶も言うよな。
「そろそろ飽きてきたのだが?
早く準備をしてくれ、
我を暇にさせるなよ!」
準備を始める中、
ブレイダルとの戦闘を繰り広げる二人の、
魔力は枯渇間近だ。
「良いか契約者よ。
0階位の定義とは何か分かるか?
何故先人は8階位の魔法を残したと思う?
何故8階位魔法は属性毎に一つしか無いか、
考えた事はあるか?
この世界には元より0階位は無いと等しいのだ。
言うとすれば8階位の上位互換よ。
しかし魔術士と言うものは基礎を疎かにしがちだ。
故に0階位に気付かぬのだ。
しかし其方は基礎を怠る事はあれど、
創造神からの神託を受けておる。
故に気付けた。
さぁ!彼女に感謝を捧げるのだ!」
どうした此奴?
変な改造を施されてるな。
間違いない。俺の知ってるハデスちゃんは、
こんな子じゃない!
無口で頼り甲斐のある子だったはずなのにぃ!?
なんで!?どぉしてこんな子になっちゃったのぉ!?
「さてヴェナよ、あなたの撃てる最大級を私に。
ご主人も頼みます」
言われた通りに魔法付与を施す。
俺が使える暗黒の礎と、
風魔法最大魔術天災の魔力だ。
これのせいで魔力が枯渇気味だが、
これで倒せるだろうか?
「ご主人よ、恐らくギーモン殿は満身創痍になられるだろうが、
その下にいるワーザック殿は消滅致すであろう。
なに、一足先に旅に出ることになるのみ。
生前の彼女を目に焼き付けておくのだ」
必死に魔法を構築し放っているワーザックを見ると、
魔法を放たせるのを躊躇してしまう。
だが、ハデスの言う通りだ。
先に旅立つだけ、
俺たちだってすぐ死んでしまう、のだろうか。
不思議と怖くはない。
昔は怖かったが、今は心の準備ができている。
いや、そんなわけない。
テオトルにあれだけ言われて足掻いているのも、
死への恐怖から来ているものだろうし、
まだこの状況を認めたくないのも確かだ。
「では我はこの魔法を放ち、
自爆の準備に入る。
起動は主人の思うがままだ。
世界樹を守るか、
混沌に就くか、
それは貴殿の判断に任せるとしよう。
魔法の命名は、
神地園の英雄の名を借りようか。
では、またいつか」
光の消滅
眩い光が辺りを包み、一瞬で消える。
数秒間の静寂の後、
世界は音で、爆発で、恐怖で、
震え上がった。
周囲数百メートルは消え去ったであろう、
衝撃波。
アフェリッサの森全域も巻き込んだであろう爆発が終わり、
粉塵の中から出て来たのは、
満身創痍になり、左腕が飛んだギーモンと、
燃え焦げた毛玉、
そしてへリル王国の王、
冥神の手先である、ブレイダルが、
ボロボロの服を着つつ、
それでいて傷一つない体を、
俺に見せつけていた。




